30話 剣聖と元勇者

「やっと見つけた....」


「リース様ですか?どうなさったんですか?」


 機械仕掛けの神の意デウス・エクス・マキナの場所でトウハクを見つけてから暫く探し回ったのだが1時間したころにやっとハクオウの事を見つける事が出来た。しかもやっとの思いで見つけることのできたハクオウは自分の鍛錬に物凄く集中しており私が何度声をかけても気づいてくれなかった。最終的に声をかけられたのは見つけてからもう1時間後という始末である....

 それだけ集中しているという印だし、ハクオウの剣術も私の神剣術に迫っているものだったので見れてよかったと考えている。それでも無視されたのは普通に悲しいのだが....  


「ハクオウって、剣豪の称号持っていない?」


 これは結構前から気になっていたことだ。剣豪の称号には超集中という能力がついているのでハクオウの集中力はこれが由来だと考えている。違ったら天性のものということになるが、剣豪の称号持ちで間違いないだろう。

 外していたらめっちゃ恥ずかしいしあっていてほしい物である....


「確かに俺は持っていますね。剣豪の称号と剣聖も持っています」


「え、本当に?」


 剣豪の称号を持っているのは当たっていたのだがそれ以外にもハクオウは剣聖の称号も持っているとのことだ。剣聖というのは剣豪と並ぶ剣士系の称号でも最高の効果を持っている称号の事である。

 剣聖の称号を獲得するには常人離れした反射速度や至高の剣技を持っていることが必要なのでその称号を持っているだけで超一流の剣士と言う事が証明される。それに加えて剣聖の称号の効果である身体能力超越で一定時間ではあるが本当の意味でも神速を再現する事が出来る。


「本当です。何ならステータスを見ますか?」


「あ、見てみたいわね」


 ハクオウから自分のステータスを見せてくれると申し出てくれたので私はここぞとばかりにハクオウのステータスを確認することにした。


〈ステータス〉─────────────


白桜ハクオウ悪魔公デーモンロード

体力:178290/178290

魔力:25618/25618

筋力:17281

俊敏:861

防御力:16125

魔法防御力:15627

幸運:471


スキル

神速LV.Ⅹ、魔力制御LV.Ⅹ、未来攻撃予測LV.Ⅹ、至高の剣術LV.Ⅹ


称号

剣豪、剣聖


────────────────────


 まずハクオウが悪魔公デーモンロード...つまりは悪魔と言う事に驚いたのだがそれ以上にスキルの至高の剣術LV.Ⅹというのに驚いた。この至高の剣術LV.Ⅹは鑑定した感じだと私の持つ神剣術のほぼほぼ下位互換ではあるがそれでも同等の性能を誇っている。

 つまりハクオウは今の状態でも剣技だけを見るならば神の領域に片足を入れている状態にある、と言う事だ。それだけではなくこの時代にしてはどのステータスも色々と高いので剣技以外も普通に強い。


「ハクオウって....悪魔公デーモンロード何だね」


「俺はこれでも魔の国で魔王の配下は知らないがそれ以外なら一番強い存在ですしね」


 衝撃の事実その2、魔王の配下がどうかは知らないのだがそれを除くとハクオウは魔族の国で最強の存在だったらしい。まぁ、この前のキルとかいう奴を見ればなんとなくでわかるし、ステータスは低くても至高の剣術で私が魔王の時でも中位....何ならこのまま育てれば上位にも行ける実力があるみたいだし当然だろう。


「とはいっても魔王には届きませんでしたし、姫様にも勝てないんですよね」


「と言う事はトウハクはハクオウより強いのね?」


「はい。昔姫様にはボコボコにされましたよ....」


 なんとなくでわかっていたのだがハクオウよりもトウハクの方が強いらしい。まぁ、こういうファンタジーの世界だと守られる側が守る側よりも強いのは結構あるあるだし仕方がないと言えば仕方がないのだろう。

 実際私も今回の肩書は公爵家次女と守られる側ではあるのだがチートみたいな能力を持っているのでトウハクと似た感じである。とはいってもトウハクは私みたいにチート能力を持っているわけではなさそうだけど....


「そうなのね....」


「従者としては不甲斐ないくらいですよ...」


 ハクオウは本当に悔しそうな表情を浮かべているからトウハクに...守るべき存在に負けたことがよっぽど悔しいのだろう。そもそも悔しく感じていないならハクオウの力で十分だろうしこんな鬼のような特訓なんてしないと思う。

 というかさっきも言ったがハクオウの力はこの時代だと十分なものなので特訓する意味が無いから悔しいと感じているのだろう。


「そしたら今度私が鍛錬を付けてもいいかしら?」


「リース様が...ですか?」


 今までもハクオウの事に対してちょくちょく鍛錬をしていたのだがそれは本格的なものではなく私の隙間時間を見つけてやっている軽い物なのであまり意味が無い。基礎能力が上がるという点だけで見ればかなり効果はあるのだがそれでも技術が上がるわけでもないし今のハクオウの基礎能力は十分すぎるものなのでそろそろ本格的なものにしようと考えていたところである。

 そんな時だったのでハクオウのトウハクに負けて悔しいというカミングアウトは丁度いいものだと考えた。


「そう。今までのは基礎訓練だけだったし丁度いいと考えていたのよね」


「そういうことならよろしくお願いします」


 ハクオウもどうやら乗り気みたいだし本格的な鍛錬をするのは確定でいいだろう。私にも神剣術や勇者としてのノウハウと色々と教えれることがあるのでそれを教えれればハクオウはかなり成長するだろう。

 それに加えて私よりも教えることの上手いアンゲロスに魔法を教えてもらえばその分も成長することが可能なのでハクオウはかなり強くなることだろう。


「リース様!学園に関する相談はどうするんですか?!」


「あ、忘れてた....」


 ハクオウの鍛錬について色々とめどがついたことで一安心したのだがどこからともなく転移してきたアンゲロスの声で相談についてを思い出す。

 滅茶苦茶大事な相談のはずなのになぜ忘れてしまったのだろうか?まぁ、割といつも通りなので特に気にするものでもないのだがこれからは気を付けることとしよう...

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