3話 実技試験

 アーゼさんについていくとそこはちょっとしたバトルフィールドになっていた。

 真ん中にアーゼさんが付くと、アーゼさんはいきなり私に向けて剣を抜き....


「リースちゃん、実技試験の内容だけど、私と戦ってもらうわ」


「アーゼさんとですか?」


 そんなことを言ってきた。

 

「ええ、私と戦ってその結果で合格か不合格か決めてあげるわ」


「わかりました、お願いします」


 そういうアーゼさんの目は本気だったので私も『魂の収納プシュケー・ヴァーゾ』から魔王の時に使っていた神妖刀:現世うつしよを取り出し構える。

 私の現世を見たアーゼさんは驚いていたが、すぐに元に戻り私への警戒を強めた顔をしている。


「それじゃあ行くわね?『瞬歩』」


「『動体視力強化ヴレポ・ブースト』」


 『瞬歩』を使ったアーゼさんは普通なら見えない、反応できないような速度で私に斬りかかる。

 しかし私には瞬歩も無意味だった。

 変に思われないように『動体視力強化ヴレポ・ブースト』を使ったが実際は使わないでもアーゼさんの動きが見えて、反応できる。


「?!リースちゃん、貴女って一体?」


「私は唯の平民ですよ?」


 そう、唯の元勇者で聖女で大賢者で魔王なだけな人物ですよ........

 アーゼさんは今の一撃を私が反応できないと思っていたのかものすごく驚いている。

 私はアーゼさんの質問に本当の事は言えないし、言いたくないがそれでも嘘をついている罪悪感が少しだけ出てきていた。


「.........そう、まだまだ行くわよ?『神速』」


「『走力強化トレホ・ブースト』!!」


 瞬歩よりも早く、物理法則の限界である光速でアーゼさんは私に向かってきたが私はだいぶ抑えた『走力強化トレホ・ブースト』と『動体視力強化ヴレポ・ブースト』で見えている。

 見えている私にはステータス∞の力で当たらず、当たってもダメージを喰らう事は無かった。


「『身体能力向上』、三ノ太刀『冥界』」


「『身体能力強化ズィナミ・ブースト』」


 アーゼさんはスキルの『身体能力向上』に対して私は魔法の『身体能力強化ズィナミ・ブースト』で対抗をする。

 大分抑えているとはいえこんなにも長く戦いが出来た例は今まで一回もなかったので私は嬉しくなり、思わず嬉しくなり、笑みをこぼす。


「そんなに楽しいのかしら?」


「すっごい楽しいですよ!!」


 余裕がないような表情にも関わらずアーゼさんは私に声をかけるのを続けている。

 さすがプロだな.....

 思わずそう思うがそれでも私は攻撃の手を一切緩めていない。


「それはよかったわね!一ノ太刀『霊界』」


「『霊魔斬プネウマ・スコトノ』!!」


 一ノ太刀『霊界』に対抗するように私は魔法剣である『霊魔斬プネウマ・スコトノ』を出して、現世幽世に纏わせる。

 そして一ノ太刀『霊界』と『霊魔斬プネウマ・スコトノ』が触れあった瞬間周りの土が浮かび上がったりと超常現象が起きた。


「ふぅ....『神速』」


「ッとと、これは流石にやりすぎたかな?」


 流石にやりすぎたと思った私はすぐに一歩後ろに下がり、アーゼさんもそれを理解していたため私に合わせて後退をしてくれた。


「リースちゃんには何かがあるみたいだけどそれは私が踏み入る事じゃないわね」


「え?」


「合格よリースちゃん、Sランクの私とほぼ同じ強さを持っているしね、あなたは今日からCランクの冒険者よ」


「や、やったぁ!!」


 Sランクに勝てたからSランクになれると思っていた私だがざっと調べたところAランク以上は実力だけではなく、実績も必要なので私は今慣れる一番上のランクになれたということだ。


「え、ホントですよね?私騙されてませんよね?」


「ええ、ホントよ?私が嘘つくメリットある?」


「それもそうですね!!」


 嬉しい。

 夢の冒険者に、しかも最初になれるランクで一番上になれたのだ、そんなの嬉しいに決まっている。


「それじゃあ、ここからは........私の個人的な時間に付き合ってくれるかしら?」


「ッ........わかりました」


 正直私でも今のアーゼさんから出ている覇気?オーラは怖いと思ってしまう。

 それくらいにアーゼさんはすごいんだと思う。


「....『神速』、四ノ太刀『神界』」


「?!『霊魔斬プネウマ・スコトノ』」


 少し目を離した瞬間にアーゼさんはすでに私の目の前まで移動をしていた。

 すぐそのことに気づけた私は『霊魔斬プネウマ・スコトノ』ですぐに対応が出来たが、(ダメージはくらわないが)油断していたら攻撃を受けていたと思う。

 それくらいにアーゼさんは重くて、素早い一撃を放ってきた。

 さぁSランク冒険者、絶対に勝つぞ!!

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