3月02日 裏切り(後編)
「今帰った。」
「警部お疲れ様です。いま、澤部の父と、相続関係にあった澤部の叔父にこちらの県警へ向かってもらっています。」
「わかった。到着したら面談室へ案内しなさい。」
「分かりました。」
榎本が部屋を出て駆け出した。
「川瀬、本町、何かわかったことはあるかい。」
「はい。一つ不可解なことがあります。本町さんあれをディスプレイに。」
「任せてください。」
「これは何だい。」
前田が訪ねる。
「古藤及び澤部に関して詳しく調べて制作したリストです。彼らの同僚で、同じ時期に退職した人をまとめました。」
そこには6人の名前があった。そのうち2つは古藤と澤部だ。
・安藤 勇気 あんどうゆうき
・小山 叶斗 こやまかなと
・橋田 奈郎 はしだなみろう
・古藤 文明 ことうふみあき
「彼らの退職理由は?」
「調べたところ、西英製薬内では一つも理由に当たる情報は見つけられませんでした。」
「彼らについてよく調べたところ、6人全員が研究科一類に属していたものです。当時の科長は安藤勇気です。」
「なるほど。ちなみに古藤文明っていうのはまさか。」
「はい、智郎の実の弟です。」
「そして、安藤勇気は源次郎の兄となります。とすると、源次郎さんは兄の役職を継いでいるようです。」
「そして、その4人は今どこにいるんだい。」
「それが、全くわかりません。そこで、川瀬が西英製薬に関する事故を思い出したため、再調査してみました。」
「まさか、あの爆発事故か。」
「ご名答です。警部。名古屋市中区にある西英製薬が所持する雑居ビルで古藤主犯の名古屋駅殺傷事件の一昨日に爆破事故がありました。」
「その事故について調べたか?」
「はい。そこでの被爆者は4名、リストには彼らの名前が載っていました。」
「わかった。当時の状況を再調査だ。そして、西英製薬の研究科一類についても調べてくれ。なにかが引っかかる。」
「分かりました。」
「君たち二人だけではきついだろうから明日からダウンするかもしれない部下を5人ほど送るよ。私は榎本のところへ行く。」
「ありがとうございます。」
前田は階段へかけていった。
~~~~
「ご無沙汰しています。澤部さん。今日はわざわざいらしてくれてありがとうございます。」
「いえいえ、礼なんていりません。協力できることは何でもします。」
「ありがとうございます。最初に聞きたいのは、叔父の澤部 圷(あくつ)さん。あなたは、本当に明彦さんに相続を強要したのですか?」
「、、警察を信じて言います。今からいうことは誰にも言わないでください。」
「わかりました。」
「私は、彼に私の会社の存続を強要していません。。」
「なんだって?」
「本当にすいません。かわいかった甥っ子が死んで自分のせいだと思うと怖くて。存続の話は明彦から持ち掛けられました。『今の会社を辞めたい。だが、やめるためには大きな理由がいる。頼む。俺に不動産屋を託させてくれ。このことは絶対に大事にしないでほしい。周りにはおじさんが託したと伝えてくれ。古藤と死んだ大事な仲間と世界のためだ。』と言われました。」
「世界のため、、ですか。」
♪ ♪ ♪ (前田のスマホが鳴る)
「すいません失礼します。」
「川瀬か。こちら前田。どうかしたかい。」
「事故について詳しくまとめたデータを警部のスマホに送りました。取り調べのとこ申し訳ありませんがよければ活用してください。」
「ありがとう。後でまた話す。」
「ところで、圷さん。存続の話がされたのはいつですか?」
「えぇと。確かまだ最近です。1か月前です。」
「詳しく思い出せませんか?」
「えぇと。たしか2月08日です。」
「なに!事件を起こした前日か?」
「そうなんです。私は彼を信じて半日で存続の手続きをしました。」
なるほど。爆破事故のすぐ存続の話をし事件を起こしたのか。
「古藤が息子さんを殺す動機は会社の存続だと言っていましたが心当たりは?」
榎本が聞く。
「彼らがけんかなんてありえないでしょう。昔からとても仲が良いのです。同じ会社に入るためものすごく勉強していました。なのに辞めるなんて。びっくりしましたよ。古藤くんこそ会社の存続を押してきましたよ。動機がそうだとはおもえません。何か変だと思いましたが、彼らは噓をつかないので、、、信じました。」
「なるほど。名古屋駅殺傷事件についてまた調べなおそう。そして、、こちらの6人の顔に見覚えは?」
前田は亡くなった6人の顔写真と名前を見せた。それを見た澤部の父が驚いた顔をした。
「わ、私は彼らを知っている。確か古藤くんの弟いや、4人が被爆して死ぬ前日か、6人と私で飲みに行きました。彼らは会社の同期だと言ってお互いすごい技術者だったと語ってました。」
「その時のことを詳しく教えてください。」
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次回:3月02日 裏切り(回想編) 5月05日公開!
お楽しみに。
この物語はフィクションです。
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