第25話 アレクVS上位魔獣

初めて見る上位魔獣。

真っ先に感じたのは、恐怖だった。


怖い。戦えば完全に殺される。

みんな同じことを思ったのだろう。言われた通りに全力で走った。


魔獣は遠くから見れば、ただの茶色い土の山にしか見えない。

だがよく見れば、目だけ黄色く光り両手両足がある。うめき声も上げているようだ。


「やれやれ、上位魔獣と戦闘になるなんてな。1人でどこまでできるか。」


アレクの構えに隙がない。間違いなく本気だ。

タンッと魔獣の顔まで一足で飛び上がる。


「中位魔法:【炎閃暁】!」


魔獣の顔をものすごい炎が包む。呪文は同じだが、正直アルフレッドとは威力が桁違いだ。

使う人でここまで別物になるのか。

心なしか、アルフレッドは悔しそうな顔をしている。


上位魔獣は、無傷だった。


「この程度じゃ通用しないか..」


アレクが苦戦を強いられているのが伝わってくる。

あの威力で全くの無傷かよ。化け物め。


逃げることに必死だったが、気づけば逃げる先にもゴロゴロと下位魔獣が現れていた。


どうにか突破するしかない。


「下位魔法:【小雷】!やるしかねぇな!」


ミゲルも戦闘態勢に入っている。アリサもすでに弓を構えている。

このメンバーなら、中位魔獣くらいならば突破できるだろう。


「行くぞエヴァ!」


「はい、兄さま!」


アクオール兄妹の流れるような連携。2人にしかできない攻撃だろう。

速すぎて目が追い付かない。

あっという間に下位魔獣10体ほどは倒しただろうか。


逃げる先には下位魔獣しか現れていないため、アレクとはかなり距離が離れただろう。

このまま走り抜ければきっと助かるはずだ。


まぁ、俺とアイネはおろおろするばかりで何もできていないのだが。

クローカーも無言で走るだけで戦おうとはしていない。


10分ほど走っただろうか。もうかなり遠くに来た。おそらく助かるだろう。


ドカンと、真後ろに何かが落ちてくる音がした。


紛れもなく、それはアレクだった。


うそ、だろ?

アレクが負けたのか?


「も、もっと遠くにだ!はぁ、早くしろ!」


ボロボロになったアレクの姿が見えた。


やばいやばいやばい。

中位魔獣とはあまりにも格が違う。


走る速度を上げる。が、すでに上位魔獣に追いつかれていた。

魔獣のでかい手がこちらに襲い掛かってくる。


「あぁ!くぁあぁあ!」


アイネだ!逃げ遅れたアイネが魔獣の手につかまっている。

今にも握りつぶされそうになっている。


「中位魔法:【エンロード】」


「下位魔法:【小氷】」


アダンとアリサの攻撃は全く通用していないようだ。

アレクも立ち上がることが出来ない。


「うぁあっぁ!」


くそっなんで何もできない!

アイネが死ぬ。


ボトッと、地面に落ちた手。


「わりーな遅くなって。全員無事か?」


揺れる金髪。

立っていたのはウーラだった。


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