004.なんだそれ。











ミミックを倒して階層を登り、60層の入り口に戻ってまた70層の大鬼オーガを目指す。この動きを何度も何度も繰り返すうち飽きてきたので、考えて考えてタイムアタックを行うことにしてみた。


魂食ジール・プランドゥルの通知は一旦無視して、ただただ攻略のスピードを速くするのだ。


「よし。時間測定ツァイト・メッソン


勢い余って行ってしまった72層で時計のような魔物を見つけたので、倒した。そうしたら時間測定ツァイト・メッソンを手に入れたという訳だ。71層以降はこれまでの階層のような自然発生したようなものではなく、人工物……例えばさっきのような時計のような物がそこら中にいるのだ。


それは、魔物のようで魔物でないもの。魔物というよりは魔力を込めた人形だ。これを作れるということは、80層のフロアボスには知能がある可能性が高いということ。60層のボスである大鬼オーガだって最初こそ魔法で奇襲をかけて殺すことができたが、実際棍棒で殴った時はかなり苦戦した。知能がある魔物ということを考えれば、更に難易度が上がってしまう。大鬼オーガの棍棒の攻撃を全て見切って、一撃で沈められるようになるまで、何周も何周も繰り返すほかないのだ。要するにレベル及び技能アップである。


「よーい、スタート!」


一人で掛け声をかけるというのはなんとも寂しいが。それを振り払うが如く全速力で60層を駆け抜ける。まず60層のミミックはとにかく力一杯棍棒で叩き潰して、61層へ。


経過時間55秒、60層から61層へ。途中途中では、名前も知らない3つの首を持つ犬やら、とんでもなく早く動き回るウサギの化け物が現れるが、とにかく棍棒でぶん殴る。


絶命した事は魂食ジール・プランドゥルの通知で確認していく。ゴシュッ、ゴシュッ、ゴシュッ、と通知が来るまでフロア内には音が響くことになるのだが。







20分48秒32、それが今回の、下りの記録だ。ちなみに大鬼オーガは10回棍棒で殴って沈めた。攻撃は60層から合わせて12回くらい喰らった。


ふう、と一息つく間も無くあの声が聞こえる。


『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』


「ぐぉっ!?」


一度止まると、一斉に魂食ジール・プランドゥルの通知がくる。何度となく聞いたとはいえ、やはり慣れないものだ。


頭に直接来る通知だからこそ、一斉に来るとガンガン頭に響く。しかも同時に別々の魔物の名前を言う。だからぐちゃぐちゃになってしまい何を言っているのかも分からない。


「全部却下で。」


『未選択で終了します』


十以上のそれがいっぺんに同じ声で、同じ声量で、同じタイミングで言うものだからうるさくて仕方がない。













さて、何度となく繰り返した往復もそろそろ終わりが近くなってきたと思う。大鬼オーガの攻撃も大抵は見切ることができるようになったし、全体的な記録も10分を切るようになった。


「最後に、もう一回。これで終わりだ。」


俺は最後の一回と、全力で階層内を駆け回る。


「測定終了、記録提示。」


【記録提示。3分28秒。】


魂食ジール・プランドゥルとはまた違う声が、今回の記録を告げる。


……なんだか自分が怖くなった。だって一層あたり平均的に21秒で攻略してるんだぞ?大昔の勇者もゆっくりゆっくり進んだらしいし。たとえどれだけ道を熟知していたとしても、棍棒で敵をタコ殴りにして全速力で進むなんてないだろう。


そういえば長いことステータス見てなかったな。ちょうどいいし、見てみようか?どれだけ成長しているか気になるしな。


能力開示ステータス




名称: なし

種族: 中位不死者ジェネラル・アンデッド

レベル:測定不可

能力スキル:

   魂食ジール・プランドゥル

   相手を絶命させた時、その魂と一部の能力を手に入れることが出来る。

   魔力操作ウォーロック

   魔力を直接操ることが可能になる。

   夜目ナイトアイ

   夜間及び暗闇で目が利く。

   偽装ディシート

   姿及び能力の偽装を行う。

   毒霧ポイズン

   毒の霧を発生させる。

   時間測定ツァイト・メッソン

   時間の測定を行う。

筋力:測定不能

魔力:測定不能

知力:測定不能

防御: なし

敏捷:測定不能

特性:「不死者」

   聖属性の魔法以外を無効化。魔力が尽きない限り体を再生させる。

称号:「進化者」

   自身の力で進化した者に与えられる称号。全能力を上昇させる。




ん?不具合バグかな?不具合バグだよね。もーいっかい。


能力開示ステータス


名称: なし

種族: 中位不死者ジェネラル・アンデッド

レベル:表記不可能

能力スキル:

   魂食ジール・プランドゥル

   相手を絶命させた時、その魂と一部の能力を手に入れることが出来る。

   魔力操作ウォーロック

   魔力を直接操ることが可能になる。

   夜目ナイトアイ

   夜間及び暗闇で目が利く。

   偽装ディシート

   姿及び能力の偽装を行う。

   毒霧ポイズン

   毒の霧を発生させる。

   時間測定ツァイト・メッソン

   時間の測定を行う。

筋力:測定不能

魔力:測定不能

知力:測定不能

防御: なし

敏捷:測定不能

特性:「不死者」

   聖属性の魔法以外を無効化。魔力が尽きない限り体を再生させる。

称号:「進化者」

   自身の力で進化した者に与えられる称号。全能力を上昇させる。


こういうのを、「ゼンベイ全米が鼻で笑った」というのかもしれない。なんだよ測定不能・表記不可能って。というか防御なしは変わらないのか。


「……『ドシャッ!』……『バゴォ!』……『グシャ!』……。」


『魔物の討伐を確認———』


無言で自分のステータスを見つめながら棍棒をとんでもない速さで振り下ろし魔物を殺す、魔物アンデッドの図の完成である。

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