10話 魔族の現状
『お、教えるから命だけは奪わないでくれ!!』
『御託を並べるのはあとでいいから、さっさと教えて頂戴』
キルは色々と言葉を並べて、時間を引き延ばそうとしている。
辺りには魔法阻害結界を私が張ったので魔族との連絡はできないはずだし、キルの努力は無意味身と言っても過言ではない。
『魔王様の名前はディアロス、歴代最強の魔王様だよ!!』
『そう.....』
ディアロスと言う名前は聞いたことがないので2万年の間に生まれた新参の魔族だろう。
だとしたら私の配下だったあの子たちは何をしているの?
『アンゲロスは何をしているのかしら?』
『アンゲロス.....あの逆賊だと?!貴様何故その名を知っている!!』
『逆賊?アンゲロスが?』
アンゲロスは魔王としての私の側近で一番、私に従順で懐いてくれた天魔の子だ。
天魔とは魔族と神の使者である天使のハーフであり私が名付けた異端な種族の事だ。
アンゲロスと言う名前を付けたのはもちろん私、ネーミングセンスがないのは許してもらおう。
『あの逆賊は愚かにも最強と称され、前魔王の暴力的支配から勇者と共に救ってくださったディアロス様に歯向かったのだ』
『暴力的支配?勇者と共に?』
その言葉で私は全てを察する事が出来た。
おそらくそのディアロスと言う魔族もクソ女神の手の内の者と推測できる。
それを踏まえたうえで私はなんとなく全貌がつかめてきた。
『そうだ、ディアロス様は前魔王の支配から脱却すると歯向かうと同時に勇者や創造の女神と手を組み、人間と魔族を繋いだ偉大なお方なんだよ!!』
『人間と魔族を繋いだという割には私の事を下等な人間やら下等な生物って罵ってくれたわよね?』
『それは.....』
おそらく今の魔族はクソ女神によってつくられた傀儡の魔王が人間と魔族を繋いだと信じているのだろう。
それにあのクソ女神が創造神と言うのも信じられない。
あのクソ女神は名前のない小さい存在の神だったはずだ。
信仰されている国だって私が召喚された国だけ、そんな最底辺の神が創造神になれるなんて思わないし、思えない。
『チッ、考えるだけでも怒りがこみあげてくる、恐らく本当の創造神を殺して自分がその地位に着いて、それを確実にするために傀儡の魔王を創ったってところかな?』
『何を言っているんだ!!』
キルに聞かれないように神話語で私はそう呟く。
本当に怒りがこみあげてくる。
あのクソ女神は今では本当に女神かどうか疑ってしまうほどには性格が終わっていた。
とまぁ、クソ女神の愚痴を言うのはここまでにしよう。
『何でもないし、あなたが知る必要は微塵もない話よ、魔王の元も戻って伝えなさい、もし人間に手を出したら滅ぶのは魔族よ、とね』
『ヒィィィ、分かった、伝える!』
キルに伝言を渡したので、私はその反応に満足してクソ女神に対する考察を開始する。
今手に入れている情報だけでわかる、考えられることは
1、クソ女神は創造神を名乗っており、それが認められている
2、今の魔王はクソ女神の傀儡であり、そのせいで魔族の弱体化がされている
3、クソ女神のせいで私は、魔王リースは最低の魔王へと変えられている。
2に関しては私の考察だが、恐らくクソ女神の傀儡であっているだろう。
そして、人間側が弱体化しているのにもクソ女神が一枚かんでいると考えられる。
というかあのクソ女神自分を信仰している人間以外は滅べとか言ってたので確実に魔法や剣技が弱体化したのはクソ女神のせいであっているだろう。
「となると、ユージリアだけじゃなくて聖国も帝国も衰退してるだろうな.......」
ユージリアとはこの国の名前で、大陸で二番目に大きい国の事だ。
聖国は聖国ナピスタ、私が聖女としていた国だ。
そして帝国はアフトクラと言う国であり、この大陸で一番大きい国家である。
この国では私は大賢者とされていた。
「そして別大陸にある魔族領もクソ女神の支配下ってことは別大陸もクソ女神の影響を受けてると考えてよさそうね......」
周りから魔物の声が聞こえるが、そんなのは私が出している魔力によって近づけず、近づいたとしても肉塊になるので、私は思考に集中する事が出来た。
魔族領はこの大陸とは別の大陸にありるため、そもそも魔族がここに居ること自体がおかしいのだ。
私も一応はこの大陸に魔族を数体派遣したがそれは情報収集の為であり、決してこのような災害を起こすことはしていなかった。
「魔法の衰退、魔族の弱体化、クソ女神が創造神、ここまでがクソ女神の計画の範囲だったのか.....?」
クソ女神はいつも自分の信者を増やすのに必死だった。
私を召喚した時の魔王だって、今の魔王と同じく傀儡の魔王で、そのあとも自分の信者を暴走させてその真実を隠したままそれを止めたりなど色々と画策をしている。
それに一回目の私を殺したのもクソ女神だ。
後に知ったことなのだが私を殺したクソ女神は私の事を『闇に魅せられた魔勇者』として自分がそれを危機になる前に撃退した、と宣伝を行っていたらしい。
勿論私が魔勇者なわけがなく、死ぬような努力を重ねて、仲間から何人かの犠牲を出してちゃんと魔王は倒している。
闇に魅せられた記憶なんてないし、ちゃんと勇者として魔王を倒していた。
「考察はこれくらいにして、アーゼさん起きてください、起きてください!!」
考察をそこそこ進んだところで一回辞め、手刀で気絶させて放置していたアーゼさんに意識を向けた。
アーゼさんは何回私が声をかけても、起きる気配がないのでお姫様抱っこの形になるが私が森の外まで運ぶことにした。
クソ女神、私に余計なことはしないでほしい......
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