神城夫婦の出会いの話2

前回の続き。


注意:会話文多め、ご都合主義です。

必要最低限の部分しか書いてないので、各自妄想で補って下さい。


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なんというか彼女は純粋だ。

高校生ならば部活で青春とか大学受験ことを考えることが普通だ。けれど彼女は小学生のように妖精やお姫様を信じている、恐ろしいほどの純粋。

その純粋さに俺は次第に惹かれていったのだと思う。俺にはない柔軟な頭、欠けているピースが埋まる予感がした。


·


図書室


「ねぇねぇ!今日は何の話をする?」

「そうだな…お前のことを知りたい。」

「えっ、私?!」


「お互い名前だけ名乗って、ちゃんと自己紹介してないだろ。」

「あーなるほど!

マリはねー、よく見る本は童話とか可愛い系の本!あと趣味は妄想?かな。

将来の夢はね…お姫様!いつかね、本物の王子様が迎えに来てくれるのを待ってるんだ~!」

「それ現代では無理だろ」

「未来なんて誰にもわかんないよ!

そんなことより神城君のことを教えて!」


「俺は本はなんでも読むが、工芸や工作系の本をよく見るな。趣味は…特になし。

将来の夢は…社長か?」

「神城君、モノづくりとか興味あるの?がり勉ぽいのに意外だ…

将来の夢が社長ってことは家が会社ってこと?凄いー!!」

「一度にべらべら喋るな」

「ごめんごめん!神城君の家の事聞いてもいい?おうち何の会社なの?」


「まぁ…別にお前ならいいか」

「ありゃ~隠してたタイプ?

私達クラスも違うし、ほら~赤の他人の方が話しやすいってこともあるじゃない?よかったら話してよ。」


「…キャッスルカンパニーっていうおもちゃ会社知ってるか?」

「聞いたことあるかも!そこの会社のお人形とか持ってたと思う」

「俺の父親がそこの社長で…」

「えー!凄い!!じゃあ神城君って次期社長ってこと?!」


「しー!声がデカイ!他の人には話すなよ」

「うんうん、わかった!」


「でも…俺が社長になれるかわからないけどな。」

「どうして?」

「親父から出された課題があるんだ。」

「課題?」


歯切れ悪そうに言う神城。

「あー言っても良いか。

課題は『男の子向けと女の子向けのおもちゃのアイデアを何か一つずつ考える事。友達と考えるのも可』。」

「なにそれ?めちゃくちゃ面白そう!

私も一緒に考えるよ!」


「正直…自分から頼もうと思ってたから、そう言ってくれると助かる。

俺一人だと女の子のおもちゃとか全然わからないからな」

「任せてよ!

ていうか神城君のお父さんは会社のことはもちろんだけど、友達作って欲しくてこの課題出したんじゃないかなーってマリは思った」

「なるほどな…」


「じゃあマリが高校の友達1号だね~!これからどんどん仲間増やしてこー!」

「そうだな」


「じゃあこれから図書室で会ったら、おもちゃのこと話していこうね~!!じゃあね!」


話すだけ話して彼女は図書室を去っていった。

彼女と話していると心が落ち着く。彼女ともっと一緒にいたい、話をしたいと思った。


·

·


それから俺は彼女と図書室以外でも、よく会うようになった。

そしてある日のことだった。


「ねぇ神城くん。 明日暇だったりする?」 「特に予定はないぞ」


「じゃあさ、遊園地行かない? マリのパパがチケットくれたんだけど…ペアチケットでさ。 一人で行くのも勿体ないし、確かそこの遊園地におもちゃで出来たオブジェとかあって神城君の勉強になるかなーと思って!

だから……どうかな?」

「いいのか? 俺で」

「全然大丈夫だよ~!むしろ大歓迎! だってせっかくのお休みだし、一人行くの寂しいもん!」

「わかった……行こう」

「やったー!約束ね!」


まさかの展開になった。

彼女とデートできる日が来るとは……。

楽しみだ。


·

·


翌日


待ち合わせの時間まであと30分。少し早く着いてしまった。彼女のことだから時間よりも先に来ているかもしれない。

辺りを見渡すと、やはり彼女がいた。しかし……様子がおかしい。


「どうした?体調悪いのか?」

「うぅん……平気。 ただね……緊張しちゃって」

「緊張?」


「だっ……だって……初めて男の人と2人で遊ぶんだよ?! しかも神城君だなんて……心臓がドキドキしすぎておかしくなりそう……」 「お前って意外と初心なんだな。 別に俺達はただ遊びに行くだけだろ」

