22話 騒動の予感

「取り敢えずここがリースさんの第一候補の家になります」


「大きいですね.....」


「一応はパーティーのホーム向けの家ですので」


 私が一番気に入った家についたのだがやっぱりというべきか大きかった。そこそこ大きいパーティーのミーティングや旅団と呼ばれる個人のギルドっぽい人たちが使う事を想定して建てられたらしいので私とアンゲロス、2人で使うとなると滅茶苦茶大きな建物である。

 魔王城に比べると小さいとかは決して思っていないからね?


「私と師匠の2人だと部屋がかなり余りますかね?」


「そうですね....ざっと15部屋以上は残ると思いますよ?」


「まじですか....」


 私とアンゲロス、2人で生活しても15部屋以上余るのは宝の持ち腐れな気がする。ないとは思うけどこれ以上暮らす人が増えるんだったらここが適切だとは思うけど....増えることなんてないと思うから今はいらない....かな?

 増える予定なんて全くないしね!


「えっと...どうします?他の家も割と近くにあるので見に行こうと思えば見に行けますが?」


「あー....そうですねお願いします。幽霊屋敷が見てみたいです」


 残り3つの中で私が気になっているのは洞窟にある家とツリーハウスである。残りの一つ?あれは論外である。幽霊屋敷とか無理に決まっている。

 そう、ペインさんに渡された資料では1つが私が今いる普通の家、もう1つが洞窟にある隠れ家的な家、そしてツリーハウスと幽霊屋敷。この中だと普通の家がまともに見えてくる。というか幽霊屋敷のせいでそれ以外すべてがまともに見えてくる....

 けれど一番好奇心が沸いて出てくるのは幽霊屋敷、これ一択である。だからまずは幽霊屋敷を見てみたいのである。


「幽霊屋敷ですか?大丈夫ですけどその...最近魔族が出るっていう噂が出てきていて....」


「魔族ですか....?まぁ、大丈夫ですよ!」


 魔族が出てくるのは確かに不安になるかもしれないが、この時代の奴なんて私の敵では無いので問題はない。むしろ私のオーラや魔力をあてるだけで逃げるのでは?と思ってしまうほどこの前の魔族は弱かったので問題になったらそれは恥だと思う。

 流石にこの時代の魔族を舐めすぎているかもしれないがそれでもこの前のあれを思い出すとどうしても同じような思考になってしまう....


「それに資料で見た感じだと冒険者ギルドとも近いですし何かあったらアーゼさんが来てくれると思うので行きましょうか!」


「リースさんがそこまで言うならわかりました。幽霊屋敷までは転移テレポートで行く事が出来ますので」


 カイナさんは最初こそは渋っていたが私の大丈夫な態度に心が折れたのか幽霊屋敷に行く事に納得してくれた。さらに嬉しい誤算として幽霊屋敷までは転移テレポートという魔法で行けるらしい。転移テレポートというのはきっと私の創作魔法の1つである転移メタスタシスと同じような感じであると考えれるためかなり便利な事であると予測できる。

 転移出来るよな魔法でハズレなどそうそうないと思うのだけど今はそんなこと置いておくとしよう。


「それって今すぐいけるんですか?行けるなら行ってほしいんですけど....」


「勿論です。転移テレポート


 転移テレポート、そうカイナさんが言うと景色が日の当たっている綺麗な屋敷のような家から森の中にあり、暗くてジメジメして冒険心をくすぐられるような外観の家に変わる。これはこれで案外ありじゃないか?そう思ってしまうほどに大きい家が私の目の前にある。

 幽霊屋敷と言う事で資料はあまり詳しく見ていなかったのだが掃除すれば全然住めるそんな風な家であった。幽霊も私の光魔法でどうにかできると思うのでここにしようかと悩んでしまう。


「ここが幽霊屋敷ですね。見ての通り森にあるのでかなり不便ですが屋敷自体は大きいんですよ」


 そう言いながら1つの鍵を取り出すカイナさん。おそらくカイナさんが持っている鍵がこの家の鍵なのだろう。とはいってもここで別の家の鍵を出す意味はないので当たり前と言ったら当たり前なのだが...


「私はちょっと幽霊とか苦手なのでここで待っていますので何かあったら呼んでくださいね」


 鍵は開いたのだがカイナさんはどうやら幽霊などが嫌いらしい。仕事なのにそれでいいのか?と思ったのだがどうなるのかはペインさん次第なので私が気にすることではないだろう。

 それにカイナさんの顔が結構青ざめている.....というか今にも気絶しそうなので仕方ないと言えば仕方ないのだろう。本人が嫌がっているのに無理やり連れて行くほど私は鬼畜ではない。


「わかりました。何かあったらすぐに戻ってきますね」


「本当にすみません....」


 それにこの家はそこそこの魔力の痕跡が微かに漂っているので噂である魔族がいるのは確実だろう。言い方は悪いがこの状態でカイナさんがいると確実にお荷物になってしまうし最終奥義である私の魔神化や勇者としての力の開放などを見られてしまう可能性があるので外で待っていてくれた方が私にも、カイナさんにも何かと都合がいいのだ。要するにwinwinの関係である。

 最悪の場合は記憶操作をすればどうとでもなるので別にいても構わないのだが.....


「いえいえ大丈夫ですよ。人には得意不得意がありますしね」


 当たり前のことで言うのは二度目になるのだが人には得意不得意がある。だからそれを強要することは私は絶対にない。状況によってはするかもしれないがそれは気にしないでおこう。


「ありがとうございます.....」


 カイナさんが心の底から安堵しているような表情を浮かべているので私もつい安心したような表情を浮かべてしまう。他人に何かあると自分事と捉えてしまう、それが昔からの私の癖なので観察眼は結構優れている。それはスキルとして昇華するほどには....

 そして今回もその観察眼を使って私は既に見抜いている。ここら一体に幻術が使われていると言う事を。

 私の魔王の時の配下の1人が使っていた幻術に比べると玩具程度にしか感じられないものなのだがそれでもこの時代ではそこそこ強い方であると予測できる。

 だからこそ本当に楽しみである。魔族の魔力痕跡があり、なおかつ幻術で隠蔽されている幽霊屋敷、全てが楽しめるような要素で出来ているから好奇心が沸いてくるのだ.....

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