第18話 スタート

「うおお!」


「え!うそ!」


ミゲルとアリサが同時に声をあげた。

紙にはミゲルの【506】、アリサの【23】がしっかりと刻まれていた。


「あ、いや、ごめんなさい。」


俺の番号がないことに気がついたのだろう。アリサがこちらを見て、はしゃいだことを謝った。

その優しさが辛かった。


ミゲルも一瞬喜んだあとは、悔しそうに拳を握りうつむいている。


「いや、すごいな2人とも!おめでとう。これから頑張ってな!」


応援の言葉を吐き出すのが精一杯だった。涙なんか流したら余計に気を使わせる。絶対に泣くな。


「俺はさ、大丈夫だからさ。また試験受けて、いつか2人に追いつくからさ。」


そうさ、すぐに追いついてやる。諦めたわけじゃない。


2人はまだ黙っている。

間違いであってほしいと、何度も紙に目を配る。当然、番号が変わっているなんてことはない。


【428】と刻まれていることに気付いた。あいつは受かってるのか。


そして印象的な【1】の番号。これは印象強くて覚えている。赤髪の少年だ。

あれだけの強さなら、受かって当然か。



深く深く、深呼吸をした。


やっぱり悔しいな。2人と成長していきたかった。



ガッシャン!


突然目の前の大きな扉が、風で吹き飛ばされ粉々になった。


会場がざわつく。

中からウーラが出てきた。が、ひどく怒っているようだ。


「ガタガタうるせぇな!いくら王でも、俺の決定に指図をするなよ!」


どうやら、ウーラが魔法で扉を壊したようだ。

何を怒っているのか。


後ろから、王の取り巻きだろうか、7,8人が慌ててウーラをなだめようとしている。

だが、ウーラは構わずに紙の方へ、づかづかと歩いていく。


紙の目の前まで来ると立ち止まり、どこからか黒いペンを取り出した。


「あの、あまり勝手なことは..」


「なんか文句あるのか?」


「い、いや..」


取り巻きは完全に怯えてしまっている。


何が始まるんだ?その場の人間は、一点にウーラを見つめていた。


ウーラはゆっくり丁寧に、それでいて大きく太く、ペンで紙に【449】と書き込んだ。


「えーっと、どこだ?お、いたいた。」


ウーラが俺に気付き、こちらに歩いてくる。

「よぉ、悪いな無能な王でよ。ま、これから頑張ろうな。」


ウーラがニコッと笑う。


頭がボーっとして返答が出来ない。


「おい、聞いてるのか?無視するとはふてぇ野郎だな。」


「あいや、びっくりしてその、大丈夫なんですか?」


どういう状況なのかいまいち読めない。俺は結局どうなったんだ?


「俺は認めてんのに、上が頑なに不合格だって言ってきてな。ま、お前はもう合格だから安心しな。」


「でも俺、こんなに弱いのに。」


「強くてなんぼと言ったが、なにも強くなきゃ絶対受からないってわけじゃない。まぁお前は弱いしすぐビビるし、頭も真っ白になりやすいけどな。」


「それ、俺いいとこなしじゃ..」


「でも、誰よりも強くなるだろ?」


なぜ、こんなに期待してくれているのだろうか。

ウーラが真剣な目でこちらを見ている。応えよう。この人の期待に全力で。


「はい!誰よりも、ウーラさんよりも強くなります!」


もう、やるしかないな。


背中に強い痛みを感じた。


「おい!おいやったな魁斗!なぁ!」


「おめでとう魁斗!これからがんばろうね!」


ミゲルが背中を叩いていた。


せき止めていたはずの涙が溢れた。

頑張ろう。これから頑張ろう。


こうして俺は、王に仕える戦士の道を歩みだした。

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