第35話 コーレーVSアイネ

「次の対戦者!リングへ!」


アダンとミゲルがリングから降り、次の戦いが始まるようだ。


「よろしくねん。マアルちゃん。」


「は、はい。」


余裕のあるコーレーと怯え気味のマアル。

戦いはすでに始まっているようだ。


ゴングが響いた瞬間、やはり仕掛けたのはコーレーだ。


「ついてこられるかしらねん。」


突然5つの玉でジャグリングを始めるコーレー。

マアルは見るからに動揺している。


「下位魔法:【ブースト】」


コーレーのスピードが上がる。あれはノヴァも使ってた加速魔法か。


加速してマアルの周りを回りながらもジャグリングはやめない。

あの速度で移動しながらよくできるな。


「魁斗は知らないだろうけど、コーレーは昔から結構有名でさ。めちゃくちゃ強いエンターテイナーがいるって。」


なるほど、そりゃ戦いにも慣れてるわけだ。


「ってミゲル、ケガはいいのか!?」


しれっと横にいてビビった。


「おう、ジュリアさんに回復してもらったからな!」


あんな戦いの後でも元気。さすがだ。


「俺、もっと強くなるよ。」


低い声で、言った。

そうだよな。ミゲルだって負けたら悔しい。それでも気丈に振る舞えるミゲルがカッコよかった。


「ピーロー必殺!リトルボム!」

ドカン、と爆発音が聞こえた。

コーレーが玉を投げたようだ。なるほど玉が爆弾のようになっているのか。


マアルは小璧を張っているが、防戦一方のようだ。


しかし、コーレーが玉をいくつ投げても常に5個のまま。どっから出してるんだ?


しばらく、コーレーが玉を投げ続け、マアルが壁を壊されては張り直すという展開が続いた。


だが時間が経つとリトルボムの土煙で壁の中のマアルが見えなくなった。

そもそも壁が張れているのかもわからない。


これは続行不可能と判断したのだろう。

審判が手を上げた。


「この勝負、コーレー•ピーローの..」


「黙って見てろ!」


叫んだのはウーラだった。


審判含め、周囲の人がウーラを見る。


「いいから、試合止めんなって言ってんだ。」



声は聞こえていないが、コーレーは勝ちを確信したようだった。


「ごめんねマアルちゃん。とどめよん。」


5つの玉が合わさり、1つの大きな玉になった。

魔法で作った玉だったわけだ。


「ピーロー必殺!ビックボム!」


両手で玉を持ち、土煙の中に投げ込んだ。

今までとは比較にならない爆発。中位魔法に限りなく近い威力あるぞ。やっぱり試合止めた方が良かったんじゃ..


「中位魔法:【豪波璧】」


マアルが無傷で土煙から歩いてくる。


「あれだけ攻撃して無傷なんてありえないわよん..」


息を切らしながらコーレーが驚く。


そして違和感が1つ、土煙が消えない。


「あれは土煙じゃねぇよ。土被ったアイネの氷魔法だ。リングの中じゃ気づくのは相当難しいだろうがな。」


ウーラはマアルの秘策に気づいていたから試合を続けさせたわけか。


「ま、マアルちゃん、それ全部小氷?」


ここで、コーレーも理解したようだ。

目の前に無数の下位魔法が準備されていることに。


「下位魔法:【小氷】!」


氷の嵐がコーレーを襲う。恐ろしい威力だ。

ばたりとその場に倒れるコーレー。


「アイネ、か。中位魔法使いながらあれだけの下位魔法を展開するなんて、並のやつじゃできねぇ。おもしれぇなぁ。」


ウーラが楽しそうに笑う。


「勝者!アイネ•マアル!」

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