2話 冒険者ギルド

「ほわぁ....大きい....」


自動地図チャーティス』と『自動操縦アフトマト』で冒険者ギルドまで来た私は予想以上の大きさに思わずそんな声を出してしまった。

 本当に予想以上に大きく、驚いて呆然としている。


「冒険者ギルドってこんなに大きいんだ.....っていけないけない、今から入るんだからね」


 暫く呆然としていたが目的を思い出した私は、我に返り入り口のドアに手を当てる。

 開けようとしたときに、私の心臓の鼓動が物凄く伝わってきた。

 クソ女神に転移させられてからずっとなりたかった夢の冒険者になれることが嬉しい。

 そのことが心臓の鼓動と共に私に沢山伝わる。


「よし、頑張ろう!!」


 幸せを嚙み締めた私は心を決め勢いよくドアを開ける。

 その中は市場と同じでとても活気にあふれていた。

 酒場と同接しているからかお酒を昼間から飲んでいる人や、掲示板に乗っている依頼を取り合っている人など、色々な人が色々な事をしている。

 どんな料理があるのか、どんな依頼があるのか、私の興味は尽きないが一先ずそれを我慢して受付と思われし場所に一直線に進む。


「すっごい行列......緊張するな....」


「お嬢さん、冒険者ギルドに始めてきたのかしら?」


 私の前にも何十人もいたのでそれまでに緊張を抑えようと頑張っている。

 そしてそんな私の独り言に反応して私の前に並んでいた冒険者さんが振り向いてきた。

 その人はとても美人で、とてもいい人そうだ。


「はい、冒険者ギルドに来るのは今日が初めてなんですよね.....」


「可愛い新入りちゃんね?荷物を持ってないってことは今日初めて冒険者登録をするのかな?」


 お姉さんは観察眼が鋭いらしく私がどんな状況にいるのかをすぐに理解して言い当てた。

 

「はい、成人が終わったんですぐに来たんですよね」


「なるほど...って、え?終わってすぐに来たんだよね?」


「そうですけど?」


 お姉さんに私が成人が終わってすぐに来たということを伝えると何故か驚かれた。

 何か私がおかしいことでも言ったのかな?


「私何かおかしいこと言いましたか?」


「あ、うん少し取り乱しちゃったわね近くから来たのかしら?」


「いいえ、少し離れた場所から来ました!」


 私がそう言うとお姉さんは再び固まってしまった。

 何でだろうと『並行思考タフトクロノ・スケプシ』で考えると、その答えはすぐにわかった。

 成人には『成人の儀式』という儀式を行い今の時間はまだやっている場所もある時間だ、私はそれを終わってからすぐに『走力強化トレホ・ブースト』を使い、光速をも越えてきたので本来ならこれない時間に冒険者ギルドに来てる。

 お姉さんはそれを理解しているために、私がここに居る意味が分かっていない....んだと思う。


「ふぅ....まぁきっと何かがあるのね?私も深くは詮索しないわ」


「あ、ありがとうございます!」


 お姉さんは私に何かあると理解したみたいで、それを深く詮索しないでくれた。

 取り合えずお姉さんの反応からやっぱり私のステータスと『走力強化トレホ・ブースト』は異常なのだろう。

 もしステータスを鑑定するときはそこは偽装すると決めた。


「お姉さん前、空きましたよ?」


「あらありがとうね」


 私が前を向くとちょうどお姉さんの前の人の用事が終わっていたので私はそのことをお姉さんに伝えた。

 お姉さんは私に軽く微笑むと、受付のお姉さんと話し始め、何かを取り出した。

 万物鑑定LV.∞で鑑定をすれば何を出しているのかわかる。

 しかし先ほどのお姉さんとの会話で私のスキルを何かに使えばすぐに大騒ぎになる目立つと思ったので鑑定するのをやめる。

 そんなことを考えていると....


「次の方どうぞ」


 どうやらお姉さんの用事が終わったらしくお姉さんはいなくなり、私の番になる。


「冒険者ギルドにようこそ!受け付けのカイナと申します!ご用件は冒険者登録でいいですか?」


「はい!お願いします」


「あれ?私が用件知ってるのに疑問浮かばないんですか?」


「さっきあのお姉さんとそこそこ大きい声で話していたのでそれで聞こえたんじゃないんですか?」


 あれ?私なんか変なこと言ったのかな?

