第50話フレイその3
ええ、いまこの瞬間、あなたを大尉に昇格させます。
即刻、敵の死体を数えて。ただの一人も逃がしては駄目よ。
コズマンは、剣を取り、すぐドアからとびだしていった。
[通信兵]フレイは呼んだ。
[はい]
[士元中将]と連絡をとりなさい。
[はっ!]
[二分とたたないうちに]
[用意できました、大将殿]
フレイは、机の上の書類をパラパラとめくっていた。
この敵部隊を完全に殲滅するまでは。
この作戦の性質上、彼らの一人たりとも逃走させるわけにはいかない。この作戦を練ったとき、フレイは、魔軍を襲う自分の部隊は、降伏させた盗賊を再編し、部隊の構成上、古典的な戦法、奇襲攻撃でいくしかなかった。
気がつくと、魔法攻撃は安全に火息んでいた。ややあってフランが現われた。彼はフレイの前に来て報告した。[フレイ様、逃走した敵は一人もおりません。全員を確認いたしました。
[負傷者は?]
[十五名です。残りは全員死亡]
[こちらの被害は?]
[九名です。そのうち、死亡一人。あとは軽傷です]
ほぼ計画通りにいきました。
そう、一人死亡したのね…]
マルクスには悪い事をしたわね…
[フレイ様…]
マルクスには、私から伝えておきます]
結果的には、予定を上まわる時間を費やしてしまったことになる。
彼女は時計をのぞいた。19時30分
[よし、よくやったわと、全員に伝えて。すぐ歩哨をたてて、警備を厳にしなさい。
歩哨たちには、警戒線の外側で動くものは見つけしだい射て、と命じなさい。
例外はないわ。追って命令するまで、何人もちかよせてはだめよ、また外にだしても駄目よ。質問はあるかしら?]
ありません、大将殿]
敬礼を反してから、フレイは通信兵のほうにむき直った。
[さあ、士元に連絡よ]
[なんと伝えましょうか?]
[短くてもかまわないわ??作戦完了、と伝えて]
??作戦ですか?
[そうよ??よ。そう言えばわかるわ]
通信兵から知らせを受けた士元は、ゆっくりと立ちあがった。
アイクに知らせなければ。指揮官席にむかうと、アイクは重々しい表情でこちらを見やった。
[どうだった?]
[やったよ、アイク。??作戦成功だ]
[そうか、やったか。いよいよだな士元]
[ああ、これからが難関だ]ちらっと時計に目を走らせて[いまは19時42時。20時30分には攻撃の準備が整うでしょう。
それからが正念場だな]
[ほぼ、予定どおりだろう]
[簡単に運びすぎたという気が、すこししないか?]
[ああ、気になるね]
[俺れもだ。しかし、プランそのものを練りあげるのに、われわれは最大の努力を払ったからな、不測の事態をすべて入れて。これこそはたぶん、実戦の指揮官が破綻なく実行できる唯一のプランだったのだ。
[そうだな]
[それに士元、こんどばかりは神もわれわれの味方かもしれんぞ]微笑を浮かべながら言った。
いずれにしろ、時間がとても短く感じられる。なにか気のきいた応答をしようと試みたものの、口をついてでたのは平凡きわまる言葉だった。ああそうかもな。
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