希死念慮者殺人事件

第4話 人身売買

飯田警部から一心に、希死念慮者大募集というサイトを調べてくれと調査依頼がきた。

理由を聞くと、警部が言うには、

7月にシンガポールで妊婦の水死体が岸壁に寄り添うように漂っていた。パスポートは所持せず、身元は不明。日本人のようだ。歳は若いせいぜい２０代前半。

8月に入り、警視庁にシンガポールから問い合わせがきた。顔写真や指紋、DNA、歯型、衣服、妊婦であることと身長、体重などから身元を確認して欲しい、と言う事であった。

警視庁で各種の照合を行った結果、家出人捜索願いの中に一致する者がいた。

飯田警部はその家を訪問するように指示された。

３年前の5月に届出がされていた。その記録に東京の水上野外科総合病院の名前があった。住所は小金井市なので地元の所轄と一緒に向かった。

訃報に沈み込む両親にお悔やみを言い、部屋を見せてもらうことに。１７歳という女子高生らしい可愛らしい部屋。当時のまま保存されていたらしい。

きっとその病院で人攫いにあったんだ。と悔しがる。

ただ、いなくなる半年くらい前に友達に自殺したいと言っていたらしい。

誰の話か分からなかったので、友達の名前を聞き出し、全員に話を聞いた。

仲良の友人３人ほどから、自殺したい話は聞けたが、彼女らは他にもそう言う子は何人もいて、本気じゃ無かったと皆思っていたようだ。ご両親にも心当たりは無かった。

それで、飯田警部は自殺サイトが共通の入り口になったのではと考え、ハッカーのいる一心にそれを調べるよう頼む事にしていた。

まもなく、シンガポールの警察が死亡した彼女の住まいを突き止め、同居するパスポートを所持しない２３名を逮捕し、保護していると警視庁に通知があった。警視庁で調査の結果、全員が家出人捜索願が出ていた。

そして、その全員が希死念慮者大募集というサイトで各所の病院で医者と会って身長体重などを測られ採血後、待っているうちに意識を失い気がついたらここにいたと証言しているという。

警視庁は捜査員を派遣し全容解明に乗り出したようだ。という事でそのサイトを調べる必要が出てきた訳だが、警察の調べは時間がかかるので、早く結果が知りたいので頼んできたということのようだ。

一心は美紗に調査を指示した。

数日後、美紗が飯田警部も含め関係者集めてと言ってきた。

翌日、飯田警部と西方刑事のほか小金井の刑事だというひとも集まった。

美紗は、サイトの流れを説明する。

先ず、そのサイトに入ると

「本サイトは、自殺を考えているあなたのためにあるサイトです・・遊び半分ならすぐ抜けてください」

と最初の画面に大きく書かれている。

次へ入る。

「自殺には色々なやり方ああります。・・

例えば、首吊り。でも、死後の自分の姿を思い浮かべて下さい。天井からでも首を吊ったとしましょう。死んだら自分では分かりませんが、酷い姿です。身体の穴という穴から色んなものが流れ出ます。鼻から鼻水。口からヨダレ。オシッコやうんちは垂れ放題。特にうんちには、胃、小腸、大腸に溜まっている中途半端に消化された吐瀉物のようなものや、大腸の微生物や血が混じった黒いドロッとしたものが混じって・・・それらが、あなたの足元に息もできないくらいの悪臭を伴ってどっさりです。

　薬物を飲んでも、意識を失ってからゲロ吐きです。胃のなかみ・・それを口から吐いて、大抵の場合、苦しくて転がり回るんです・・吐瀉物の上を、顔から、身体、手足、衣服・・吐きそうな匂いさせながら・・汚くて〜それにしっこやうんちです、警察なんかも、手じゃ触れなくて、足で遺体を転がすそうですよ。まあ、あと手首を切るとかも、もうここには書けないくらい汚い・・それでも、良かったら、どうぞ、どうぞこのサイトから抜けて自殺でも何でもお好きなように・・嫌なら、次へ進む！」

と書かれているので先へ進むを選ぶ。

「いらっしゃいませ！よくここまで・・・

では続きを、当サイトは無料であなたを綺麗にその生涯を閉じさせて頂きますが、ぶっちゃけ、殺人ということになります。ですので、自殺したいと思った動機やその事情、関係した人名のほか、一応血液型調べとか程度の健康診断をさせて頂くことと、身辺調査を行います。調査は、あなたが警察関係者でないことやあなたが死亡後、追跡調査をして手前どもを告発するような方がいらっしゃらない事を確認する為に行います。当方には専属の医師がおりまして、滅多にないのですが、白血病の方が当方の関係病院に入院され、あなたとの適合性が合致した場合に限り、骨髄移植をさせて頂くことがあることだけご了解下さい。あなたの命が誰かの命を救うことになる訳です。・・・

希死念慮者と言う言葉は自殺者と同じと考えてください。関係筋から逃れる一方です。

以上、よろしければ、次へ進む・・」

次へ進む。

「ようこそ・・かなり本気のあなた・・もう一度ゆっくり考える時間をあなたに差し上げます。

下欄にニックネームと電話番号を入れて・・一旦抜ける・・を選択し、サイトを抜けて下さい。

後日、気が変わらなければ、サイトに入る時、ニックネームと電話番号を入力すると、ここから先へ進むことが出来ます。」とある。

そして、ニックネームと電話番号を入力して一旦抜けて、再度そのキイでサイトに入ると

２日後、電話が来て、いつ、何処で？、と聞くと

２０２６年○月○日の○曜日に、東京の中野区沼袋駅裏の水上野外科総合病院の７階の第３家族休憩室に午後６時半に来てください・・いいですか？、となる訳です。

そこへ行くと、行方不明になるという仕掛けです。

以上、わかりましたか？

飯田警部は悔しそうに「やはりあの病院なんだよなあ」と呟く。