「神城君はなんとも思わないの?」

「俺はアイデアになりそうなモノを探しに来ただけだから別に…」

「相変わらず堅いなー!」

スタスタと先を歩く神城に着いていくマリア。


「それにしても……その服似合ってるな」 「へっ?! きゅ……急に褒めないでよ!」 「いや……本当に可愛いと思う。 そういう服装が好きなのか?」

「あ、ありがとう…… これはね、ママに選んでもらったの。普段あんまりこういう格好しないから新鮮かも。

神城君もかっこいいよ! いつもより大人っぽく見える!」

「そうか? 普通だと思うが……」

「いやいや!神城君のカッコ良さが滲み出てる感じがするよ!」

「なんか恥ずかしいな……///」

「照れてる神城君レア~!!」

「うるさい」

「ごめんごめん! あっそろそろ電車来るみたいだね! 乗り遅れないようにしないと!」

「そうだな」


今日は彼女を楽しませてあげよう。俺はそう心に決めた。


·


「わ~!見てみて~!凄く大きい観覧車~!!」

「おい走るな。危ないぞ」

「大丈夫~!」

彼女は子供のように走り回る。そんな姿がとても可愛らしい。


「ねぇねぇ!写真撮ろうよ! ほら!並んで並んで!」

「わかったから押すな」

「はい!チーズ!」

カシャッ!という音と共にシャッターが下りた音が聞こえた。


「うん!いい感じ~! はい、神城君にもあげるね」

「はいはい」


「ねぇ……これってデートになるのかな?」 「なるんじゃないか。少なくとも周りの人から見ると俺達の関係は友達以上恋人未満って感じか?」

「じゃあ……手繋ぐ……とかはあり……だよね」

「まぁ……アリじゃないか」


俺の手の上に、彼女の手が重なる。彼女の温もりを感じる。こんな感覚は初めてだ。


「えへへ~♪」

「何笑っているんだ?」

「なんでもなーい!……ねぇ、神城君」

「なんだ?」

「……大好き!」

「そうか」

彼女の笑顔が眩しい。

きっと俺はこの瞬間を忘れないだろう。


·

·



そして、彼女との遊園地デートから数日が経ったある日のこと。


「神城君!こんにちは~」

彼女が図書室にやってきた。


「おう」

「神城君、あのね…マリ考えたの」

「?」

「一からアイデアを練るのは難しいって!」

「そうだな」

「だから…めちゃくちゃ恥ずかしいんだけどね…」

「?」

「マリのノート、何かに使えないかな!」

ノートを神城に差し出すマリア。


「これ、お前の大事なノートじゃないのか?」

「そうだけど…

マリはさ、今まで誰にも見せずに自分の好きを自己満足だけで描いてたの。

でもね……神城くんと出会って変わったんだよ?自分だけのために描いてるんじゃなくて……誰かに見て欲しいって思うようになった。

だから……これを神城君に見せたかったの」

「……」

「神城君が嫌なら別に良いけど……」


彼は静かにノートを手に取る。そして……パラパラとページを開いた。


「凄いな……」

「え?」

「いや……お前の『こういうのが好き』って気持ちが伝わってくる気がして……」

「ほんと?嬉しい……」

「それで……お前はこれをどうしたいんだ?」

「うーん……

マリとしては、これを本にできたらなって思ってる。絵本とかになればいいな~なんて……」

「お前……頭おかしいんじゃないか? そんな簡単にできるわけないだろ」

「やっぱり無理だよねぇ……。

夢見るくらい許して欲しいよぉ……」

「いや、ちょっと待て…!」

神城はマリアと初めて会った日のことを思い出す。


·

·


図書室の扉をガラッと開ける。


「フフ!そうなのー!

マリね、今回のテスト頑張ったの!」


窓際で知らない女が一人で喋っていた。

俺は危険を察知して、ガラッと扉を閉める。


「ねー!なんで扉閉めるの!!」


扉を閉めたはずだが、すぐに開いて女が出てきて俺を引っ張った。


「ヤバそうなヤツが居たら閉めるだろ!」

「マリ、変な人じゃないよ?」

「いや、お前変なヤツだろ!

