第10話 再び時を遡る

勇世紀723年は、開戦ヘ至る序曲の年であった。

5月16日の夕暮れ時のティオス国の空は今にも雨が降り出しそうな雰囲気だった。

ロンメル総帥は、司令部を出たあと

護衛の部下と共にある場所に向かっていた。

と、馴染みのお店に寄る

[ロンメル]は護衛の部下に、君は先に戻ってよい。たまには早く帰って妻にサービスをしなさい。

と、言いながらスイーツを買ってあげたのである

いえ、こんなことを…

はは、嫁さんは大事にしなさい。

と、ロンメルは笑い、私の帰りは、多分遅くなるはずだ……

ロンメルには、部下を家族として思いやる優しさがあるのだ

閣下、お気をつけてください

と、部下は心配そうな顔をしたが

はは、敵のスパイや、刺客の事なら心配するな

と、答えて、ロンメルは一人で歩きだす

ティオスの市街地は、勤め帰りの人で溢れていた

ロンメルは、花街のある街区ヘ裏から裏へ歩いていく。

と、ある店の前に来たときロンメルは、あたりを見まわす。

誰かが付けているような気がしたからだ。

扉の前に立つと、ドアを開けた。

すると、カウンターに立つ女の店主が、ロンメルに気づき声をかけてきた。


あら!?

久しぶりねぇ!!

[貴方がここへ来るなんて!?]

ふむ!!

約一年振りかね。

お元気そうで良かったわ。


そなたも元気そうで何よりだ

あら!!

ありがとう


で、今日は何をお飲みになります。!?

[そうだね]

ロンメルは、さっと店内を見渡す

店内には二人の客がいた

それじゃあ…バーボンをロックで貰おうか

[わかりましたわ…]

すると、奥のイスに座ってた客の一人がロンメルの隣にやってきた。

[閣下]

ロンメルは、声を掛けてきた客の顔を見ず、真っ直ぐ前を見て

答える

うむ!!

みんなは?

はっ!! 全員集まっております

うん

うなずいて、席を立ち店の奥にある扉に向かう


扉を開くと奥へと続く廊下を進む。

会合の部屋は、いつもの通り奥まった1室である。

メンバーの全員は円卓を囲んで座っていた。

[遅れてすまなかった]

ロンメルは空いているイスに座る。

女店主に向かって

酒と料理は後にしてくれたまえ。

暫く会合したいので。

女店主は、わかりましたわ。


さて

ロンメルは改まり、これでわれわれの会合は何回目かな!?

はい、六回目になります。

と、参謀のロイドが言う。

そうか

ロンメルはうなずき、[われわれの事は、そろそろ噂になりはじめている

実は、今日もな、朝っぱらから入れ代わり立ち代わり私の執務室に各大臣と貴族共が現れてな、面会を強要してきた。

入れ代わり立ち代わり現れるのは、自分の保身を守りたい連中だ。

ロンメルは、部下にはいつもの通りに砕けた話しかたである。

[私は、革命が起きても国は滅びはしないといったのだ。

しかしだ、ラムド帝国と戦争するとなるとそうはいかん]と答えてやったよ。

大臣や貴族共は、無知蒙昧な連中ですな。

しかし、馬鹿につける薬はない。


ロンメルは、言った。

諸君、いずれにしてもこの会合も頻繁には出来なくなる。

やはりラムドと戦争になりますか!?

なる

開戦でありますが、閣下の予測では、いつになるのでしょうか!?

おそらく…この一ヶ月以内だ。

来月には、西部戦線が動くだろうな。

来月ですか…!!

周囲が静まる。


すると一人の男が入室してきた。

男が言う

なんだなんだ!?

そんな辛気臭い顔をして!!

!!

あっ!?あなたは

おぉっ!!

ロンメルが言う。

久しぶりだな。

あぁ…

貴様もな…


と、笑う[いつ帰って来たのだ??]

つい、先ほどな!!

[ついでに、店の周りにいた不逞な輩も片付けてきた。]

[相変わらず仕事が速いな]

ニヤリ…まぁな!!

さて、この場に現れた男の正体は。

ティオス国特務機関暗部

カズヒロ元帥

いわゆる暗殺部隊である。


しかし、貴様も不用心だな!!

敵につけられるとは!?

ハッハッハァ

いや、つけられていると知ってはいたが、相手にしなかったのだよ。

まぁ…貴様が刺客を始末してくれたのだろう。

まったく貴様は…

すると、女店主が入ってきた。

さぁ…女店主が言う

いつまでも、そんな話ばかりしてないで、せっかく作った料理が冷めてしまうよ

おぉ!!

そうであったな、では皆で頂こうではないか。

こうして、この日の会合は終了したのであった。

さらに、ひと目を避けるため、解散はばらばらであった。

ロンメルは、一人残りある人物の到着を待っていた。







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