 え、でも初めて会った冒険者に興奮してたし、声おっきかったよね?


「ま、まぁそれでは登録を行いますね!文字の読み書きは出来ますか?出来ない方には代筆も致しますが」


「出来るので大丈夫ですよ」


 私は前々世は大賢者だったから古代語や神話語も含めてこの世に現存するすべての文字を書く事が出来る。


「でしたら、こちらの書類にご記入をお願いします」


「わかりました!」


 出された書類に私は特に迷う事は無く、スラスラと文字を記入する。

 カイナさんが少し驚いた視線で見ていたけどなんでだろ?


「終わりましたよ!」


 そういいながら私は書類をカイナさんの前に持っていく。

 持って行ってから少し固まってたけど、本当になんで驚いてるだろ?


「え、あ、はい、確認しました、とても綺麗な字ですね!」


 動き出しても少し驚いた表情を浮かべていたがすぐに作業に戻れるのってプロだと思う。

 それに綺麗って褒められると少し照れちゃう.....


「字が書けるといっても、かなり汚い字の方もいらっしゃいますからね綺麗な字を書ける方はギルドでも募集しているんですよ」


 カイナさんのその言葉で私はカイナさんが驚いて固まった理由が分かった気がする。

 確かに私の字は掲示板に張っている物に比べたら綺麗な字だったのでそこで驚いたのだろう。


「そうなんですね....まぁ私は冒険者になりたいので冒険者でお願いします!!」


 遠まわしで私に冒険者ギルドの職員にならないかと聞いたのだと思うが私は冒険者を目指している、だったら冒険者になるしかない!!


「今の意味理解できるのね....まぁ引退したり気が変わったらいつでも教えて頂戴ね?」


 あ、そっか冒険者ギルドの職員って引退した時の再就職先でもあるのかな?

 怪我とかで引退する人もいるみたいだしそれもありかな.....


「それでは次に実技試験をやってもらいます」


「実技試験ですか?」

 

 実技って何をするんだろう?

 そんなことを私が考えていると....


「実際に冒険者と戦って実力を確かめるのよ」


 私の後ろから先ほどのお姉さんの、そんな声が聞こえてきた。


 お姉さんの格好をよく見るとローブに杖と日本刀(っぽい物)という不思議な装備をしている。

 おそらく杖と日本刀っぽい物を持っていることから魔法剣士と言われるものなのだろう。

 そして装備一つ一つに最上位の魔法効果が付けられていることからこのお姉さんは間違いなく強いと思う。


「ねぇカイナちゃん、この子の実技試験私が引き受けてもいいかしら?」


「「「えぇ?!」」」


 お姉さんがそう言うとカイナさんだけではなく、周りにいた冒険者もお姉さんのその言葉に驚愕の声を上げる。


「おだ、大丈夫ですけどアーゼさんってSランク冒険者ですよね?!」


 お姉さんがSランク?!そりゃあ強そうな装備も雰囲気も出せるわけだ....

 因みに冒険者にはランクがありSランクは上から4番目に凄いランクだ。

 冒険者のランクは下から、Gランク、Fランク、Eランク、Dランク、Cランク、Bランク、Aランク、Sランク、SSランク、Zランク、Xランクとなっている。

 しかしSより上はいないため今はSランクが実質的な一番上のランクとなっている。


「ふふ、私がこの子を気に入ったからっていう理由だとダメかしら?」


「.....アーゼさんがそういうなら仕方ありませんね....」


 カイナさんは少し考えこんだが、最終的にはアーゼさんが私の試験をしてくれるらしい。


「リースさん、貴女の試験はギルド職員ではなくそちらのSランク冒険者アーゼさんが担当にすることになります、本当に突然で申し訳ありません....」


「いえいえ、大丈夫ですよ!!」

 

 私も現役の冒険者に教えてもらう方が成長できると思うため、アーゼさんの提案は私にとってとても嬉しい物だった。

 よし、頑張って合格するぞ!! 

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