7 薄暮

 なにもほしがらないこととなにもほしくないことのあいだに立っている。薄暮のなか佇む者は誰であれ大人びて、なにかをこらえているように見える。そのようにしてきみはどこかを見ていて、ぼくはその目だけを見ていた。なにかを見るものはそのなにかに永遠に追いつけない。なにかを見るものを見るものはそのなにかに宿命的に遅れている。きみがぼくの半歩先を進んでいて、ぼくに目もくれないだろうことが、そのときのぼくにはけれどわからなかった。

 日が暮れるのがあまりにもはやく表情はなにもわからなかった。

 秋の薄暮に佇むものは、誰であれ大人びて見えた。

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