冒険者:リース編
1話 アルケーの町
私ことリースがこの世界に来てから16年が経った。
この世界では七瀬楓の世界とは違い、16歳で成人判定になっている。
そして私はこの世界での名前は『リース・メテンソマ』となった。
貴族の家、メテンソマ公爵家の次女である私は本来なら冒険者になるということはできないのだが、お姉様、リーナの存在がある為特別に冒険者になることが許された。
お姉様は魔法の天才と呼ばれており、基本属性の火、水、風、土に加え希少属性の嵐、氷なども使えることからお父様もお母様もお姉様に期待している。
そして私だが、偽装LV.∞で何の属性も使えないと偽装をしている。
この国の魔法程度で私の偽装が見抜けるはずがなく私の目論見通り無能や失敗作扱いをされ、いらないモノ扱いをされている。
そのことも冒険者になるのを許可された要因になっていた。
「それではお父様、お母様、お姉様行ってまいります」
「リース.....心配ならお姉ちゃんを頼るんだよ?お姉ちゃんはいつでもリースの味方なんだからね?」
「そうね、リーナちゃんの通りお母さんもリースちゃんの味方だからね?」
「ガハハハッ、俺たちはいつでもお前の味方だからな?」
無能や失敗作扱いを周りからされていてもお父様、お母様、お姉様は私のことを守って愛してくれていた。
私はそれが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
そのことに初めて気づいた日は泣いてしまった、それくらいにその事実は私にとって嬉しい物なのだ。
勇者の時はこんなことになれば確実にクソ女神に捨てられている。
聖女の時は教会の評判が落ちると無実の罪で追放されているだろう。
大賢者の時はそんな事は無いが、逆に愛してくれる人もいなかった。
それは魔王も同じで愛よりも崇拝や尊敬の方が多かったような気がする。
「.....はい!頑張ってきます!」
必死に泣きそうなのを堪えて私は笑顔で大好きな家族に別れを告げる。
私が後ろを向くと、すぐに泣きだしてしまった。
そのせいで家族が何かを言っていた気がするが聞き取れなかった。
必死に家族に泣いている姿が見られぬように私は走る速度を上げた、家族から見れないところに着いた頃には音速をゆうに越えていた。
「ふぅ....一番近い町に普通で走って一か月だから私だと1日もかからないかな?」
屋敷の近くにも街はあるのだが私はそこの人に顔が割れているのであまりそこで冒険者にはなりたくない。
そのため私は、『俊敏 ∞』というステータスをフル活用して遠くの町に行く事にした。
勿論理由はそれ以外にもある。
魔法創作LV.∞で創った『
その為にもいろいろな町に言っておきたいので出来るだけ遠くに行く事に私は決めたのだ。
「
私は『
本当に魔法創作LV.∞は便利だ。
そんなことを考えながら進んでいると、気づけば私の目的地『アルケーの町』の門の前へとついてた。
「おいお前!身分証を見せろ、この犯罪者が!」
魔法創作LV.∞で創った『
今の私は光速で走っていた時の泥が多少ついているのだがそれだけで犯罪者扱いとは解せぬ。
「はいはい、見せればいいんでしょ?」
お父様には貴族の身分証を持って行けと言われたがそんなことをしたくなかった私はお父様とお母様に頼み込んで平民用の身分証を作ってもらっていた。
名前はリース、家名だけを無くしたものを私は持っている。
「いきなり犯罪者扱いとかはないんじゃないんですか?」
少し衛兵の態度にイラついた私はそう言うが.....
「そんな紛らわしい格好をしてるてめぇが悪いんだよ!」
そういわれ身分証を偶々あった泥に投げつけられた。
「はは、平民風情は泥がお似合いなんだよ!!」
クソみたいな衛兵の態度にイラついた私は魔法を発動しそうになったが理性で何とかそれを耐えた。
何もできないと勘違いした衛兵はずっと笑っているが私は魔法の一つである『念力』を発動して泥の中から身分証を取り出し、『
それを見た衛兵は驚いた表情をしていた、本当ににざまぁだ。
「それでは私はここで失礼しますね」
衛兵の驚いた表情を心で笑いながら感情には出さず、無表情で門を通り抜ける。
私が門を通り抜けても唖然とした表情を浮かべている衛兵は本当に笑いそうになっちゃった。
「それにしても犯罪者ねぇ.....」
今の私の格好は先ほども言った通り泥が多少ついている+私手作りの服だ。
平民に見られるのはいいのだが、犯罪者は本当に解せぬ。
そんなことを考えているうちに市場らしき場所についていた。
この市場はとても活気があり、何よりも美味しそうな食べ物が沢山あった。
それにつられた私はお父様とお母様に貰った少量のお金を使って、ご飯を食べることにした。
「あ、これください!!」
「あいよ、お嬢ちゃん見ない顔だね、他の町から来たのかい?」
何から何まで美味しそうに見えたが私はその中でも特においしそうだったパン屋さんに向かった。
中に入ると美味しそうで、とてもいい香りに私の食欲は増幅してすぐにでもパンを食べたくなる。
その食欲を何とか我慢して私はパンを取り合えず一つ注文した。
「はい、ここから遠く離れた町から来たんですよね」
「へー、そいつは大変だったろ?」
私はあえて町の名前は言わないことにする。
ここから屋敷の近くにある町、『グラスペタの街』に着くには一か月以上かかり私みたいな少女が一人で、しかも歩いてきたとなると相当怪しがられるのが理由だ。
「ええ、大変でしたけど苦労したかいがありましたよ、この町は本当に活気あふれて楽しそうでしたからね」
「ああ、それがこの町のいいところだしな!!」
活気があふれていた楽しそうと言うのは私の本音だった。
パン屋のおじさんもそんな私を見て豪快に笑って、おまけをつけてくれた。
「え?このパン頼んでませんけどいいんですか?」
「いいんだいいんだ、俺からのおまけと思ってくれ、この町に来てくれてありがとうな」
「ありがとうございます!!」
おじさんはそう言うとまた豪快に笑った。
本当にいい人だ。
そう思いながら私はおじさんにお礼をする。
「また来てくれよな?」
「勿論です!!」
今までこんな人とは接したことが無いから私は嬉しくなり、このパン屋さんを凄く気に入った。
勿論気に入った理由はほかにもあり、このパンが本当に美味しいかったからだ。
お店から出てすぐに私はパンを一口食べてみたのだが、今まで食べたどのパンよりもものすごく美味しかった。
本当に美味しい。
そう思っているといつの間にか全部を食べ終えていた。
「また絶対に来ますか!!」
そう決めた私は魔法の一つである『
さぁ、この町で私の平凡な冒険者生活の第一歩が始まるんだ!!!
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