17 美はそこかしこにある
ぼくたちの目はあまりにも退屈に慣れきっていて、美しい景色をみたときに、絵に描いたような景色だと、転倒したことを思う。まるで写真でみた景色だと、本気でそんなことを言う。ぼくたちの目は意味ある情報をさぐりだすのに必死で、意味をみいだせないありとあらゆるすべてに、一瞬で処理済みのラベルを貼って見えなくする。
その一瞬の視界をきりとって眺めたとき、やはり、絵に描いたような景色だと思うのだろう。食べやすい大きさに切られた食材をかみしめるように。探すまでもなく、美はそこかしこにある。美はあまりにも多い。ある詩人は、神に、自らを美から護るように乞うた。美はあまりに過剰であるからと。あまりに過剰であるために、ぼくたちの目はそれに慣れきっている。
ぼくたちは意味ある情報のみをかすめとり、世界を眺めてはいない。
美は遅効のよろこびで、ぼくたちはそれを待ちきれなくなっている。
美はそこかしこにある、けれど、ぼくのこの乾いた目で眺めるには、世界はあまりにまばゆく、すがめずには見ていられない。
意味を、はぎとったところに、美がある。その美をとらえるには、ぼくの目があまりに疲れ切っているだけで。
美はそこかしこにある。
すがめずには見ていられないけれど。
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