18話 対策

「それで?アンゲロスが私のストーカーをしていて出てきたのはわかったんだけど、これから一体どうするのかしら?」


「どう....とは?」


 私の言葉に「え?」っという感じの表情を浮かべるアンゲロス。てっきり私はこの後の予定などがすでに決まっていると思っての発言だったので、思わず私も「え?」と驚いてしまいそうになった。まぁ、必死に驚くのは止めたのだがそれでも表情にはかなり出てしまっていただろう。

 別に驚かない意味はないので表情に出ていてもいいのだが、配下の前では威厳のある魔王を演じていたのでただアンゲロスに表情がコロコロ変わるのを見せたくないだけである。


「いやさ、今アンゲロスって逃亡中なんでしょ?そしたらどこにも行くことないだろうし、どうするのかなって思っただけだよ。余計なお世話だったかな?」


「いえ、リース様に心配してくえれるだけで私は嬉しいです!!!!!!」


 何でだろう、アンゲロスは並大抵のことだと消滅しないはずなのに消滅しそうな気がするのだが?ってか『じゅー』と何かが焼けるような音が聞こえてきたような気がするのだが.....うん、まぁ、気のせいだろう。ってか配下の消滅理由が「主に褒められたから」みたいな馬鹿な理由で消滅するのは嫌なので本当に気のせいであってほしい....


「そ、そうなのね....それでどうするの?」


「そうですね....一応は今まで通りに逃亡生活を続けようとは考えています。流石に一定の場所に留まっているのは危険すぎますしね」


 至極まっとうな意見。普通ならそれが最善策なのかもしれないのだが、この町には最強の魔王だった私がいる。だから何処かに行くよりかはこの町に留まっていた方が安全だと私は考えている。

 勿論安全の基準は人それぞれなのでアンゲロスがどう思っているかは知らないのだが私は自分の力がこの世界の最上位にも通用することは知っているので多少の事が起こるよりかは安全と知っているのだ。

 だから....


「もしよかったらなんだけどさ、私とまた一緒に暮らさないかしら?」


 その提案をアンゲロスにする。

 魔族の逃亡者となっているアンゲロスと一緒に生活するのは確かに危険なことかもしれないが、私の力とアンゲロスの力があれば並大抵の事.....何なら神が攻めてこない限りは安全なので一緒に居る方が得策である。

 それに昔の自分の配下が困っているならば助けたいのは当たり前だろう。私だって人間だ、当然そういう感情は持っているので私はその感情に従って、アンゲロスを助けただけである。


「リース様とですか....?」


「うん。私ね今は冒険者っていう職業だからそのうち収入は割と安定して高収入になるだろうしアンゲロス1人を受け入れる余裕はあるのよね」


 最近というかさっき不本意ながらAランクになったのだがSランクのアーゼさんはかなり安定して高収入だそうなのでそれは一つ下のAランクでも同じような感じだろう。だからこそ今の私にはアンゲロスの面倒を見る余裕があるのだ。 

 それにいざとなればずっとため込んでいた金銀財宝に希少な金属である『魔白銀ミスリル』と『聖白金アダマンタイト』、それに『究極の魔鋼ヒヒイロノカネ』と『究極の聖鋼アポイタカラ』という最上級の金属に私の無限の魔力が前提として作られる未知の金属『祝福の神鋼オオヒヒイロノカネ』と『至高の神鋼オオアポイタカラ』があるので多少はお金が入ってくるだろう。


「そうなんですか....?」


「うんうん。全く問題ないよ!今は私の1人暮らしだしそのうち家も買うから問題無し!」


 宿屋に今は泊っているのだがそれはもう少し家を買おうと思っているのでそれまでは気配を隠蔽して生活してもらうことになるのだがその点を除けば全くをもって問題はない。アンゲロス自体が隠蔽工作向けの魔族なのでそれすらも問題になっていなかったりする。

 だから実質的に問題などなくアンゲロスを匿ってあげる事が出来るので大丈夫なのだ。まぁ、アーゼさんに色々と説明をしないといけなくなるのが難点なのだが.....


「あ、そうか。アンゲロスがあるんだけどいいかしら?」


 昔からアンゲロス私の配下相手にはと言えば割と言う事を聞いてくれたので今回もそれを使う。そもそもお願い以前の問題に魔王の勅命を反対できる魔族など反魔王の軍勢くらいしか思いつかないのでお願いの意味はないと思うのだが....


「リース様のお願いならば何でも聞きますよ!!」


 私の目論見通り簡単にお願いという言葉につられてくれた。私がお願いという言葉を使うのは結構大変な事を押し付ける時や命令するときしかないのだがそれを何回経験しても私のお願いを聞いてくれる私の配下はおかしいのだろうか?と言っても私も便利と考えているのでこのままの方がいいのだが....

 そんなことはともかく、今は私の思いついたことをアンゲロスに伝えることの方が最優先である。

 

「それじゃあ私の師匠になってくれないかしら?」


「え?リース様の師匠ですか....?」


 私が思いついたアンゲロスの作戦はアンゲロスが私の師匠になる事。その理由はさっき私はアーゼさんとペインさんに昔魔族に拾われて修行を付けてもらえたことがあると言った。そしてアンゲロスは光魔法と火魔法を使えるので私の話に真実味が帯びる。

 そうすることで私の話は真実っぽくなるしアンゲロスは私の師匠と言う事で多少の生活保障はしてくれるかもしれない。何なら私と同じように冒険者登録ができる可能性だってあるので一石二鳥どころの話ではないのである。


「そ、やってくれるかしら?」


「勿論です!リース様の御命令ならば」


 取り合えずアンゲロスの紹介方法は決まったので残りはアーゼさん達に怪しまれないように紹介するだけである。本当に大丈夫なのかな.....?

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