王都立魔法学園編:前編
32話 王都に向けての準備
「リース様、急いでください!」
「ちょっと待ってぇ!!」
王都にある魔法学園に特待生として呼ばれた私、リースは現在学園に向かおうとしている....のだが....
「後10分しかないんですよ?!これ逃したら次の馬車明日になるんですよ!?」
私が寝坊したせいで馬車に乗れない可能性が出てしまっている。
私が寝坊すること自体は多々あるのだが今日は寝坊したら絶対に寝坊したらだめとアンゲロスに釘を差されていた。そう、刺されていたのだが.....
「あれほど前日は十分睡眠を取るように言いましたのに......」
「アンゲロスギブギブ!!尻尾で首絞めないで!!」
それでも寝坊をしてしまった私は普段アンゲロスが隠している尻尾で首を絞められて絶賛準備をしながらしばかれている途中である。主従関係がどうなっているのかわからないと思うが私もわからないので大丈夫だろう。
当人がわからないと言っているから深く考える必要などないのだ。まぁ、今回の場合は私がその当人なのだが....
「変なことを考えていないで早く準備を進めてください」
真顔のアンゲロスが怖い。怖すぎる。
アンゲロスは
実際に今私を真顔で見ているアンゲロスはとにかく怖い。私はちょっとのことで恐怖を感じることはないのだがこのアンゲロスの顔は本能が従わないと危険と全力で警報を鳴らすほどには怖い。
「わかったので首を締めないでくれませんかね...?」
別に首を絞められているから死ぬわけでも喋れなくなるわけでもないのだが元人間....まぁ今も人間なんだが....の私からすると首を絞められると呼吸が苦しくなるという先入観があるためあまりいい気分がしない。
まぁ、何回も言うが死ぬことは無いので別に首を絞められても同ということは無いのだが....
「リース様なら首を絞められても特に問題はありませんよね?」
聖母のような慈愛に満ちた笑みを浮かべるアンゲロスだがその目は確実に笑っていない。数千年の付き合いがある私でも見たことのないアンゲロスの表情に思わずこわばってしまう。
初めて見る表情だが私の研ぎ澄まされた本能で私は正解の選択をする。
「はい.....」
ここは従うのが正しい選択。そう考えたのでアンゲロスにこれ以上何か言う事は無くおとなしく準備を進める。
なお、私とアンゲロスの間でこの会話が行われたのは僅か十五秒程度なので急いで準備をすれば馬車に間に合うという状況である。そんなこともあり私はアンゲロスに許されて無事に解放されることになった。
主従関係が逆転しているとか細かい事は気にしてはいけない。何故ならばこれが割と日常になりつつあるからだ。
「そういえば時を止めて準備すればいいんじゃないんですか?」
アンゲロスのなんとない一言に私はあっ、と驚愕の表情を浮かべる。
会話からもわかるとおり私は時を止めることができる。それもタキオン粒子を止めるだけで時を止めることができるのでかなり低コストで効率良く止めることができるのだ。
ただし発動に2秒ほどのタイムラグが起きてしまうため実戦で使うことは殆どなかった。私が時止めの存在を忘れていたのも使う機会がなかったからである。
「
時空間魔法という使い手が私以外にいない魔法の超級である『
勿論無理やりタキオン粒子を停止させて時を止めることもできるのだがそれよりかは
「さっさと終わらせないと」
自分に
光と同じ速さでなおかつ私の常人離れした脳ならば準備なんて一瞬で終わる。そんな私の予想通りに停止世界の時間だが本来なら1時間程かかる準備をものの1分で終わらせる。
最初から光と同じ速さで動けばいいのでは?と思うかもしれないがそんなことをすれば確実に周りを壊してしまう可能性があるので壊してしまってもすぐに直せる停止世界を選択したというわけだ。
「と言うか1時間かかる作業を5分位で終わらせようとしたアンゲロス基地くすぎない?まぁ、とは言っても今更出しいいんだけど....」
誰にも聞こえない空間でアンゲロスに対して文句を言う。停止世界では同じく時間を止められる存在しか行動が出来ないという制限があるのだが私以外に時間を止めることのできる人物は神以外にいないので停止世界では愚痴などを聞かれることは無いので秘密を守るのにはちょうどいいのだ。
そんなことを思い出したので今度からは停止世界を活用しよう...と、そんなことを考えながら私は再び時間を正常に戻す。
「準備終わったよ」
「わかりました。これで何とかなりましたね....」
心の底から安堵するようなアンゲロスの表情にそれだけ乗り遅れたくなかったことが心から伝わってくる。
改めて考えればアンゲロスの態度にも納得する事が出来る。何故ならば全能力値が無限の私は直ぐに王都に着くかもしれられないのだがアンゲロスは普通の人よりも少し早い程度である。私ほど早く着く事が出来ないのでアンゲロスが馬車を逃したくないというのは当たり前なのだろう。
「まぁ、そう思うのは置いときまして....」
「え?」
安堵したような表情を浮かべていたアンゲロスだったがそれは一転。真面目な表情に変わりそして尻尾で私の事をぐるぐる巻きにする。
「急ぎますよ!」
私が落ちないように尻尾にものすごい力を込めると天使の羽を広げて近くに合った窓ガラスを突き破りながら空に飛翔する。
そんないきなりの行動に唖然とする私だったが最初に思ったことはこれ、アンゲロス飛べるし馬車で行く必要なくない?と、そんな現実逃避だった.....
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