第50話 圧倒的な腹

は、はら?空腹ってことだよな?


「近くに街ないか?」


「えっと、俺らが住んでるルデビトが1番近いと思うけど..」


「そっか!頼む案内してくれ!」


ぱあっと明るくなる悟の顔。聖羅も嬉しそうな顔を浮かべる。


「じゃ、じゃあこっち。」


上位魔獣の恐怖から解放されたと思ったら飯の話。正直脳が追いついていない。


「悟、今までどこいたんだよ!説明してくれ!」


「えと、俺も詳しくはわからないんだが、目が覚めた時には真白と一緒にいたんだよ。」


悟の話によると、目が覚めた時に周りに街などがなかったためしばらくは放浪していたが、街を見つけるとその強さでお金を稼いでいたらしい。


「でもなんでここに?」


「真白も一緒ってことは他にも知り合いがいるんじゃないかと思ってな。そしたら迷った。」


なんとも2人らしい。それで飢えてたわけか。


「でも、最初の街でお金稼げたならそのままでも良さそうなもんだけど。」


「私たちの力を良くないことに使おうとする人が多かったの。だからすごく居心地悪くて。」


聖羅が残念そうに言う。

なるほど、ルデビトのような住みやすい場所に居られるのは幸福なんだな。


「悟っていうのね。私ヘラ•アークネル。ネルって呼んで!助けてくれてありがとう。」


「あぁ、俺は中野悟。よろしく、ネル。」


握手を交わす2人。


「か、魁斗、このカッコいい人知り合いなの!羨ましい!」


ネルがボソリと呟く。

うん、完全に惚れてやがる。


「とにかく会えてよかった!おすすめの飯屋があるんだ。」


ルデビトに戻ると、真っ先におばちゃんの元へ向かった。


「おばちゃん!ばあちゃんスペシャル頼む!」


「あら魁斗。そっちの2人は新顔かい。ちょっと待ってな!」


すっかりばあちゃんとは顔馴染みだ。

悟も聖羅も、ばあちゃんスペシャル見たら驚くだろうな〜。


「2人はさ、これからどうするんだ?」


素朴な疑問。どこかに所属してるわけでもないしな。


「うーん、俺としては魁斗と一緒に戦いたいなって思ったり。」


「私も!魁斗のいる軍っての、気になるし!」


それしかないよな。俺も本当は2人と一緒に戦いたい。でも、いきなりそんなこと可能なのか?


「飯食ったら俺とネルはどのみち城に戻るし、その時に話してみるよ!」


「本当か魁斗!ありがとう!」


強い人が軍に入って悪いことなんかない!

きっと大丈夫だ!


登場したばあちゃんスペシャル。

1番驚いていたのはネルだった。


しかし15分後に1番驚いていたのは俺だった。


「ちょっと足りないかもな。すみません、同じのもう1つください!」


こ、こんなに食べるとは..


聖羅と悟で、ぶっちゃけ一つづつばあちゃんスペシャル食べてるぞ。


2つ目を頼んだ時のばあちゃんの顔が忘れられない。


「そ、それじゃあ城、行くか。」


2人の爆食ぶりに少々面くらいながら、軍への入団交渉のため、城へと向かうのだった。

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