第26話 オリジン:ジルホムス

手から解放されたアイネが、ウーラに抱えられている。

良かった、どうやら無事のようだ。


「なんで、ウーラがここに?」


「ようアレク。なーんか嫌な予感がしてさ。俺もトラスフェントで飛ばしてもらった。イルガのおっさんには城に残ってもらってる。」


アレクがウーラの手を借り、立ち上がる。


「まだやれるか?アレク。」


「もちろん。みんなを守らなきゃならない。」


「アレクと一緒に戦うなんていつぶりだろうな。そうだこれ、渡しとくわ。」


ウーラは携えていた大剣をアレクに渡した。


「はは、これ持ってきてくれたのか。助かるよ。」


大剣を見たとたん、ウーラ大好きシューバートが驚いた声を出した。


「あ、あれ、ジルホムスだよ!アレクさんのオリジン!」


「オリジン?」


とっさにシューバートに聞いてしまった。


「そう、かなりの猛者になると自分専用の武器が作られるんだよ。それがオリジン!ジルホムス本物だぞおい!」


シューバートはおそらく3剣士のファンなのだろう。

アレクがジルホムスを握ると、赤い光を放ちだした。


「俺が奴の動きを止める!その隙に一発叩き込めアレク!」


そう叫ぶと、ウーラは魔獣に向かい走り出す。

アレクはゆっくりとジルホムスを構えた。


「中位魔法:【リストフロスト】」


魔獣を風が包み込む。


「中位魔法:【チョークベント】」


続けてウーラが鋭い風の刃を放った。魔獣にあまりダメージはなさそうだが、動きは少しスローになったか。


「やっぱり全然効かねぇか。バケモノめ。」


そう言ったウーラめがけて、魔獣は体内から巨大な岩石を3つはじき出した。


「くっそ、【チョークベント】!」


2つの岩は破壊したが、1つが間に合わずウーラに岩が直撃した。

こちらまでウーラが吹き飛ばされてくる。


「ウーラさん!」


「こっちくんな!防御の魔法使える奴はみんなを守れ!」


ウーラさんもかなり出血してる。平気ではないぞ。

みんなが何もできない悔しさを噛みしめている。


アレクは依然として目を閉じて構えたまま動かない。


「下位魔法:【小壁】。すまんわしにはこれくらいしかできん。」


アダンが守りを作り、全員をおおった。


「私もできるわ。下位魔法:【小壁】。」


続いてヘラも守りを作り、半透明な2枚の壁が全員をおおった。


「まぁ、気休めくらいにはなるか。中位魔法:【チョークベント】。」


ぼろぼろになりながら、ウーラが応戦し続ける。


そのウーラに意識を集中しすぎて、背後からくる魔獣の岩に誰も気がつかなかった。


「みんな!後ろよん!」


コーレーがいち早く気付いたが、もうすでに2枚の壁は簡単に割られ、巨大な岩は目の前にあった。

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