21話 物件の候補
「ペインさん!来ましたよ!」
「おう。リースか.....」
この前も来た応接室につくとそこには何故か疲れた表情をしているペインさんが予想通りに座っていた。まぁ、疲れている理由になんとなく予想はつくのだが私は自ら轍を踏む真似なんてしないからスルーの方向でいいだろう。
恨むなら自分かアーゼさんを恨んでくださいね。
「それで、物件ってどんな感じですか?」
「俺の惨状には触れないのかよ.....まぁいい。物件は4つ程候補があるからその中から選べ」
そう言うと紙を4枚取り出すペインさん。当然家の紹介の紙なのだが全部が思った以上に安くて、情報を見た感じだと高級そうな家である。
ペインさんが調べてきてくれた物件なので詐欺なんかはありえないだろうしこの安さにはなにか秘密があるのだろうか?思わずそう思ってしまった。まぁ、私の思いすぎだとは思うが.....
「これ安すぎませんか?」
「いや、これが相場だぞ?」
やっぱり私の考えすぎだったらしい。魔法は衰退しても技術は上がっているみたいなのでまぁ相場が低くなっているのも当たり前....なのかもしれない。
詳しいことは私にはよくわからないのでそこはおいおいアンゲロスに調べてもらうか自分で調べることにしよう。と言っても別に特に知らなくても困るものではないのだが...
「なるほどです。そういうことならわかりました」
相場が変わっているんだったらそれに従えばいいだけだし困る事ではないだろう。むしろ私的には安いので結構得した気分である。実際に得したのかどうかは知らないが気分が良ければそれでいいのだ。本当に私は庶民である....
「気に入った物件はあるか?」
「一応絞りましたが実物を見てみたいですね」
一応候補はできたのだがそれでも実物を見た方が圧倒的にいいのでペインさんに実物を見せてくれるよう頼んでみる。勿論無理なら諦めるつもりである。まぁ、今行くのをあきらめるだけで後で空でも飛んでいくけど。
ペインさんからの紹介だから詐欺はないとわかっているのだが万が一何かがあったら絶対に嫌なので私は実物を見てみたい。きっと私の気持ちを分かってくれる人がいる筈.....
「勿論いいぞ?こっちとしては見せる前提だったしな」
「そうなんですね」
なんとびっくりペインさんは元から私に物件の実物を見せるつもりだったらしい。どうやら私の早とちりのようだった。
まぁ終わりよければ総て良しというし大丈夫だろう。
「それじゃあお願いします」
「おう。ただし俺にも仕事があるからな、カイナの奴を呼んどいたからそいつについていけ」
「カイナさんですか?」
初日と次の日にお世話になってから依頼を受け付けるどころか冒険者ギルドまで来ていなかったので全くあっていなかったカイナさん。なんだか濃すぎる毎日を過ごしていたため実際には一週間くらいしか経っていないのだが何故だか懐かしく感じてしまう。
それもこれも濃すぎる毎日のせいだ!おのれ私の濃すぎる毎日!!!とまぁ、意味不明な事に対して怒るのはやめておこう。
「ギルドマスター!呼びましたか?」
「来たな。お前今日暇だろ?だから
「リースさんの面倒ですか?」
どうやらカイナさんはペインさんにここに来るように言われただけでありどうしてかは教えられていなかったらしい。と言っても私に物件の案内をするだけなので断られる理由が見当たらないし大丈夫だと思うが....
「成程です....いいですよ。今日はもう仕事から上がりますし」
「ありがとうな。こいつは色々と非常識なところがあるから気を付けてくれよ」
「非常識って何ですか?!」
ペインさんが勝手な事を言ってきたので思わずツッコんでしまった。と言っても私が非常識なのは最近実を持って染みてきているので本当は何ともいえないことなのだがバレなければ大丈夫精神で取り合えずツッコむことにした。
バレなきゃ犯罪でもイカサマでもないから大丈夫だろう。ってかこんなことで犯罪になるはずもないから正直どうでもいいのだが....
「そのままの意味だ。お前は非常識、アーゼと比べてもわかるだろ?」
「まぁ、一応は....」
私の心の中を見透かしているようなペインさんの質問に思わずうなずいてしまう。ペインさん然りアーゼさん然り何故私の心を読んでいるかのような事を言うのだろうか?それが本当にわからない。
「表情に感情がもろに出ているからな。簡単にわかるんだよ」
わからないと考えていたのだがペインさんが理由を教えてくれた。
まぁ、確かにポーカーフェイスは無理だと思っていたのだがまさかそこまで感情が表情に出ているとは思っていなかった。アンゲロスとは違い私は確かに感情が出やすいのでペインさんの言葉に納得してしまった。
「そういうことさ。だから別に心を読んでいるわけじゃねぇよ」
「それならよかったです....」
「えっと....リースさんもう行きますか?」
私とペインさんの会話にまるでついていけないようなカイナさんだったがそれでも意を決して私に声をかけてくれた。
確かにこのままカイナさんを置いてけぼりにするのは私としても嫌であるし、何よりも早く物件を見たいのでカイナさんの言葉に従う事にしよう。
物件の内覧....本当に楽しみである!
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