第6話 同伴出勤!?
「犬飼、モコさくと一緒に、今から私のお部屋で遊んできてもいい?」
佳菜ちゃんが犬飼におねだりするように聞いていた。
「はい、大丈夫です。
ダイニングの片付けが終わりましたら、お部屋に参ります。
そしたら、宿題を始める事にしましょう。」
犬飼が微笑みながら答えている。
「やったぁ。じゃあ、行こうモコさく。
ありがとうね、犬飼。」
佳菜ちゃんは、満面の笑顔で部屋を出ると、少し駆け足で二階の自分の部屋に行ってしまった。その後ろを、二匹のトイプードルも同じように小走りでついて行った。
犬飼は、食卓の上の食事が並べられていた仕切り箱や汁椀などを手際よく重ねて、おもむろに片づけを始めた。
「お仕事中すみません、少しお話を伺えますか?あっ、作業はそのまま続けてくださって構いませんので…。」
青野が近づきながら話しかけた。
「はい、大丈夫です。ありがとうございます。」
犬飼が、言われた通り手を休めることなく片付けながら答えた。
「郵便受けから発見された脅迫状について伺いたいのですが。」
「あっ、それを見つけたのは、下飼です。
昼前には出勤してきますので、直接彼女から話を聞いてはどうでしょうか?」
犬飼が素っ気なく答えた。
「そうでしたか。ではそうします。
ところで、犬飼さんは、片付けとかもするのですね。」
青野が話を続けた。
「そうですね。この時間は他に片付けをする者が誰もいませんので。」
「先程の二匹の犬、随分佳菜ちゃんに懐いていますね。」
姫子が話題を変えた。
「彼らと一緒に出勤するようになってもう3年近くなりますから。
ああ、すみません。犬連れなんかで仕事をしていて。
きっと驚かれましたよね。
以前会長から、私が長時間勤務になった時に連れてきていいと同行の許可を頂いてからの事なんですよ。」
犬の事を聞かれた犬飼は、明るくなり照れ臭そうに答えていた。
「長時間勤務というのは、佳菜ちゃんの長期休暇中のことを言っているのかしら?」
姫子が聞いた。
「いいえ、今の勤務時間の事です、
分かりにくい変な言い回しをしてしまい、すみませんでした。
私は、最初は一日に数時間だけ奥様のお手伝いをしていたんです。
その名残でついそう話してしまいました。
私が大学でバラの研究をしていた話を奥様が覚えていて下さって、病気のバラの様子を見に来てほしいと頼まれて、こちらの庭園の手入れをしに伺ったのが、そもそもこの仕事を始めるようになったきっかけでした。」
犬飼さんがバラの研究をしていた…。
そういえば庭には夏だというのに素晴らしいバラが咲いていたわね。
病気になりやすいバラが、このように手入れが行き届いていて、まるでバラ園のようだったけれど、やはりそれに詳しい人がいたのね…。
姫子は、朝に見た庭の様子を思い浮かべながら、その話を聞いていた。
犬飼の話は続く。
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