第3-01話 仮入部の魔術師
ロルモッド魔術学校にも生徒会というものはある。
生徒の自治性を育てるやら、魔術の素養を高めるやら、何やら色々と言い訳をつけられているが、そのメインの目的は学校の
「だからね。私たちは、放課後にこうして学校内を見回ってるってわけ」
「なるほど」
巨乳ということで(イグニの中では)有名なミル生徒会長と一緒にイグニは校内の見回りしていた。
ちなみにオレっ娘ことミコちゃん先輩はユーリと一緒に見回っている。
包帯でグルグル巻きのヴァリア先輩は、今日はいなかったので、もう帰ってしまったのかも知れない。
「でもどうして生徒が治安維持をするんですか?」
「んー。色々あるよ? 1つは先生たちが『研究』するための時間を確保するためかな」
「研究……」
イグニは呟く。
「うん。ロルモッド魔術学校は学校のほかに研究機関もあるからね! 先生たちはここで日夜研究を行っているんだよ」
「何の研究ですか?」
「それは先生によるかなぁ。イグニ君の担任って誰?」
「エレノア先生です」
「あの人は胞子魔術の研究の第一人者だよ。王国どころか、世界で見てもあの人くらいに使いこなしている人はいないんじゃないかな」
「凄い人なんですね」
「うん。まあね」
2人が歩いているのは旧校舎と呼ばれる今は使われていない方の校舎だ。
いや、今は使われていないからこそ『何か』に使われているかも知れない。
「ミル生徒会長」
「ミルちゃんで良いよ!」
「ミルちゃん生徒会長」
「何かな?」
イグニは1つ、気になったことを聞いた。
「この見回りって意味あるんです?」
「こんなに可愛い先輩と一緒に見て回れるんだから意味あるでしょ?」
「それはそうですけど。そうじゃなくて、この見回りで……何かこう……やってる生徒とか見つかることってあるんですか?」
イグニとしてはこの学校にいるのは生徒だけだし、大したことはできないと思っていたのだが。
「うん。あるよ」
ミルちゃん生徒会長はあっさり頷いた。
「……マジです?」
「この見回りってね、確かに生徒たちがやばいことをしてないかってのを見張るためでもあるんだけど。他には生徒たちがやらかしたときに助けに入るってのもあってね」
「助ける?」
「うん。先週あったのは……えっとね、生物研究部だったんだけど。生き物が脱走しちゃって」
ドォン!!!
ミルちゃん生徒会長がそこまで言った時、爆発音とともに校舎を突き破って巨大な動物の顔が現れた!!
「そう! こんなの!!」
「『
イグニは『ファイアボール』に魔力を込める。
「イグニくん。殺しちゃだめだよ」
「ミル!
見れば新校舎の上でミコちゃん先輩が手を振っていた。
横ではユーリが顔を真っ青にして何かの魔術を使っている。
そして、空にはさっきの動物たちが飛んでいる。
「『
そして、イグニは魔術を撃った。
直撃したそれは校舎から吹き飛ばされて、地面に落ちる。
動物……なのだろうか。
顔は獅子だが、身体は馬。そして、背中には羽が生えており色んな動物の身体がくっついている。
「あれは生物研究部で生み出してるキメラだね。時々脱走するからこうして捕まえてるんだ」
「時々……」
イグニが撃ち落としたキメラに網を持った少女たちが近づいてキメラを確保。
少女たちはイグニに手を振ると、キメラを引っ張ってどこかに持っていく。
「あれが生物研究部です?」
「うん、そうだよ!」
生物研究部はほとんどが女の子。
生徒の8割が女子のため、それは当然なのだがイグニはバッチリそこにいたメンバーの顔を覚えた。
顔は覚えたぞ。よし。
相変わらず気持ち悪いが誰にもバレないので突っ込まれることもない。
「ああいう風に部活やってて起きた事故の尻ぬぐいとかも生徒会メンバーがやったりするよ。
「なるほど」
「あ、イグニ君。この校舎が壊れたところ覚えててね。ちゃんと修復課に書類を出さないといけないから」
「了解です!」
イグニはびしっと敬礼。
(地味だと思ってたけど生徒会って案外目立つかも)
特に女の子たちから手を振ってもらえるのは嬉しい。
誰かの役に立てている気がするし。
「そういえばイグニくんはもうコース決めたの?」
「コース?」
食べ物の話?
「あれ? 入学する時に言われなかった? 2年生から配属されると思うんだけど」
「は、配属……?」
説明されたのは入学式の時だろうか。
あまり話を聞いていなかったのでイグニは首を傾げる。
「あはは。その顔は聞いて無かった顔だね」
「……はい」
「ロルモッド魔術学校は2年生からコースに入ってね。それで自分の得意なことを学んでいくんだ」
「得意なことを」
「うん。例えばミコちゃんが入っているのは『
あー、俺はそこに入りそう……。
「他には『
「ミルちゃん生徒会長はどこなんですか?」
「私は『
「え、そうなんですか?」
イグニはミルに生徒会に誘われた後、ミルのことをそれなりに調べた。
その時に出てきた輝かしい戦歴の数々。
それを考えると『
「私はもう
だが、ミルは明るい笑顔でそう言った。
「な、なるほど……!」
確かにミルちゃん生徒会長は強いから『
そういう選び方もあるのか……!
「ま、あんまりそういう決め方はオススメしないけど……って、危ない!」
ちょうどイグニにとっての死角。
ミルが立っていた窓際から何が飛んできたッ!
ミルはイグニを押し倒すと、
「『捉えよ』」
どろりと這い出した無数の闇の線が、その飛翔物を空中で固定した。
「あっぶなぁ。イグニくん。大丈夫」
押し倒されたイグニの顔を埋める様におっぱいが顔に当たっていた。
「だ、大丈夫……じゃないっす……」
俺もう……死んでもいいや……。
おっぱいに埋もれて死ねるなら……本望だ……。
イグニは
不思議と、心地の良い敗北であった。
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