第43話 老将・アルフ大将動く

アトラ中央にある、ラムの砦の近くの平原での対魔軍戦に備えて指揮をとっていた

「アルフ大将の第六五常備軍」に司令官の大命が下ったのは。

開戦から一か月後の事だった。

ミンクスがリオンの攻撃により陥落。

アルフは、あきらかに自分の国の最終的な敗北を予期し。

あわせて、自分の運命につても正確に見通していた。


その二日後、帝国に戻ってアルフを激怒させたのは、その決められた日程であった。

戦況緊迫を理由に、二日後にはラーズ要塞へ出発せねばならなくなっている。


「正味二日しかないではないか」

これでは参謀本部での諸打ちあわせで手いっぱいである。

ましてや皇帝陛下に拝謁する時間がないぞ。


「ここでアルフ大将の軍歴を遡る」

対西域戦争時の弱小国であった帝国軍は、西方の強国ハーピー国を初戦で破り。

アルフは殊勲章の将軍となった。

「だが、ダークエルフ国侵攻作戦では苦心惨憺、ようやくこれを攻略」

これにより、ラムド帝国はやっと西方の強国と肩を並べたのである。

「この戦闘終了後。本国の土を踏むことなく各地を転戦し、引退していた。」


軍司令官の新任務への就任には、皇帝陛下に拝謁し、戦況上奏とともに、親任式行われる事になっている。


「だが、こんどもまた親任式を行わないとは、参謀本部はいったい何を考えているのだ?」


戦争が始まって以来の帰京なのである。

参謀本部の命なりとはいえども絶対に後へは引かぬ決意が、アルフのいかつい顔面にみなぎった。


帝国に着いた翌日アルフは参謀総長クリフ大将と会うと、おのれの胸中を訴えた。

クリフは、その希望は当然のことのように万事を請負った。

こうしてアルフの出発は延ばされた。


アルフが久しぶりに皇帝に拝謁したのは翌日である。

襟を正したアルフが、上気した面持ちで退室してきたとき、控えていた副官にはその表情が「もうこれで心残りはない」と、言っているように感じられていた。


南西方面軍司令官に任命されたとき、アルフは国家が滅亡か生存かの最後の段階に来攻することは当然の戦理。

そこが

決戦場となり、自分の死処となるであろう。

覚悟はついた。その顔がやっと晴れ晴れしく副官の眼にも見えたのは当然であったかもしれない。


そのアルフが参謀本部で敵軍の兵力の検討や作戦の打ち合わせに終日没頭した後で、自分に付ける参謀長の希望をハッキリと言ったとき、内情を知る参謀たちを驚かせるのに十分なものであった。

アルフ言った。

「畑・参謀長を希望する」と


「畑・参謀長」だが

弁舌さわやかで頭のキレも鋭く、すべての面で有能な人物である。

だが人によっては無愛想である。

アルフがなぜ彼を選んだのかわからなかった。




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