第4話最後の想い出

彼女と僕の父親と母親が仲良く

話していると、、

おばあちゃんは


ふと、、台所へふらふらと向かっていった。

おぼつかない手つきで、何かに

突き動かされる様に、、、


おばあちゃんは、まな板と包丁を

出した。

みんなが不思議とその光景を

止める事なく見つめていた。


おばあちゃんは、

里芋、鶏肉、ニンジンやゴボウを

皮がついたまま切っていく。

隣には母親が立ち、

皮をキレイにむいていた。


母親がおばあちゃんの助手になら

久しぶりの煮っ転がし作りが

始まった。


母親も久しぶりのおばあちゃんの

姿に、、、

《はい、これはこっちよ?》

と、エスコートしながら、


しばらくすると、家中には

懐かしい煮っ転がしの甘辛い

香りが立ち込めた。

おばあちゃんがナベの蓋を

押さえつけ、、

《お父さんに元気になって

もらいたいから、わしも一踏ん張りじゃ。》

よっこいしょっ。


と、ナベを上に転がし煮物は完成した。

皿に盛り付ける頃には、弟も

帰省してきた。

《お?ばあちゃん久しぶり!!兄貴じゃん。元気?》

《よお、久しぶり!!》


弟もギリギリまで、おばあちゃんの事を思い考えて悩んだ挙げ句

地方へ出張していたのだ。


おばあちゃんが中心となり、

煮っ転がしの晩餐会がとりおこなわれた。


『さぁさぁ、ごちそうね?』

母親がおばあちゃんに箸を渡すと

おばあちゃんが震える指先で

何度も何度も里芋を

ツルッと落とし、、

ようやく取れたと思ったら


僕の口へあ~んをしてきた。

『?!え?』


『お父さん!あ~ん。彩子が

作ったけーの。あ~んしよ?』


僕はおばあちゃんに合わせた。

口の中には、懐かしい味が

広がっていた。


と同時に、、、とめどもなく涙

が溢れてきた。


涙を見せまいとすればする程、

今までおばあちゃんに酷い態度を

した自分が情けなかった。



おばあちゃんに、、、

『最高に、、、うまいよ!』

と言うと、


おばあちゃんも、煮っ転がしを

口を汚しながら食べていた。



母親が

《あらあら、、仕方ないわ。》

と口の汚れを、拭いていた。



おばあちゃんのその姿は

まるで少女の様に、、


無垢な姿だった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る