36話 アンゲロスとリース

「はぁ....疲れた」


現世うつしよはリース様しか使えない日本刀でしたし当然の結果と言えば当然の結果なんですけどね」


 正直に言うと滅茶苦茶疲れた。あの馬鹿はあの後もずっと私に恐怖していて全く話にならない状態が続いたので苦労したものだ。

 周りの人間は記憶消去レーテーで記憶を消去して尚且つ私の大量の魔力(無害)で威圧して全員気絶させていたので実力行使は簡単だったのだがそれをしてしまえば本末転倒という話であり話を付けるのは本当に困難を極めていた。まぁ、最終的にはちゃんとできるように精神操作をしてお話をしたのだが....


幽世かくりよを腰に付けてなくて本当に正解だったわね....」


「それは本当に同意です。もしも幽世かくりよを奪っていれば今頃あの冒険者の命はないですしね」


 現世うつしよと対をなす日本刀である幽世かくりよ現世うつしよ以上に強い刀である。しかしそれと同時に危険な代物でもあった。

 現世うつしよがその魂を代償に力を発揮する刀であり、幽世かくりよが代償にするのは持っている人間の存在。つまりは本来の力を使うためには...いや、持つためには存在が消える覚悟が必要になる。


「存在が消えたらそれこそ死者蘇生リザレクションでも何も出来なくなっちゃうしね....」


 死者蘇生リザレクションは確かに使い勝手はものすごくいい。少ない魔力でクローンとはいえ本人には気づかれないものが蘇生されるし死んでから発動まで1秒ほどなら完全なる死者蘇生をする事が出来る。

 時間差で発動すれば自分が死んだ後でも蘇生できるなど本当に使い勝手はいいのだが弱点だっていくつか存在はする。

 例えば死者蘇生リザレクションの対象に指定した者の『存在』が消えてしまえばクローンだろうが蘇生だろうが何もすることはできない。

 理由は至極簡単であり、存在が消えると言う事は世界からその人物に関しての記憶が消えると言う事を意味している。つまりは幽世かくりよを私以外が使うと待っているのは完全なる『死』ただそれだけである。


「そういえばハクオウはどこにいるのかしら?」


「ハクオウならば先ほど食堂に向かわれましたよ?」


 ふと気になったハクオウがどこに居るかだがどうやらハクオウは食堂に向かったらしい。と言っても先ほどまでトラブルに見舞われていたので私達はまだ夕食を食べていない状態である為特に食堂に行って違和感があるわけではない。

 強いていうならばそのことを忘れていた体がご飯を食べていないことを思い出してお腹がすくだけである。


「アンゲロス何か持ってない?」


「何も持っていませっべ。リース様の亜空間収納の中に何かないんですか?」


 アンゲロスの言葉にあー、と思いつつ私の亜空間収納の中に何かないかを探す。カ〇リーメイトやペプ〇コーラなど日本で作られている物がたくさん入っているがこれは非常食なのであまり食べたくはない。

 奥底に昔入れた何かが埋まっているかもと思い少し整理をして奥底を除く。


「あ、そうか。ここって時間進んでも腐らないし奥底に大量にあるんだ....」


 奥底を除くといつ入れたのかもうわからないものが色々と入っているしまさにカオス。私ってこんなに整理整頓できなかったっけ?

 まぁ、五回の転生分の荷物が魂の収納プシュケー・ヴァーゾに入っているし、普通の亜空間収納の中にも17年で作った色々なものが入っているので仕方がないと言えば仕方がないのだろう。それでもこれは整理整頓できなさすぎなのだが...


「まっ、整理整頓は今度でダイジョブかな?」


 きっとこういう小さい怠けが駄目なんだろうけど目の前にある楽な選択肢を選びたくなるのも人間の性だ。

 

「今すぐにしてください。リース様がそれを言うのはしないときなので」


 人間の性だと納得して逃げようとしたのだがアンゲロスがそれを許してくれるはずがなかった。

 こういうのは先にやったほうがいいのでその正論に私は何も言えるはずがなく渋々整理を開始する。まぁ、やらないといけないことと理解はしているので渋々というわけではない。


「私は先に食堂の方に行っていますので何かあったら呼んでくださいね?」


 そう言って部屋を出ていくアンゲロス。本当に無責任である...せめて手伝ってくれればいい物を...

 そんな愚痴を言ってもアンゲロスは戻ってこないので愚痴を考えながらも私の手はどんどんと動いていく。こういう時は私の体が本当に便利である....

 取り合えずさっさと整理は終わらせて軽く食べて、寝ることにしよう....

 

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