第6話 追跡

ちょうど女刑事から電話が入る。

「今、どこ?」

「地下からバンで搬出。千葉556い32・・だが逮捕するなよ・・」

「当たり前だ!」

「車の持ち主は誰だ?」

「チョット待て!署で調べてる」

20分走り続けている。

「車の所有者分かった。千葉市寒川町の弥井田純加病院よ」

「お〜サンキュー」

「一助!千葉市寒川町の弥井田純加病院だ!あとはナビで行けるな!」

「おう、今その車がその病院の地下へ入るとこだ」

「美紗!聞こえたろ!その病院の情報、集めろ!」

「うっせーな!もうやってる。出たら端末に送るから。待ってろ!じじい!」

「おう、急げ!金森刑事が危ない」

数馬と一助は外来が終了後なので夜間入口から入り地下へ向かう。

「一心!ストレッチャーは地下にはいない。エレベーターは2台とも一階にある」

「数馬!地下入口右手奥にもう一台エレベータあるぞ」美紗の声だ。

「こっちも一階だ。何処行ったんだ?GPSは?」

「玄関横10メートルを示してる」

「はあっ!美紗!そこ慰安室!」

「中入れっ!」

無線機からガチャガチャ音がした後、

「真っ暗!誰も居ないし、ストレッチャーもない!」

「数馬、現在位置からもっと左だ」

「美紗!ばか言うな壁際にいるんだ!」

「なら、階が違うんだ。各階のお前の今の位置を探れ!」

「一助!数馬と手分けして上の階を調べろ!」

20分が経過し飯田警部も着いて、一心と静が合流する。

警部は警備室に手帳を見せて院長に面会を求める。

エレベーターで10階に上がり、左周りで廊下を進むと、右手に茶色の装飾のある玄関が院長自宅と説明を受けた。

そうしている間に全ての階を探したが、金森刑事は見つからないと数馬から無線が入る。

「数馬!10階を探れ!ほかの階は金森刑事のGPSと数馬のそれと重なったが、10階だけは重ならない!10階を探れ!」

刑事らも各階ごとに金森刑事を探している。

あっと言う間に2時間が過ぎようとしている。

「美紗!10階は手術室の壁の奥を金森刑事

のGPSが示しているんじゃないか?」

美紗からの返事が10分ほどない。

数馬が「美紗」と呼びかける。

「うっせ!変なシステムを二つ見つけた。一つはタッチレスカードのドア開閉システムだ。複数のドアが管理されている。・・・一心!今お前のカード複写機にそのコピーシステムをインストールしたから、院長のカード・・・恐らく手術室とか入るカードとかネームプレートとかコピーして数馬に壁に当てさせろ!どっかに隠しドアがある」

「一助!10階の天井裏に上がれ!隠し部屋がわかるかもしれない。もう一台隠しエレベーターが有るかも知れない・・・急げ!」

一心は院長自宅の玄関に白衣が掛かっていたのを思い出す。静を残して席を立って玄関に向かい、ネームプレートのコピーを試す。

程なくエラーにはならずコピーカードができた。数馬を呼んで渡す。

30分立って数馬が「10階何処も開かない!ダメだ」と悲痛な叫び。

「ばかやろっ!落ち着け、一助が天井裏でエレベーター探してるから、その場にいろ!」

「一助っ!どうだ?」

「うお〜、真っ暗・・え〜っと、俺どっちへ進めば良いんだ?」

低く響く声は何やら怪しげな雰囲気に一助が畏怖の念に襲われている、そう一心に思わせる。

「一助!ビビってんじゃねえ!」

美紗の甲高い張りのある声が雰囲気を一掃する。

「真っ直ぐ前に進め!そしたら右側に注意!」

緊張の時間がゆっくり進む。

「おう!あった、モーターだ!」

一助の弾む声が暗闇に一筋の光明を与える。

「数馬!地下に向かえ!エレベーターの入り口があるはずだ!」

美紗の激しい怒りが木霊する。

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