七 島の工場にて
目を覚ますとまだ夜明け前のようだった。
あれだけ
妻と子は元気にしているだろうか。
そもそもこの小島と故郷での時間の進み方は同じなのだろうか。
『死の世界だと決めつけたのはそなたであろう。ここはそなたが死の世界と思えばそうなり、生の続きだと思えばそうなる世界に過ぎぬ』
いしゅたるの言葉が何度も脳裏をめぐる。
例え私が未だ生の世界の住人であるとしても、
私の脳裏に、一人老爺の姿で海岸に取り残されたかの男の姿が鮮明に浮かび上がった。
私は胃の中が空になるまで
汚した寝台もそのままにふらふらと
一刻も早く船を完成させ、この島から逃げ出したい――。
私は朝食を勧めるきるけえを制して一心に大八車のわだちの後を追った。
私は酷く焦っていた。
湿気を帯びた重い砂に何度も転びながら走り続けると、
「私はきるけえの客人で、故郷に向かう船を
とかげの顔をした男はふいと前を向くと、そのまま
大八車はうっそうとした低木が生い茂る低湿地を、車輪を泥にとられながら進む。
およそ
中ではさまざまな動物の顔をした男たちがカンナで木材を削ったり、猫やうさぎの名残をもつ女たちが布を
どうやらこの島の工場らしい。
食い入るように作業場を見つめる私に
ここの船大工は元々はここいらの漁師たちであろうから、私の知る船作りの工程とはさほど変わるまい。
私は乾いた木材に糸で器用に印をつけていく大工たちを見ながら、少なからぬ安堵の念を抱いた。
「これはきるけえと約束した私のための船の準備か」
とかげの顔の男に尋ねたものの、彼の手ぶりからすると違うようだった。
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