17話 次なる騒動

「流石ですリース様、例え人間に転生してもまだまだ健在のようですね」


「アンゲロス?」


 嬉しいようで、あまりうれしくない再会。もしもこれが町で普通に再開だったら嬉しかったのかもしれない、けれども今は直ぐに町に帰りたい状況でしかも今の私は過去の事をあまり考えたくないという最悪な状況。この状況だとアンゲロスとの再会を素直に喜ぶ事が出来ない

 本当は嬉しいのだが、今この状況でアンゲロスと再会してしまうと、こう、なんかフラグが出来ている気がしてたまらないのだ....


「はい。リース様のメイドであるアンゲロスですよ」


「え、いやでも......」


 顔も魔力波長も魂の形も全てがアンゲロスそのものなのだが服装が私の知っているアンゲロスとはかけ離れている服装をしていたためなんとなく信じる事が出来ていなかった。

 私の知っているアンゲロスはいつも最高級の品質のメイド服を着て髪型にも気を付けている出来る大人の女性というイメージだったのだが今のアンゲロスは格好が全く違う。いつも着ていたメイド服はボロボロとなっており体にもところどころ聖痕という勇者にでもくらわされた攻撃機の跡が残っている。


「リース様が困惑される理由もわかります。私はリース様が倒された後も必死に抵抗したのですがこのように勇者に深手を負わされてしまいまして....」


 そこからアンゲロスは私が勇者とクソ女神に倒されてからの事をすべて教えてくれた。

 アンゲロスがボロボロな理由は勇者とクソ女神の神級魔法『聖痕破邪セイグリッドブレイク』と神域魔法『魔邪聖崩壊アーシラト』をくらったからとのこと。それを聞いた私はアンゲロスに大量の聖痕がある事に納得できた。それと同時によく神級魔法と神域魔法をくらって生き延びれたわね?!とも思ってしまった。

 神級魔法とは神の力を借りて勇者や聖女などが使える究極の魔法であり、魔に属するものは触れるだけではなく最低でも半径1キロに居れば消滅する魔法であり、アンゲロスはそれをくらったと言っているので存在出来ているだけで上出来である。


「私の種族は天魔族スペクターです。魔に属するものでありながら聖でもある異質な存在ですよ?」


「ああ、そういえばそうだったね....」


 確かにアンゲロスは天魔もといこの時代での名前は天魔族スペクターという種族なので聖なる属性である神級魔法と神域魔法に耐えれても違和感はない....かも?

 と言っても別に私だって他人の神域魔法は使し何なら余裕で私も自分の神域魔法を持っているから魔族でも使えないものというわけではないので耐えれても特段変なものではない。


「まぁ、今はそれはいいのです。私がリース様の元に来た理由は唯一つ、リース様と繋がっている全ての因縁に決着をつけてください」


「私と繋がっている因縁?」


 心当たりがないと言えば噓になる。そもそも五回も転生している私には因縁がありすぎるのでアンゲロスの言葉には心当たりしかないというのが今の状況である。まぁ、心当たりしかないのだがアンゲロスは全ての因縁と言っているので心当たり全てを決着をつけないとダメなのだろう。


「はい。リース様は今回を含めて五回も転生をしております。そのためあなた様の魂は沢山の因縁と繋がっているのです」


「そう.....なのね」


 あまり当たっていてほしくない予想が当たってしまったため喜ぼうにも喜べない状況。そんな状況を体験するのは初めてなのだが滅茶苦茶にイライラする状況だ。

 もうこんな体験したくない、とそんなことを思いつつも私は思考を開始する。私が持っているであろう大量の因縁、それは何の因果か知らないのだが全て同一世界線で起きている為、決着をつけるのは簡単である。しかし今は過去の因縁よりもこれから起こるであろう今世の因縁に対して決着を最優先にするのが一番いいだろう。

 というのもアンゲロスの言う過去の因縁とは私に心当たりが沢山あるのでどれを解決すればいいのかわかっていないというのが現状である。そのためまだわかっていない....と言っても予想は立てているのだが....の因縁に決着をつけるよりも確実にわかるであろう今世界の因縁を解決するのが最優先である。


「私の因縁に関係している話は分かったわ。それで?アンゲロスは何で私の目の前に現れたのかしら?」


 因縁云々の話よりも今はなぜ私の目の前にアンゲロスが現れたのか、それがめちゃくちゃ気になっている。いくら魔王としての名前と今の名前が同じだとしても魔王が今は人間であると予想できる人物は相当少ないと思うのでそもそも何故アンゲロスが私の事を特定できたのか、そんなことも聞きたいのである。


「私がリース様の事を見つけられたのは本当に偶然でした。知っているかもしれませんが今の私は人間で言う指名手配扱いされています。逃亡の為この町に来たのですがそこでリース様のものと思われる魔力を感知しただけです」


「そういえば昔から私の配下たちは何故か私の魔力は直ぐに感知できたんだっけ....」


 あまり思い出したくないことを思い出しながらもアンゲロスが私の事を見つける事が出来た理由は納得できた。転生しているとはいえ、種族が変わっていてもその魂は勇者としても聖女としても大賢者としても魔王としてもすべて同じものであるため魂に由来している私の魔力はそう簡単に変わる物ではない。その性質を利用してアンゲロスが私に気づく事が出来たと考えると腑に落ちる。

 見つける事が出来た理由はわかったのだがそれでは何故私の目の前に出てきたのか?因縁の話だけならわざわざ出てこなくても伝える手段はいくらでもあると思うのでアンゲロスが出てくる理由がよくわからない....


「リース様に会いたかったので出てきただけですね」


「あぁ....あなた割とストーカー気質だったんだっけ....」


 前言撤回。わかりたくなかったけどアンゲロスが私の前に出てきた理由がわかってしまった。まぁ、ストーカー気質なのはアンゲロスだけじゃなくて私の配下全員が同じような感じだったので今更みたいな感じかもしれないがそれでもアンゲロスはその中でも特にひどかったのだ......


「ストーカーとは心外ですね。私は四六時中リース様と居たいだけですよ!」


「それを世間一般ではストーカーというのよ....特にそれを行動に移しているあなたはね!!」


 取り合えずアンゲロスからの報告で確実に私はまた面倒なことに巻き込まれることだろう....

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