最終話
数日後、
「リザ殿、リシュリュー殿。両名には魔族討伐の報酬として大金貨10万枚と伯爵の地位、そして領地を授与する。また、両名は貴族になった為家名としてリザ殿にはバルシュタイン、リシュリュー殿にはホルベラを同時に授与する」
「「ありがたき幸せ」」
師匠とリシュリューは王城にて、国王から直接報酬を頂いていた。
大層な報酬が貰えるんだろうとは予想していたがここまでとは思っていなかった。
大金貨10万枚は日本のお金で言うと3000億円位。本来魔王討伐に使う筈だった予算の半分らしい。
これに関しては大体予想していたのだけど、伯爵の地位とそれに応じた領地を与えてくるとは思っていなかった。
普通重大な成果を上げた平民に与えられる爵位は大抵が貴族の中で一番下の男爵で、良くてもその上の子爵であることが多い。
しかし今回与えられたのは伯爵の地位。子爵の上であり、俺やマリアが位置する侯爵の一つ下。
これはソレナ帝国の歴史でも史上初の出来事らしく、異例の対応である。
一応二人が俺やマリアと深い関係にあったことが影響しているっぽいんだけど、それでもである。
流石に師匠もそこまでとは予測していなかったらしく、遠目から見ても分かるくらいに全身がカチコチになっている。
一方のリシュリューはいつも通りだけど。流石に冷静すぎやしませんかね。
報酬の授与後、王都にて二人を讃える盛大なパレードとお祭りが数日にわたって開かれた。
それから2週間後、
「ここはこうですね」
「正解だよ。その調子」
俺とマリアは師匠の住む家で領地経営の手伝いをしていた。
これは師匠からではなく、国王が直々に二人を手伝ってやって欲しいと頼まれた仕事だ。
まあリシュリューに関しては初日の段階で完璧だったので何もしていないんだけどね。
「うう……」
別に俺たちや部下の方々に任せきって自分は贅沢三昧、とかでも別に良かったのだけれど、それじゃあ皆に申し訳ないからって理由で難しい難しいと頭を抱えながらも頑張ってくれているのだ。
まあ俺よりも遥かに飲み込みが早いんだけど。教えた翌日には俺よりもその部分が出来るようになっているし。
INTは知能に関係ないというのが一般的な学説なんだけど、多分1とか2ステータスが上がっても誤差レベルしか変わらないだけで、1000とか2000とか大幅に上がっていたら分かりやすく変わるんだろうね。
なんでINTもマシマシにしなかったんですかね神様!!!!
「ここまで出来れば完璧ですね。後は一人でもなんとか出来ると思います」
「そうかな?」
「はい、間違いなく」
ということもあり、たった2週間での独り立ちである。
「ありがとう。出来る限り頑張ってみるよ」
「もし困ったことがあったらいつでも俺たちを頼ってね。ホルシュタイン領の隣だし、いつでも駆け付けられるから」
「うん、ありがとう」
そして半年後、
「エリック!渡したいものがあるんだ!」
そう言って師匠が笑顔で家にやってきた。
「師匠、久しぶり。渡したいものって?」
師匠が家に来たのは一カ月ぶり。それまでは週1ペースで会っていたのだけど、旅行に行ってくるからっていって遠くに出かけていたらしい。
だから多分お土産かな?
「これだよ」
そう言って渡してきたのは結婚指輪でも入っていそうな綺麗な箱。
えっどういうこと!?!?逆プロポーズ!?!?
でもマリアって婚約者が居るんだけどえっとどういうこと!?!?
「あ、ありがとう」
何が起こっているのかよく分からないけれど、とりあえず受け取ることにした。
これってどうすれば良いの……?
どうすれば良いのか分からず内心でテンパっていると、師匠がワクワクした眼でこちらを見ていた。
「早く開けてみて」
「え、あ、うん」
急かされてしまったのでとりあえず箱を開ける。
するとそこには、
「種?」
金色に光る謎の種があった。なにこれ。
「うん。種だよ」
俺が聞くと、師匠は自信満々に答えた。
「植えろってこと?」
「いや、食べるんだよ」
「食べるの!?!?」
この光っている種を!?死なないこれ?
「うん、これは創成の種って言って、食べた生物を理想の体に作り替える種なんだ」
理想の体に作り変える。ってことはつまり……?
「痩せるってこと……?」
「恐らく」
「師匠……!こんなものをどこから?」
創成の種なんてこの世界に転生してから一度も聞いたことが無い。そんな画期的な種があるんなら有名になっているはず。
「魔王城がある大陸のその先にあるミカイ大陸の創造の森って所から」
「……何それ」
ミカイ大陸も創造の森も知らないんだけど。凄く遠いことは分かるけどさ。
「色々ありすぎて人智を超えた物が沢山ある場所としか説明できないかな。王都の図書館で見つけたんだ」
人智を超えた物が沢山ある場所。そしてそれを王都の図書館で見つけた。
ってことは、
「もしかして、ずっと俺を痩せさせる方法を調べてくれていたの?」
もう痩せられなくても良かったのに。わざわざそこまで……
「一度した約束は守るのが筋だからね。ほら、食べた食べた」
師匠……
「うん、いただきます」
俺は師匠の好意に感謝して、創成の実を口に入れた。
味は無く、硬さはせんべいくらい。
別にそんなことはどうでも良い。肝心なのは効果だ。
創成の種を飲み込み、数秒程待つ。
すると、
「始まったみたいだね」
「うん」
俺の体が内側からボコボコと蠢きだし、体が作り変えられていくのを感じる。
痛みとかはない。ただ変わって行っているだけ。
遂に、俺は痩せられるのか。
本当にありがとう。これで俺は……!
変化の最後で強く輝き、俺たちの視界を奪う。
光が収まり、視界は完全に戻った。
「どう、かな?」
俺からは確認できないので、師匠に聞いてみる。
「うん、鏡を見てみようか」
すると、何故か微妙な反応だった。
もしかして太っていた方がイケメンに見えたやつかなこれ?
まあそれでも太っているよりはマシだよ。
俺は言われた通りに近くにあった鏡の前に向かう。
そこにあったのは——
「なんでだよ!!!」
ボディビルダーですらポージングを諦め、両手を挙げて降参する位にムキムキな筋肉の塊だった。
確かに脂肪は無くなったけど、脂肪のあった場所が丸々筋肉に置き換わっただけだよ!
下手したら体重は倍くらいになっているよね?痩せてないじゃん!
ボディビルダーレベルならカッコよかったけど、これは最早気持ち悪いよ!
「まさかそうなるとは思わなかった。ごめん……」
「うん、でもこれは師匠は一切悪くないと思う」
普通理想の肉体と聞いて筋肉だるまが浮かぶ人は居ないよ。程よく引き締まった細マッチョが一般的な理想だよ。
「責任取って筋肉を落とす方法を今度は持ってくるね……」
「お願いします」
脂肪を落とす事には成功したけれど、体重を落とすことは出来ませんでした……
転生して地位、名誉、権力、金、力そして女。 この世の全てを手に入れた主人公は脂肪を手放すためにドラゴンすらも討伐してしまう。 僧侶A @souryoA
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます