第37話

「いや血祭りって.....」

行原の物言いに私は呆れた。

「例えだからな」

「いやそれは分かりますけど」

ダサいにも程がある。

割と厨二病だよなこの人。

なおさら心配になる。

「てか本当に大丈夫ですか?」

「何が?」

「いや乱入って普通に考えてダメですよね?お客さんもビックリするだろうし」

「だから良いんだろ。正体不明の全身タイツの女2人が体張ってたら、コイツら誰だよってなるから」

それは、そーかもだけど。

だとしても、自分がその体張る担当をやりたいとは思えない。

「ったく、芸人なんだろお前。面白いことに貪欲になれよ」

「いや昨日の今日で、そんな変わるわけないでしょ!ローマは1日にしてならずですよ」

「心理学じゃ人は今すぐ変われるとも言うんだよ。要は気の持ちようだ。つべこべ言わずにケツとオッパイさらしてこい」

「いや絶対ムリ!!今、心理学とか関係ないし!」

行原は、やはり頭のネジが数本外れている。

てか、ケツはともかくオッパイって、どーいうこと?

気になることはいくつかあるが、今はそれ以上に言わなければならないことがある。

「それに!マジで具体的に何やったら良いんですか!?私、何も出来ないですよ!?」

「いや出来るだろ」

「出来ないですよ!」

「昨日は出来てた」

「あれは行原さんが指示してくれたから、たまたま上手くいっただけで.....」

「いや別に俺は昨日、お前にあれをやれ、これをやれなんて言ってねーぞ?」

「!?」

どーゆうこと?

「え、でも、色々と天の声みたいな感じで指示してくれましたよね?」

「天の声はやったな」

「でしょ?なら....」

「でも、俺は演者じゃない。一応、作家業も多少やってるから裏方としてネタに絡むことはあるけど、あくまで演者はお前らだ。昨日だって、お前らが俺の意図を読み取って動いたから、ああいう流れになったけど、もしかしたら俺の意図をぶち壊した方がより面白くなっていたかもしれない」

「な、なるほど」

行原の言い分も分からなくはない。

ただ、芸歴2日の人間に"自由にやれ"は、流石に無茶振りが過ぎる。

「つーか、そろそろ時間だな」

そう言いつつ、行原はステージに目を向ける。

つられてステージに目を向ける。

「さー!ライブも中盤に差し掛かりました!次のコンビは.....」

ステージでは、司会の女性が興奮したように、まくしたてている。

先ほどと状況は変わらない。


え、どーゆうこと.....?


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