28話 招待状

「私宛に手紙ですか...?」


「ああ。王都のギルドからお前宛てにだが...何かしでかしたのか?」


「何でそんなこと言うんですか?!」

 

 季節は日本で言うと12月、まぁ、要するに冬位である。そんな寒い季節に私はこたつの中でぬくぬくしていたのだがいきなりペインさんに呼び出されてしまった。

 王都のギルドから呼び出されるようなことをした覚えはないので本当になんで呼ばれたのか謎である。ゴブリンカラミティを倒したのはアーゼさんになっているはずだし、この前見つけた機械仕掛けの神の意デウス・エクス・マキナはそのまま放置している。出来れば回収したいけど....


「お前の事だ。何か非常識な事でもしたんじゃないか?」


「いや....今回は私なにもしていませんけど?」


 なにも嘘はついていない。証拠隠滅などはアンゲロスに任せている為何か私がやらかしたという証拠が残っているとは思えないしさっきも言ったが最近はやらかしているわけではない。

 一体何故私が呼ばれるのか、まったく見当がついていない状況である。いや、なんとなくでわかるような気がするのだがそれはきっと気のせいであると思いたい...


「しかしメテンソマ家か....お前本当になにもしてないんだよな?」


「してないって言ってるじゃないですか!」


 メテンソマ家私の実家という言葉を聞いてすべてを察してしまった気がする。しかしお父様達には私がどこで何をしているか知らせていないのでバレていないはずである。だからこそ別の要件であると思うが....


「開けていいですか?」


「お前宛てだしな」


 ペインさんの許可は出たので私は手紙を開ける。中からは私に対する王都立魔法学園への招待状が出てきた。しかしそれだけではなくお父様のいつも見ていた字でどういう経緯で私に学園の招待状を送ることにしたのかが書かれていた。

 私に招待状を送る経緯としては『私の歳でゴブリンキングとゴブリンエンペラーを倒せるものは早々いないのでその才能を無駄にはしたくない』とのことだ。

 建前上は私の事を死なせたくないとか言っているが冒険者は別の国に自由に行く事が出来る速行である。要するに私の事をここ、ユージリアで首輪をつけて飼いたいと言う事である。それがお父様の意思かどうかはわからないが....


「王都立魔法学園の招待状か....確か平民だと学費が高すぎてなかなか行けない学園....だっけか?」


 そう、私が招待状を受けた王都立魔法学園だが学費がめっちゃ高いのである。学費で学園に張っている結界の維持費の一部を賄っているとはいっても到底平民では払える値段ではないため基本は貴族の子供か商人の子供しか行く事が出来ない。

 たまに現れる光属性や聖属性などの希少属性魔法を使える平民は一応国から援助金が出るらしいがそもそもこの2つは素質がないと使えない魔法になっているから滅多にその使い手が出てくることは無い。


「そうですね....何件か学園の方が学費を払うケースがあるみたいですし私の場合はそれでしょうね....」


 リース・メテンソマとしては魔法が使えないことにしているのだがリースとしてはバリバリ魔法を使ってしまっている。それもアンゲロスに修行を付けてもらったという建前があるが、ペインさんの目の前で光魔法を使ってしまっているので私の学費が免除になる理由はなんとなくわかる。

 それに手紙にも書いていたのだが成人なり立てでゴブリンキングとゴブリンエンペラーを倒せる人物はよっぽどの強力なスキルを持っている人物に限られてくるので私もそれに入ってしまったのだろう。希少なスキルを持っているのはホントなため私としては何も言えないのだが.....


「どうする?お前は学園に行くのか?」


「できれば行きたくはないですね....」


 学園にはお姉様もいると思うので私が学園にはいれば十中八九バレてしまう。そもそもの話なのだがこういう手紙を私の実家から送られている時点でバレている可能性はかなり高い。

 一応お父様やお母様、お姉様と同じであるプラチナブロンドの髪色は真っ黒に染めているのでバレていることは無い....と思いたいがそれでも直接会うとバレてしまう可能性が高い。

 特に過保護でシスコン(な気がする)お姉様なら髪色を変えたぐらいでも私の事に気づいてしまう可能性が大である。


「そうか....とはいっても公爵家からだし平民のお前には選択しないんじゃないか?」


「そうなんですよね....」


 いくら私の実家とはいっても今の私は平民のリースである。平民が帰属に従うというのはこの世界では当たり前の為公爵家から招待状が来た時点で私には選択肢などないも同然である。

 だからこの招待は受けるしかないのだが....


「まぁ、私には家だってありますし師匠とかトウハクちゃんにハクオウさんがいるのでそこは要相談ですね....」


 今の私には家だってあるし何よりも愛すべき家族がいる。愛すべき家族がいるからこそそう簡単に私はこの招待に頷く事が出来ない。

 普通ならば私だって平凡で普通な学園生活を送ってみたいのだがここで頷いてしまえばアンゲロスやトウハク、ハクオウが私についてこれるかどうかわからない。というか3人とも魔族であるためついてこれないのは必然である。

 この町の住民の皆さんが優しく、アンゲロス達も町の為に色々やっているみたいなのでこの町では魔族としてでも3人が受け入れられているのだがそれが王都でも同じような感じになるとは限らない。むしろ拒否されるものだと私は考えている。

 それだけ魔族と人間の溝はとても大きいものである。


「それなら仕方が無いな....俺も上に掛け合って期限は延ばしといてやるからじっくり決めるがいい」


「はい!」


 ペインさんも上に掛け合ってくれるみたいだしこれは本気で考える必要がある。私の為にも、アンゲロス達の為にも今後どうするのかを.....

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