なんか一人で話してたし変なモノ見えてるだろ!」

「ん?妖精さんのこと?」

「妖精?」

「この辺に居るよー!図書室に居るのはね…リブロちゃん!本が好きなんだよー!」

身振り手振りをして自作のノートを見せてくる。


·

·


「…本型のおもちゃで、見えない妖精を探す。って言うのはどうだ?」

「なるほどー!」

「それで見つけた妖精は本に登録される的な感じで」

「収集要素だね!」

「まぁ、お前の考えたアイデアと俺の好きなモノの要素を組み合わせただけだが…」

カリカリと紙に思いついたことを書いていく。


「凄い凄い!!神城君天才じゃん!」

「あと、これはまだ未完成だ。完成させるためにもお前の力を貸してくれないか?」

「もちろん!」

彼女は嬉しそうに返事をした。


***

数ヶ月後


「よし、これで全部か」

「お疲れ様~!」

「しかし……まさかここまで上手くいくとはな」

「神城君の発想力の勝利だよ~!」


「まぁ……それはともかく、完成したぞ。

気が進まないが、これを親父に見せるか。予定いつ空いてる?」


「明日!」

「了解」


·

·


翌日

神城家


「神城君のお家大きいねー緊張する」

「まぁ、他の人の家よりはデカいだろうな。とりあえず入ってくれ」

「うん!」

彼女の手を握り、玄関に入る。

そしてリビングへ案内した。


「ただいま」

「おかえりなさい、光輝くん!その人は?」

「紹介する。こいつは……えっと……」

「初めまして!マリアです!よろしくお願いします!」

「あら~!礼儀正しい子ね!私は神城家の家政婦の美雪よ。

光輝くんのお友達かしら?」

「はい!神城くんにはいつも勉強を教えてもらってます!」

「そうなのね!これからも仲良くしてあげてね?」

「はい!」


「親父は?」

「部屋に居ると思うけど…」

「いってくる。」

神城は階段を上がり、父親の元へ行った。


「あなたが神城くんの彼女ね? 良かったわね!こんな可愛い彼女ができて」

「あ、いや…私はそんなんじゃ」

「神城くんはね、昔からあまり人と関わらなかったのよ。でもね、最近は本当に楽しそうにしてるの。あの子があんな風になったのは、あなたのおかげだと思うの。ありがとう。」

「いえ……そんな……」


階段から降りてきた神城。

「おい。」

「神城君?!」

「親父の部屋に行くぞ。」

「あ、うん。」


·


社長室の前


「俺が呼んだら部屋に入ってくれ。」

「わかったよ。はぁ~緊張するなー」

「俺の親父はどっちかというとお前みたいなタイプだから大丈夫だろう。緊張するな。」

「え、ちょっそれどういうこと?」

「会えばわかる。俺は先に行くから」


·


「ふむふむ…これが例の課題か。」

「一応提出したぞ、親父。」


「うむ、受け取った!さっそく見させてもらうぞ!」


ペラペラと課題を見る。


「光輝…お前、こっちの課題手抜いたな?」

「次が本命だからな。早く見てくれ」


「確かこっちは女の子用のおもちゃの課題か…?お前には酷かと思いつつ課題を出したんだが…どれどれ…」

じっくりと課題を見る。


「…なるほどな!面白い!

でも絵はお前じゃないだろう」


「高校の同級生に協力してもらった。

おい、入ってこい。」


ガチャ


「…失礼します。」


「紹介する。彼女がこの課題のアイデア出しとイラストを協力してもらった…」

「初めまして!夢見マリアです!よろしくお願いします!」


「このお嬢さんがか!言われてみるとわかる気がするな~」


「あの、神城君ってめちゃくちゃ凄いんですよ!絵は私なんですけど、私の無理難題をうまく形にしてくれて…!」

「ふむふむ…原案がマリア君でうちの光輝がまとめたって感じか…!特にイラスト、味があって良い!

ところで何か今ノートとかイラストの現物って持っているかな?」

「あります!いつも持ち歩いているので!!どうぞ」

ノートを渡すマリア。


「ありがとう」

ペラペラとノートを見る。


「光輝、おもちゃ会社で重要なことは何だと思うかね?」

「今までにない斬新なアイデアなおもちゃを出して喜んでもらうこと」

「いや、それも大事だが…おもちゃ屋を見てると何か気づかないか?ほら、アニメやゲームのおもちゃが多いと思わないか」

「確かに」

「光輝の言った通り、斬新なアイデアなおもちゃも大事だが、売れない場合が多いからなー。おもちゃ会社の主はアニメやゲームのおもちゃを作ることなんだ。」

「なるほどな」


「で、話を戻すがマリア君!」

「はい?」

「このおもちゃ実際に作ってみたいと思わないかい?」

「それは…思いますけど…」

「私の知り合いにアニメ会社の社長が居るんだが…そのノートを綺麗にブラッシュアップして本にして、うちの光輝と一緒にアニメ化目指してみないかい?

