第22話
親子と別れた私は、行原の事務所に向かっていた。
先ほどの言葉を撤回しなければならない。ムシの良い話なのは分かる。
1人の女の子に笑ってもらいたくて芸人を目指すなんて、そんな小さな理由で決断して良いことなのかどうかも分からない。
でも、他にやりたいことなんて無かった。
事務所にたどり着く。
古臭い階段を上がった先にある事務所には、まだ明かりが点いており、何やら話し声もした。
インターホンを探すが、それらしきものはない。
軽くノックして声を掛ける。
「す、すいません!」
中から返事はない。
気付いていないのかもしれない。
私は思い切ってドアを開けた。
「す、すいません!雨宮です!入ります!」
そう言って中に入ると、そこで見た光景に私は絶句した。
事務所のソファで裸の行原と彩奈が身体を交わらせていたのだ。
「ええええええぇぇぇぇええ!!?」
頭がショートする。
「ご、ごめんなさいぃぃぃぃ!!!」
私は急いで、事務所を後にした。
いや待って待って。何今の?2人ってそーいう関係だったの?だから距離近かったの?てか事務所って、そーいうことする場所なの?
色んなことが頭を駆け巡る。
てか、初めて見た。男の人のアソコ。小学生のときに見た、ウザい男子のちっこいものじゃない。成人男性のイチモツである。
階段を駆け降りたところで、腕を掴まれる。
今日はよく腕を掴まれる日だ。
だが、今回は振り解く気はなかった。
ただ、弁明はしたかった。
「いや、あの、その、別に、あの、みてませんよ?見てませんから。行原さんのアソコも彩奈さんのピンク色のアレも見てないですから」
「メッチャ見てるじゃん!」
ツッコミの声で、腕を掴んだのが誰か分かった。
「あ、彩奈さん?」
「とにかく心配してたんだから!良かった!やっぱり来てくれたんだね!」
彩奈は安堵の表情を浮かべている。
しかし、それ以上に私は気になることがあった。
「あの、彩奈さん、タオル一枚ですけど、大丈夫なんですか?」
彩奈の表情が固まる。
彩奈はバスタオル一枚で階段を駆け降りていた。あと少し遅かったら路上に出ていたところである。
彩奈は引きつった笑みで私に笑いかける。
「とりあえず.....戻ろっか?」
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