第10話 可能性を探る
昼食後、午前中の勉強での質問があると佳菜ちゃんから言われた犬飼は、彼女と一緒に部屋に向かった。その彼の後ろには、二匹の犬達も従っていた。
下飼は、昼食の後片付けをしてた。
忙しそうな二人から少し離れて、青野と姫子は犬飼から午前中に聞いた話を整理していた。
「脅迫状の発見された日に望月家の敷地内を出入りした人物は、普段からいる犬飼と下飼。そして、運転手の車田。更に、会長付き女性秘書の向村の計四人のようですね。」
青野が人物リストを作り、姫子に確認する。
「ええ、そのようね。
下飼さんからは、この後きっと話が聞ける時間が有るでしょう。
車田さんは、会長の帰宅時に時間があるようなら話を聞きましょう。
向村さんについては、またいつこちらに来るのか分からないので、まず会長に彼女から話が聞けるかの確認をしてみましょう。
車田さんと秘書の二人は、午後に会長の荷物を運ぶ為に来て、少し休憩をしてから戻ったそうだから、一時間滞在していないとの話だったけれど、郵便受けに脅迫状を入れる時間として考えるには、充分過ぎる位にありますよね。
それに車田さんは、会長の送迎をしているから朝に投函していた可能性もあるわね。
皆さんから話を聞いて、どんどん煮詰めていきましょう。」
姫子が青野との話をまとめて話した。
その後、玄関から郵便受けまでの様子を中心に敷地内を丁寧に二人で見て回った。
あちらこちらに美しいバラが植えられているが、背丈がそれ程高いわけでもなく、見通しの良い庭である。もし誰かが庭にいれば、邸宅からすぐに気が付けると思われた。
邸宅に戻ってくると、下飼が玄関のフローリングのモップ掛けを始めていた。そして犬飼は、ダイニングの絨毯に掃除機をかけていた。
今朝の犬飼の様子を見て感じてもいたのだが、やはり二人は、望月氏が話したように担当を明確に分けているのではなく、いつも協力しながら仕事を行っているようである。
「下飼さん、作業の途中で申し訳ありませんが、少しお話を伺ってもよろしいですか?」
青野がほとんど休憩をすることもなく働く下飼に、少し遠慮がちに声を掛けてみた。
「はい、先程はすみませんでした。大丈夫です。」
下飼が立ち止まり、笑顔で青野の方を向いた。
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