この課題を見た感じ光輝はプロデュース能力があると思うし、このプロジェクト成功したら堂々と私も社長の座を渡せるだろう。」

「良いんですか!」

「君達のやる気次第だがね。マリアさんは高校卒業した後の予定って決まっているのかい?」

「特にないです!

とりあえず親が高校は卒業しとけって言われて行ってるだけで!」

「そうかそうか、卒業したらうちの会社に来ないかい?歓迎するぞ!」

「えー!行っちゃおうかな!」

「おいおい、話がとんとん拍子に進み過ぎじゃないか!!」

「そうか?」

「そうだよ!」


「そうだマリア君、ついでにうちの光輝君と結婚してやってくれないか?」

「えっ」

「ふえっ?!」

揃って声をあげて驚く二人。


「こうやって家に連れてくるくらいだ。嫌いじゃないんだろう?」

「親父~!!」

「ヤボな質問だったか?

お、二人とも顔が赤い…ふーん、なるほどね…」

「何察してんだ!!俺達はただの友達…で…」


マリアの方を見ると頬を赤く染めて俯いていた。


「神城君なら良いよ…」

「え?」

「結婚しても……」

「そ、そうか。」


「まあ、二人ともまだ高校生だし婚約という形でいいだろう。」

「ちょっと待った!!!!そんな簡単に決めても良いのかよ!」

「私は別に構わないぞ。

それに将来有望な人材を手放すわけにもいかないしな、光輝もここ逃すとチャンス一生ないぞ~!!」

「あ~!わかったよ…もう好きにしろ……」

「やったー!これからよろしくね!神城君!!」

「ああ……よろしくな。」


こうして俺達二人は正式に付き合うことになった。

そして俺は夢見と結婚する約束をした。


·


マリアは高校を卒業するとキャッスルカンパニーに就職し、妖精を描いていたノートの中身を絵本として完成させ光輝と共にプロジェクトを担当。

二人の努力の甲斐もありアニメ化まで漕ぎ着けた。


·

·

·

·


「~♪︎アニメ楽しみだなぁ!」

「そうだな」

「1話ちゃんとリアタイ出来そうで良かった~」

「ん。」

マリアに何か手渡す神城。


「何これ?本型のケース?開けてもいい?」

「いいぞ。」

パカッと蓋を開ける。


「あー!可愛いネックレスと指輪だー!」

指輪を手に取り、じっくり見るマリア。


「あれ?

コレってもしかして結婚指輪…?」

「…そうだよ」

「そっか~!私達高校卒業してからずっと忙しかったもんね」

「渡すタイミングは今日しかないと思った。お前がまだ俺のことを好いてくれているなら受け取ってくれないか?」


「神城君、あのね…私のわがままなんだけどゴニョゴニョ…」

神城に耳打ちするマリア。

「え?」

「お願い、言ってくれるだけでいいの!」

「嫌だが。」

「えー?じゃあ結婚してあげない!」

「あーもう…!一回しか言わないから、よく聞けよ!」

「うん!」


「…夢見マリアさん、俺のお姫様になってくれませんか…?」

「はい、喜んで!」

神城に抱きつくマリア。


その後、二人は結婚し神城はおもちゃ会社の社長になった。

彼は後に「妻が居なければ今の自分は居なかった」と語るのであった。


(終)



【おまけ】


日和、実家に帰省中。

両親の馴れ初めを聞いた日和。


「家に『フェアリーリンクス』のグッズめちゃくちゃあるなーと思ったら、まさかお母さんが原作者だったなんて…」

「フフフ」


「ていうかお父さん、あんな台詞言うんだ…(ドン引き)」

「そうね~昔から必要以上喋らないしぶっきらぼうだけど、いざという時は頼りになるわよ? あぁ見えて結構優しいところもあるし。お母さん、お父さんの無自覚の言動に何度キュンキュンしたことやら~♡」

「……ふーん」

「なにその顔?」

「べっつに~」


「最近は仕事も忙しくなってきたみたいで、なかなか家に帰ってこられなくてあまり会えてないけどね。まぁ今に始まったことじゃないから別に寂しいとは思わないけど…」

「…………」(本当は寂しい癖に)


「でも私としては、もっと帰ってきてほしいんだけどね~。

日和ちゃんも気軽に帰ってきても良いのよ?なんたってあなたはウチの一人娘なんだし!」


「しょうがないわね…お母さんのためにもう1日ぐらい居てあげるわ。」

「わーい、日和ちゃん大好き!」


(終)

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