第33話

そんなわけで、わたし達は再度着替えることにした。

しかし、わたしには気になることがあった。

「あ、あの、あんまジロジロ見ないでよ?」

「何で?」

「いや何でって.....」

私は他人に裸を見られるのが嫌だ。

理由は簡単。スタイルが悪いからだ。

そんな私を他所に、彩奈はズンズン服を脱いでいき、あっという間に美しいオッパイと美尻を披露した後、赤タイツを身に纏った。

「ちょっと、早く着替えなよ。時間ないからね。いつ連絡が来るか分からないんだから」

彩奈がいつもの少し強気な口調で促してくる。

「わ、笑わないでよ?」

「だから何が?」

美人には凡人の悩みが分からないらしい。

「いやだから、その、私あんまり可愛くないから.....」

モゴモゴと私が言っていると、彩奈が突然笑い出した。

「あ、何だそんなこと気にしてたんだ」

「そ、そんなことって!!彩奈は可愛いから分かんないかもだけど、私のような凡人にとっては、それはそれは辛い悩みと言いますか.....」

「分かった分かった。まーでも、確かにアタシには可愛さで劣るかもねー」

得意げに彩奈が笑う。

「でも安心して。アタシは別に、そこまで頭抜けて可愛いわけじゃないから。だけよ」

「ごまかしてる?」

あることが頭に浮かぶ。

「え、まさか.....せ、整形?」

「アホか」

彩奈が持っていたカバンからポーチを出す。

「メイクよ、メ・イ・ク」

「あー、なるほど」

「見た感じ、ハルってほぼノーメイクだよね。仕事ある日でこの状態ってことは、普段からしないタイプでしょ?」

「は、はい.....」

「可愛くなる努力せずにコンプ抱えるとか、ちゃんちゃらおかしいから。嘆くなら努力してからにしてくれる?」

ぐうの音も出ない。

「アタシに任せて」

「え?」



「アンタを、自分が憧れる自分に近づけてあげる」



そんなわけで、彩奈によるメイクが始まった。

トイレの鏡の前に立たされ、彩奈が私の顔にどんどんメイクを施していく。

「時間ないし、どうせタイツ被るから、髪はやらないけど、一応にはするからね」

「あ、ありがとうございます」

「口動かさないで」

「う、うん....」

みるみる内に、私の平凡な顔が別人に変わっていく。10分ほど経ったろうか。

彩奈がよしっ!と言い、手を止めた頃には、私は自分の顔の変わりように絶句していた。

「どう?」

彩奈に聞かれ、ようやく私の口は動き出す。


「こ、コレが.....私?」

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