第51話 直談判

「ただいま、戻りました。」


城へと戻り上位魔獣2体との遭遇など、事の顛末をルービット王に話した。

王からは良く生き延びた、と一言声をかけられた。


「して、その者達は?」


側近から質問を受ける。そう、ここからが勝負なのだ。


「実はですね、私とヘラが生き延びることが出来たのもこの2人のおかげでして。」


「名乗ってみよ。」


王が口を開いた。


順番に名前を名乗っていく。

2人が少し緊張しているのがわかった。


「よくぞ私の兵を守ってくれた。心より感謝する。」


ここで兵に入れてほしいと言うか?しかし..


「後日、礼をさせてもらう。下がってよいぞ。」


「あ、あの!」


言った。言ってしまった。

このタイミングしかない。2人も一緒に戦わせて欲しいとお願いするんだ。


「こ、この2人も兵に所属させてはいかがでしょうか。」


言った。言ってやったぞ。どうくる。


「秋宮。言い分はわかるが、ルデビト軍は試験を突破した強者だ。いくら助けられたといえど、簡単に入隊させるわけにはいかぬ。」


シン、と静まり返る。やはりそうか。そう簡単にはいかないよな。大人しく次の試験を待つしか。

ごめん、悟。聖羅。


「ありがとう魁斗。もう大丈夫だ。」


覚悟を決めたような悟の表情。諦めだろうか。俺に力ではどうにもできない。


「では、ルービット王。」


悟が小さく手を挙げる。


「今期入隊した中で、1番強い兵士と戦わせてください。」


突然の悟の発言。王だけでなく、家来たちもざわつく。


「何を言い出すんだ!まぐれで上位魔獣を退けたくらいでいい気になるな!」


家来の1人が叫ぶ。悟の力を知らなければ無理もない。


「中野とやら。ステータスを見せてみよ。」


「ステータス?」


首をかしげる悟。そうか、ステータスの存在すら知らないんだ。

慌ててステータスの出し方を教える。ステータスすら知らない悟に、家来たちは嘲笑している。

だが確かに悟と聖羅のステータスは気になる。あれだけの強さ、間違いなくとんでもない数値だろう。


こ、これは!?


ひ、低い。攻撃力が200ほどしかないだと!?


「何してんだ?早く見せろ!」


家来からの催促。こんなステータスを見せれば間違いなく入隊はできないぞ。


「え、ええと。」


「やっぱり上位魔獣なんて嘘じゃないのか?秋宮。」


「そいつが上位魔獣を退けるなんて無理だろ。」


くそ、好き放題言いやがって。俺のことはいいが、悟や聖羅を悪く言われるのは心底腹が立つ。でも、どうしたら..


「俺のことはいいです。でも、魁斗のことを悪く言うのはやめていただけませんか。どうぞ、ステータスです。」


悟。

おそらく自分のステータスが低いというのは勘付いているだろう。それなのに。


案の定、城内は笑いに包まれた。

当然だ。あのステータスで1番強い奴を出せと言っているのだから。とんだ恥ずかしい奴だと思われるだろう。


「もういいから帰りな!」


「あんま嘘はつくものじゃないぜ3人とも。」


散々な言われようだ。俺が兵に誘ったばっかりに。


「ごめん2人とも。帰ろうか。」


諦めようと、声をかけたときだった。


「いいじゃないですか。戦わせてみては。」


後ろから入ってきたのはアレクだった。


「彼らからは、何かとんでもないものを感じます。強い人が入るのは国にとってもいい事。弱ければそこで正式にダメだと言えばいい。」


アレクさん..


「それもそうだな。1戦、組んでみるか。」


さすがは3騎士。

アレクの発言力のおかげで、入隊試験にこぎつけた。


「では早速明日だ。アダンとアルフレッドを呼んでくれ。」

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