第48話 再会

確かにこれは無理かもな。

1体でも到底勝てない上位魔獣が2体。絶望するのも当然だよな。


「ごめんよネル。守ってあげられなくて。」


「私、どっかで自分のこと強いと思ってたんだ。それが今はただ泣いてるだけ。私の方こそ、ごめん。」


氷のドラゴンが着陸したのを確認すると、炎のドラゴンも動き始めた。

そっか、ただ仲間を待ってただけなのか。


ゴウッと炎を吐くドラゴン。

諦めたはずだったのに、体が咄嗟に動いた。地面に寝そべり、ギリギリで炎をかわす。


「魁斗、諦めてないんだね。」


泣きながらヘラが笑った。

諦めていても死ぬのは怖い。泣き笑いの表情をしているヘラを見て、なんだか笑えてきた。


「そうだね。諦めてないかもしれない。」


死ぬまで抗ってやるさ。諦めないって決めたから。

目の前に迫る氷のブレス。防いだのはヘラの魔法だった。


「私も諦めない!絶対に2人で生き延びよう。」


ヘラはもう泣いていなかった。

そうだ。諦めるのなんて、いつだってできる。


ヘラが背中から降り、再びルデビトに向けて走り出す。

「でも、どうやって逃げる?俺、魔法なんて使えないし..」


「そんなん分かんない!とにかく走ろ!」


魔獣は微塵も本気を出していない。迫る炎や氷も、かわすか防げるレベルだ。

俺らをいたぶって楽しんでいるんだろう。


それでもこちらにとっては致命傷。逃げ道などない。


「あぁっ!」


ヘラの悲鳴。振り向くと後ろを走っていたはずのヘラがいない。


「魁斗!魁斗ぉ!」


上だ。氷のドラゴンの手に捕まっている。


「くそっ!ネル!」


氷のドラゴンの足元へ走り、剣を引き抜く。


「離せ!ネルを離せよ!」


ドラゴンの足を無我夢中で切りつける。が、傷1つつかない。

そりゃそうだ。魔法も何もない、ただの剣を振り回しているだけなのだから。


「ぐあぁぁ!」


真上から聞こえる悲鳴。このままじゃヘラが握りつぶされる。


「離せ!離してくれよ..」


涙が出てきた。なんて無力なんだ。こんなに近くで苦しんでいるのに剣を振り回すことしかできない。


「ネル、ごめん。ごめんよ..」


ヘラの目の前でドラゴンが大きな口を開き、ブレスのエネルギーをためる。

とどめをさすつもりだ。


「魁斗、勇気づけてくれて、ありがとね。」


ヘラめがけて、氷のブレスが放たれた。


くっそ!

ごめんごめんごめん。


助けられなかった。目の前で苦しんでいたのに。


ボトッと落ちてきた黒焦げの物体。

直視なんて、できない。


「やっぱり魁斗だよな?ごめんな、遅くなった。」


は?


生まれてから、これほど驚いたことはないだろう。

どういうことだ?見間違いか?


いや、俺が見間違えるわけがない。


その声とその顔。絶対に忘れることなんてない。


そこに立っていたのは、中野悟だった。

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