第38話 勝負の行方

会場も動揺で静まり返っている。


アルフレッドの剣が、折れた。

棒立ちになる2人。


いかんいかん、剣がおれていてもアルフレッドはきっと強い。

急いで足元に転がっている自分の剣を拾った。


「..でいい。」


アルフレッドがボソッと何かをつぶやいた。

俺に言っているのか?


「な、なに?」


「俺の、負けでいい。」


「え?」


えっと、どういうことだ?棄権ってこと?


少し悲しそうな顔をしたアルフレッドが、そのままリングを降りていった。


「え、えっと、勝者、秋宮魁斗!」


全然状況が飲み込めない。勝ちでいいのか?


トボトボ歩いているアルフレッドに、アレクが声をかけた。


「大事な剣だったんだろう。あれ、誰にもらったんだ?」


「師匠に。」


アルフレッドが小さい声で答えた。


「アルフレッド・ボルカ、かな?」


「なんで師匠の名前を?知ってるのか?」


バっと顔を上げたアルフレッドが、大きな声で聞いた。


「やはりボルカ師匠に教わっていたのか。アルフレッドと聞いてそんな気がしたよ。なんたって俺もボルカ師匠に剣を習ったからね。」


アルフレッドとアレクの師匠が同じ?まさか、そんなとんでもないことがあるとは。


「苗字が同じってことは、孫なのか?」


「いや、俺は生まれてすぐ親に捨てられて師匠が育ててくれたんだ。名前を付けてくれたのも師匠だ。」


「そうか。どおりでいい名前だと思った。本当に、負けでいいのかい?」


「剣が折られたのは、俺の力不足だ。」


くるっと振り向いたアルフレッドがこちらを見つめる。


「次は、勝つからな。」


待って、ほんとに俺の力で剣を折ったかもわからないのに。


こうして、俺は訳も分からぬまま主席に勝利を収めた。

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