第8話
「え、嘘ですよね?」
「大マジ」
彩奈がニコッと笑う。
「いやいやいや!私!着れないですって!し、死にます!は、恥ずかし過ぎて死にますから!」
「舞台で死ねるなら本望じゃん」
「私は本望じゃないですよ!」
慌てる私を見て、彩奈は大笑いしていた。
私としては、まったくもって笑い事じゃ無い。
そんな恥ずかしい格好で人前になんて立てない。痴女じゃあるまいし。
「か、帰ろうかな.....」
「アホか。条件どこ行った」
行原からドスの効いたツッコミが飛んでくる。
「え、あの本当に着ないとダメなんですか?てかサイズないでしょ?」
「アタシ、貸し出す用に色々持ってるから。持ってくるわ!」
彩奈はそう言うが早いか、走り去ってしまった。
「だってよ」
行原がのんびりと言う。
「あ、でも出番まで時間ねーから急がねーとな。もう次とかのはず」
つ、次.....!
「ま、間に合わないんじゃ無いですかねぇ」
「間に合わせろ」
「んな、無茶な.....」
「それに、水着でやれば、絶対に今回のネタは盛り上がる」
「?」
水着だと盛り上がる?
「お前に皆の羨望の眼差しが集まることを約束してやる。だから着てみろ」
「いやいや」
大丈夫だろうか?
大丈夫じゃなかった。
言われるがまま、ビキニに着替えた私は早々に後悔した。いやフラグ回収早すぎか。
なんせ私のお胸が貧相すぎて、彩奈のビキニコレクションを持ってしても、ピタリと合うビキニが無かったのだ。ブラは特にブカブカである。正直ポロリするのではないかと、ヒヤヒヤしている。
「ま、でも落ちてきてないし、大丈夫っしょ」
彩奈が笑う。
「いやいや......」
私は全身から火が出るのではないかというほど、体が熱っていた。未だかつて、ここまで恥ずかしい想いをしたことはない。いや待て、これでお客の前に立つのだ。きっと、今以上にヤバいことになる。
ダメだ、ちょっと泣きそう。
「てか、全然似合ってるよ、ハル」
彩奈が励ましてくれるが、美女に言われても気休めにしか聞こえない。
マジで出たくない。
とにかく気を逸らしたかった。
「そ、そーいえば、どんなネタをするんですか?」
彩奈に聞く。
が、なぜか彩奈はフリーズしてしまった。
え、なんか私、まずいこと言った?
数秒後、彩奈のフリーズは解けて、笑顔に戻る。
「あ、ゴメンゴメン。実はアタシもよく知らないんだよね」
いやどゆこと!?
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