第37話 魁斗VSアルフレッド

トレーニングはしてきた。

やれるだけのことはやった。

それでも、アルフレッドを前にすると恐怖しか湧かない。


主席だから、という理由だけではない。

やはり明らかに強者のオーラがある。


リングの中で対峙すると、自分より小さいはずのアルフレッドが数倍大きく見える。


心臓が高鳴って壊れそうだ。


アルフレッドが剣を構えたのを見て、慌ててこちらも構える。


周りの歓声が聞こえない。

聞こえたのは、始まりを告げるゴングだけだった。


やばいやばい始まったのか。

緊張で吐き気すらする。頭もボーッとしている。


アルフレッドはどうくる?

俺が弱者というのは知っているだろうから、おそらく様子見で距離を取るだろう。


そう考えた瞬間には、アルフレッドの剣は燃えていた。


「中位魔法:【炎閃暁】」


なるほど、アルフレッドに弱者とかは関係ないわけだ。

目の前に敵がいたら倒す。それだけの事なのだろう。


手汗で滑って剣を落としている事実に気がついたのは、それからだった。


うそ、どうしよ。

アルフレッドの剣が止まって見える。


死ぬ直前って、こうなるんだろうな。

ゆっくりと思考を巡らせる。


剣を拾ってから攻撃を受けるのはまず無理だな。

でもこのまま食らったら多分死ぬ。


かわせるか?いや、さすがに間に合わん。


思いついたのは、手で挟んで止める事だった。


剣がゆっくり見えるのはいいが、自分の体も思うように動かない。


やっとの思いで燃えている剣に手を添えて、止めようと試みる。


なぜか熱さは感じないが、力を入れても押し返される。やはり素手じゃ無理か。てかいつまでスローに見えてんだ。


その時だった。

パキパキと音を立てる剣。気のせいか光っているように見える拳。


触っている部分からポッキリと剣が折れ、刃先が宙に舞い上がった。


棒立ちになる俺とアルフレッド。

視界は通常に戻っている。


カランカランと音を立てて落下した刃。


何が起きた?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る