第4話 羞恥プレイと渦巻く略奪愛(2)
他愛もない、記憶にも残らないような他愛もない話を続けた。
意味のある会話が好きな俺としては、そういう会話は無駄で嫌いだ。
クリエイティブな人間は建設的な話をしたいものだ。
だが、意外と不快感はなかった。
他の人間ならば時間の無駄だと苛立っていただろうが、カザリちゃんの会話は俺にとって特別らしい。
また、会って話したい。
女性とこうしてストレスなく話すのは久しぶりな気がする。
軽食を終えてカフェを出ようとすると、
「あっ!」
「な、なに?」
「そういえば、私、奢られちゃいましたよね? お金、出します。いくらですか?」
そういえば、会計の時に俺が無理やり金出したんだった。
あの時は、えっ? えっ? とか財布からお金を取り出す前のカザリちゃんを押し切ったのだった。
別れる前になって、お金を出したくなったらしい。
でも、もう金出した後だしな。
「やっぱり奢るよ」
「えっ、いいです、いいです! 私も出します! 男の方が奢らなきゃいけないとか、そういう考え、私大嫌いなんです」
「……へえ」
こういうこという人は珍しいな。
財布を出してお金を出す振りをする人だってたまにいるのに。
「そういうのじゃなくて、俺の方が稼いでるだろうし、奢るよ」
「そ、そうですか……」
カフェ代なら安いもんだ。
高級フレンチとかだったら割り勘が頭を過るけど、今日は楽しませてもらった。
そのお礼も兼ねて俺が出したいのだ。
「じゃあ、連絡先だけ交換してくれませんか?」
「連絡先?」
「命を救ってもらって、奢ってもらって……。このままじゃ嫌なんです。今度何かお礼させてください」
「大袈裟だな……」
カザリちゃんは不安そうに目を伏せる。
ここで連絡先を交換しなかったら、接点のない彼女とはもう会う事はないだろう。
俺は同窓会とか行かない、人間関係に関しては淡泊なタイプだ。
カザリちゃんとの話は楽しかったから連絡先は俺も交換したい。
一瞬、栞の顔が過ったが、関係ない。
カザリちゃんとは何も疾しいことはないし、何より栞には何の関係もない。
カザリちゃんも、ただ俺と話がしたいだけだろう。
この連絡先交換に深い意味はないだろうな。
俺に対する感情は恋愛感情というよりかは、ファンが推しに対する憧れに近いだけなはずだ。
「わ、分かった、交換しよう」
そう言うと、文字通り飛び上がるほどカザリちゃんは喜ぶ。
「やった! 今度会いましょうね! 約束ですよ!」
「いやいや勝手に約束しないでね」
年下の女の子のパワフルさに微苦笑しながら、俺は確実に癒されていた。
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