5. ゾンビメイド
彼等のリーダーはデイビット、マッチョでハンサムで入れ墨があって、ホモだった。
当然ながら、僕はデイビットのペットになった。
ゾンビ世界になるまえと、そう変わらない境遇になったので、ちょっと残念だが、まあ、ずっとそうだったので、そんなに気にならない。
こまったのはキャロルだった。
残り九人のペットになったキャロルは、毎日毎日犯されて乱暴されて、どろどろになり、ずたぼろになっていた。
僕はボスのペットだから、わりと楽だったので、毎日、薬を塗ったり、ご飯を食べさせたりしてキャロルを介抱した。
しかし、さすがに九人に連日犯されると、ヤバイ感じだった。
「キャロルの分も僕が犯されるから、やすませてくれない?」
というと、デビットは悲しそうに、
「俺さあ、人が使ったケツは嫌なんだな」
と、マッチョ笑いで苦笑して、僕を抱いた。
事が終わったあと、困ったなと、思いつつ、キャロルに食料を運んだ。
キャロルはボロボロになって寝ていて、そこへサムソンがやってきて、のしかかろうとしていた。
「ごめん、サムソン、ご飯と治療しないと、キャロルは死んじゃうよ」
「そ、そうだか。どれくらいで終わるん?」
「二時間ぐらいかな」
「わ、わかったよう」
サムソンは頭が悪いが、意外に気の良いヤツだった。ときどきキャロルに食料をあげているのを見たりした。
他の連中はキャロルをダッチワイフみたいに扱っている中、彼だけが彼女を人として扱おうとしていた。
「死にたい……」
キャロルは目に隈が浮かんだ状態で泣いた。
「食べないと、あと、シャワー浴びにいこう」
「あんたがなんで平気なのか解らない。どうして、家畜みたいに扱われて、平気なの」
「もともと家畜だったからさ」
キャロルにご飯を食べさせた。
肩を貸してやり、シャワー室へ運んで、体を洗う。傷や裂けた部分に軟膏を塗り、新しい服を着せてあげる。
だんだん、キャロルが反応しなくなって来ているのが解る。
ヒヒ爺さまの屋敷でも、攻め潰される前のメイドが良くこんな反応をしていた。
「キャロルは、マッチョの中の誰かを愛せないの? 愛を感じると人は優しくなるよ」
デイビットのようにね。
これは、奴隷の知恵みたいな物で、愛を表すと、どんな残忍な人でも愛を返してくれる時がある。まあ、無いときもあるんだけどね。
「いやよっ! なによ、あんな馬鹿マッチョばっかりっ!!」
僕はため息をついた。キャロルはあまり持たない。
嫌がるからおもしろがって、マッチョ達はキャロルをなぶる。なぶるからキャロルはますますマッチョたちに刃向かう。どんどん責めがきつくなり、最終的には壊れてしまう。
あと、二週間も持つまい。
夜、デイビットの部屋を抜け出して、屋上から空をみる。
大きな月が出ている。
キャロルを失うのが嫌だった。
綺麗で高潔だった心がだんだんと曇り錆び付き情動が動かなくなるのが悲しかった。
だけど、僕はヒヒ爺さんの屋敷にいた頃みたいに無力だった。
あと10人だから、なんとかして殺せばいいのだけど、銃もトランザムも取り上げられていた。
ふと、ショッピングセンターの駐車場に動く者がいた。
屋上から降りて、行ってみると、ゾンビだった。
逃げようとしたけど、別に追ってこなかった。
よく見るとメイド服の残骸をまとっていた。
ゾンビ一号だった。
「おうよ……」
「王?」
「おう」
ゾンビ一号は僕の足下にかしずいた。
「もしかして、あの日にやった、あれ?」
ゾンビ一号はうなずいた。
ああ、そうなのか。
それでなのか。
僕は、心の感度を広げてみた。
ああ、居る、僕の武器が沢山いる。
ああ、山の方に、すごく良い光がある。
「ミリアムありがとう」
僕はミリアムを抱きしめた。
とても臭かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます