4話 衰退した魔法

「今のを防げるなんて流石ね」


「あれ?なんか私の事買い被りすぎじゃないですか?」


「買い被りすぎじゃないわ!!」


 アーゼさんは私とそんな会話をしながらも容赦ない攻撃を連続で放ってくる。

 いや、何で会話しながらこんな攻撃放てるの?え、なに、アーゼさんって『並列思考タフトクロノ・スケプシ』に似たスキルでも持ってるの?

 思わずそう思ってしまうほどにはすごいことをアーゼさんは凄いことを素でやっていた。


「魔法剣:『火炎剣フローガ・クシフォス』!!」


「ッ.......魔法剣:『灼熱剣カーフシ・クシフォス』!!」


 『火炎剣フローガ・クシフォス』を纏ったアーゼさんの剣に私は大人げなくその完全上位互換である『灼熱剣カーフシ・クシフォス』をぶつける。

 流石に最上位の魔法効果を付与させている日本刀は中級下位の魔法剣では壊すことはできなかったがそれでも、そこそこのダメージを与える事が出来た。


「古に使い手を失った魔法剣?!」


「え......?」


 私は炎系統中級下位の魔法剣を出したつもりなのだが、アーゼさんから聞こえた言葉は『古に使い手を失った魔法剣』との言葉だ。

 魔王リースとして生きていた時代から今は約2万年が経っていたので魔法が衰退している可能性は多少は考えていたが、そうではなく強くなっていると私は考えていたが、現実は違く、魔法は衰退していたらしく、『灼熱剣カーフシ・クシフォス』が失われた魔法剣になっていた。


「な、何で失われたはずの魔法剣を使えるの!!」


「え、何でっていわれても.....」


 正直に答えるなら『実は転生していてその時に覚えたんですよ』というのが正しいだろう。

 しかしそんな話を信じてくれるか?答えは否に決まっている。

 そんな突拍子のない話をいきなり話されて信じてくれる人間なんていない、ではどう言い訳をすればいいのか?

 それが思いつかなかった。


「........話せないのね?」


 その言葉に私は静かに頷いた。

 話せないもあるが、話したくないという理由の方が私にとっては大きい。


「そう、けどいつかは話してもらうからね?」


 とびっきりの威圧を込めて言われたその言葉に私は頷くしかなかった。

 本当に怖かった.....


「それじゃあ、私の個人的な用事も終わったし戻りましょ」


「わ、わかりました....」


 威圧を辞めて笑顔になったアーゼさんだが私はその笑顔も怖く見えてしまった。

 威圧って本当に怖い.....

 とまぁ、そんなことを考えながらも私はアーゼさんについて行って冒険者ギルドの中に戻って行った。






「あっ、アーゼさんどうでした?」


 冒険者ギルドの中に戻るとカイナさんがすぐに声をかけてくれた。

 それを皮切りに周りの冒険者も次々に私とアーゼさんに視線を向ける。


「リースちゃんは合格よ、それも私に全く引けを取らないくらいの実力だからCランクにね」


「し、Cランクですか?!」


 アーゼさんのその言葉に周りの冒険者が沸き上がり、驚愕の声や嫉妬の声など色々な声が大声で聞こえてくる。

 その声に私は少し驚いてしまうが、アーゼさんがそれを一喝して収めてくれた。


「それじゃあカイナちゃん、リースちゃんにCランクのギルドカード作ってくれる?」


「す、少し待っていてください」


 急かされたカイナさんは少し急ぎ目に奥に戻って行った。

 それにしてもCランク冒険者のギルドカード......やっと、やっとギルドカードが手に入る.....

 ずっとずっと夢見ていた憧れのギルドーカードが手に入るんだ!!

 私はギルドカードが手に入る事に浮かれていた。

 本当に嬉しかった、勇者と言われるよりも、聖女として崇められるよりも、大賢者として敬られるよりも、魔王として敬愛されるよりも、何よりも嬉しかった。

 


「リースちゃんそんなにギルドカードもらえるのが嬉しいのね?」


「勿論です!!昔からずっとギルドカードが欲しかったんですよ!!」


 勇者という称号よりも、狂信者よりも、貴族の地位よりも、魔王の名声よりも何よりも欲しかったギルドカード、それが手に入るのだ、浮かれるしかないだろう。

 そんな私をアーゼさんは微笑ましそうに見ていたが、私はそれに気づく事は無く1人妄想を続けていた。

  私が冒険者になって魔物を討伐する姿、犯罪者を捕まえる姿、そんな色々な姿を『並列思考タフトクロノ・スケプシ』で同時に考える。


「リースさん、ギルドカード出来ましたよ」


「ほんとですか!!」


 そんな私はカイナさんの言葉で現実に引き戻される。

 『並列思考タフトクロノ・スケプシ』の思考数を増やし、そのうちの1つで私はギルドカードを見た。

 魔石という魔物からとれる素材をベースに金で彩られているプレートは知識で見たことのあるギルドカードそのものだった。


「やったぁ!!」


 嬉しくなった私はカウンターに置かれたギルドカードをすぐに取り、恍惚とした表情でそれを眺めた。


「リ、リースちゃん?」


 アーゼさんがそんな私を見て心配そうに声をかけてきたが今の私にはそんな声は聞こえなかった。

 何回も何回もギルドカードを私は見直し、嬉しそうに笑顔を浮かべるなるなど完全に情緒不安定になっていた。

 これで私も憧れの冒険者、これからもっと頑張るぞ!!

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