15話 アーゼとペイン
「リースちゃん。Aランクおめでとう!!」
「ありがとうございます.....」
全くならなくていいと思うAランクになってしまうことが決まると、アーゼさんがすぐに私の近くまで走ってきた。アーゼさんは真っ直ぐな瞳で私のことを褒めてくれているのだが私にとって今回とランクアップは不本意そのものだ。
そもそもアーゼさんのせいで今回のランクアップの話になってしまったのでこれはアーゼさんを恨んでも許されるんじゃないか?と、思わずそう思ってしまった。
「そういえば前に無詠唱が失われた技術っていいってましたけどペインさんが普通に使っていましたよね?そこら辺の説明お願いできますか?」
「はい.....」
アーゼさんの話によるとペインさんとアーゼさんは元々同じパーティーだったのだが、ペインさんが隻眼になってしまいそのまま冒険者をやめたのが原因らしい。さっきの私との戦いのようにまだまだ戦えるのにやめたのが許せなくてアーゼさんはペインさんに個人的な私恨を抱えているとのことだ。
そこまでは納得できたのだが、次からの言葉には驚いてしまった。
「後、リースちゃんを少しからかいたかったし?」
「はッ?」
思わず自分でもビビるほどにドス黒い声を出してしまった。当然だろう。なにせアーゼさんは私をからかいたいがためだけに嘘を教えてきたのだ。
今世の魔法に関して知らないのは完全に私の非である。なにせ
一応お姉様から少し話を聞いていたため基本属性と希少属性の種類に関しては知っていたのだが後はわかっていない。
「というかペインさん、なにげに雷魔法使ってましたよね?!」
「まぁな、俺が使えるのは火と風、そして希少属性の雷だ」
前にも話したかもしれないが基本属性は火、水、風、土の四大元素になっている。そこに希少属性である氷魔法や嵐魔法(正式には暴風魔法)、雷魔法など基本属性の派生であるという風になっている。そして希少属性はその使い手が少ないためかなり重宝されているのが現状だ。
そのため希少属性の1つである雷魔法を使えるペインさんがたかが隻眼になっただけで、しかもこんなに戦えるのに冒険者を辞める理由は見当たらない。むしろこんなに戦えるなら他のパーティーから沢山勧誘が来るのが当たり前ではないのか?そういった疑問を直球にペインさんにぶつけることにした。
「確かに俺には沢山の勧誘が来た。Sランク冒険者を仲間に加えれる可能性があったからな」
「忌々しいことにこいつ冒険者の中でも人気があったかは大量に勧誘が来たのよ」
アーゼさんも認めるくらいの人格者ならばなおさら冒険者を辞めた意味がわからない。そして沢山の冒険者からの勧誘もきており、そこにはアーゼさん以外のSランク冒険者からの勧誘もあったそうだ。
それじゃあなぜ断ったのか?それが本当に気になる。
「断った理由はあれさ。元から俺にはギルドマスターにならないか?という提案が本部から来てたんだよ」
ペインさんが沢山の勧誘を断った理由、それは本当に簡単なものだった。元々引退を決める替えから冒険者ギルドの本部から
と言う事は....?
「これってアーゼさんの早とちりなんじゃない?結局ペインさんが冒険者を辞めたのに明確な理由があったわけだし」
そういう結論に思い至った。私の出したこの結論は当たっていると思う。何故ならばアーゼさんは詳しいことを色々私に教えてくれなかったからである。まぁ、教えなかったというよりかは教える事が出来なかったというのが正しい表現かもしれない。
実際アーゼさんは物凄く驚いたような表情を浮かべていたので、これはあっている。まぁ悪いのはアーゼさんだけではなくギルドマスター云々の話を伝えていなかったペインさんも悪いところはあると思うが....
「あぁ....うん...そうだね....」
「俺も悪かったな...ギルドマスター云々の話をしなくて...」
どうやら誤解は解けたようだ。アーゼさんは勘違いしていたことが恥ずかしいらしく羞恥心に染まっていたし、ペインさんも誤解が解けて嬉しそうな顔をしていた。
しかしなぜ私がペインさんに向けてアーゼさんが恥ずかしそうにしている様子を見てもやもやしないといけないのだろう?そもそもこのドス黒い負の感情は一体何なのか.....?疑問は尽きないが、一先ずはアーゼさんとペインさんの間に合った誤解が解けたことを喜ぶとしよう。
「あ、それはそうとして....何故お前は古代魔法を使えるんだ?」
「あっ....」
めっちゃくちゃ早いけど前言撤回。まだ私は2人の誤解が解けたことを喜べる状況ではないようだ...
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