41話 いつも通り
「えーっと....」
私は多分ギルドマスターのこの人になんて言い訳をしようか悩んでいる。いやまぁ、言い訳とか私の足りない語彙力で出来る気などしないのだが万が一、億に一の可能性で出来るかもしれないのでこうやって準備しておくのだ。
多分そんなことなんて起きないだろうが...
「えっと、そこのAランクのリースさんがアルノードさんをボコした....ですかね?」
受付のお姉さんが私とアルノードの間に起きた出来事を端的に説明をしてくれた。できれば話してほしくないというのが私の本音なのだが流石にそれは無理だらう。
私だって目の前で起こっているやばい出来事を報告しない人がいれば大丈夫か?思ってしまう。要するに不可抗力ということである。
「ふむ。ペインから話は聞いていたがお前がリースか」
一応別人の可能性もあるのだがペインさんの名前が出てきたので十中八九この人が言っているリースというのは私のことだろう。まぁ、寧ろこの状況で別人の名前が出てきたらそれはそれで驚くのだが....
「はい。私がリースですね」
ペインさんがこの人にどんな報告をしたのかは知らないのだがここで嘘をついてもすぐにばれると判断した私は嘘をつくことなく私がリースであることを認めた。
いつもならばここで嘘をついて全力で拒否するのだがまぁ、取り合えず今は認めていると言う事だ。めんどくさいけど....
「俺はここのギルドマスター兼冒険者ギルドのグランドマスターのサファーだ」
どうやら私の予想は半分あっていて、半分間違えていたらしい。
ギルドマスターなのはそうなのだがそれだけではなくグランドマスター....つまりは全てのギルドの中で一番偉い人だという。私の運はいいのか悪いのか分からなくなってきてしまっている....
ペインさん然りサファーさん然り普通ならこんな簡単に会えないので嬉しいと言えば嬉しいし運がいいんだと思うんだけど私が合うのは割と会いたくないというときだったので私の主観では最近は運が悪くなってしまっている....
「それで、私に何か用が....ってまぁ、当たり前ですよね」
こんな騒動を起こしてしまっているのでギルドマスターが出てくるのは割と当たり前だろう。アルノードも私の1つ下のBランクでありこれでもそこそこ強い方みたいなのでそれ一瞬で倒されたとなれば話も聞きたいことだろう。
私がサファーさんの立場でも興味ない事には変わりないのだが普通に考えればさっきの思考であっているはずである。あまり確証はないけど....
「話が色々と聞きたい。ついてきてくれるか?」
「わかりました」
今回は私も色々とやらかしてしまった自覚はあるのでサファーさんの言葉におとなしく従う。というかここで逆らうメリットが私にはないので従う以外の選択肢が無いのだが....
と、そんなことを考えているがサファーさんについていくよりも前に一応やることが残っているので足を止める。
まずは
これで完璧だ。
そう思いながら私は再び歩くのを再開してサファーさんについていく。
────────────────────
「さっき足を止めて何をしたのか...それを含めて教えてもらうぞ」
案内されたのは軽い応接室でありソファーに座ると何の前触れもなくサファーさんがそんなことを言ってきた。
思考を加速させて私は何をサファーさんに話して良くて何を話したら駄目か、それを急いで思考する。
まずは
「了解です」
0.00001ナノミリ秒にも満たない時間で考えた思考に加えて少しブラフを交えてサファーさんに話すことにした。
正直私には全く非がないので聞かれて困ることもほとんどない。だからこそブラフを混ぜる量も少なく済んでくれるので本当に話しやすかった。
「成程な....確かにお前に非は無いな。ペインに聞いていた通りお人好しのようだな」
少し無視できないような言葉がソファーさんから聞こえてくる。ペインさんはどうやら私の事をお人好しと紹介していたらしい。
まぁ、お人好しなのは本当な気がするので否定する事が出来ないのであれなのだが少なくとも他人には言われたくなかった....
「ペインさん私の事どう紹介しているんですか....」
トウハクやハクオウを助けたのも私がお人好しなだからなのでそこからペインさんは私の事をお人好しと思ってのかもしれない。少なくとも私の中ではペインさんにお人好しの一面を見せていない気がするからだ。
それでも紹介するときにお人好しと紹介するのはどうかと思うのだが....
「大のお人好しで変人と紹介されてるぞ?」
うん、今度アーゼさんに頼んでペインさんボコボコにしてもらおう。お人好しまではまだ納得できるのだが変人と紹介されるのは我慢ならない。
本当に怒ったのでアーゼさんだけではなくアンゲロスにも一緒に制裁してもらおうか.....そう考える私であった。
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