第15話 心臓に刺さる剣
倒す? ウーラを? 全員対1で?
実力を知らなければそんなまさかと思うが、明らかに先ほどの風魔法は下位魔法ではない。
でもさっきの赤髪の少年もいるし、いい勝負にはなるのではないか。
ともかく、俺にやらないという選択肢は残されていないのだ。
「怖え奴は帰っていいぞ~。10分休憩したらはじめっからな。」
ウーラはその場にドカッとあぐらをかいた。
見たところ、この場の人は誰も帰っていないようだ。
「よう、さっきは色々とありがとうな!俺はカイバ・ミゲルよろしくな。」
振り向くとさっきの盾男がこちらにニコニコと歩いてきていた。
「俺は秋宮魁斗。よろしくなミゲル。」
「へぇ、変わった名前だな。」
お互いに握手を交わした。
「魁斗って何系の魔法使えるの?俺は雷!」
まぶしい笑顔でそれを尋ねるのは勘弁してくれ~
「えっと、俺は魔法が使えないんだ。」
「そうなのか!珍しいことだらけだな~」
あまり深く聞かれないことがありがたかった。ミゲルなりの気の使い方なのだろう。
「あ、そういえばさっきの白髪の子の名前も聞こう!」
思いついたような顔をするとミゲルは走り出し、すぐに白ショートの子をこちらに連れてきた。
いかにもびっくりという顔で連れられている。
「えと、私はセトラ・アリサ。氷魔法が使えるわ。よろしくね。」
はっきりした口調で答えた。
「よーし、そろそろ始めんぞ!」
俺らの自己紹介がひとしきり終わったころ、ウーラが叫んだ。
一気に空気が張り詰める。
「制限時間30分。どっからでもいいぞ。」
ニヤリとウーラが笑う。瞬間、全員がうあああと雄たけびをあげ、襲い掛かった。
「中位魔法:【リストフロスト】」
ウーラがつぶやくと、その場に立っているのはウーラだけになっていた。
全員が巨大な風に吹き飛ばされ、散り散りになっている。
「いてえ..」
俺の右腕と額からも血が出ていた。何が起きたのか。
「おいおい、軽く魔法使っただけだぞ?楽しませてくれよ。」
ウーラは心底楽しそうだ。
いち早く立ち上がったのは赤髪の少年だった。ものすごい速さで接近し、1人でウーラに切りかかる。
「お前は結構やれるな。」
ウーラは15センチほどのナイフを逆手持ちで戦っている。
レベルの違う2人の戦いに思わず見とれてしまう。
「下位魔法:【小氷】」
ウーラの死角から氷をまとった矢が飛んでいった。アリサの攻撃だ。
その攻撃にハッとさせられ、再び全員がウーラに立ち向かう。
「下位魔法:【小雷】!負けてらんねぇな!」
ミゲルも元気を取り戻し、ウーラの下へ向かった。
「お~、あの白い子やるね。中位魔法:【リストフロスト】」
またも、巨大な風に吹き飛ばされる。が、赤髪の少年だけは凌いでいた。
「へぇ、やっぱお前いいな。」
ウーラが認めた声を聞いたあと、ずっと無言だった赤髪の少年が口を開いた。
「中位魔法:【炎閃暁】《えんせんしょう》」
尋常じゃない量の炎が剣に宿る。やがて炎が大剣の形になった。
初めてウーラが真剣な顔になった。
振り下ろした炎の剣はウーラを飲み込み、その後ろ70メートルほどの地面も焼き尽くした。
や、やりすぎじゃないか..?ウーラ死んだんじゃ..
会場が静寂に包まれ、地面がパチパチと焼ける音だけが響いている。
「いや~炎閃暁か。なかなかやるな。」
炎の中から声がした。炎がぐるぐると竜巻を起こしながら一か所に集まり始めた。
その中からウーラが姿を現した。
「すでに中位魔法使えんのか。いや~有望有望。っともう時間だな。終了~」
あの威力を防いだってのか。ほんとにでたらめな力だ。
赤髪の少年は力を使い果たしたのか、膝を着き息があれている。
ん、なんか違和感が。
その瞬間だった。
ウーラの背後の空間から突然男が現れ、背中からウーラの心臓にレイピアを突き刺した。
「へへっ、これで軍隊入りだなぁ。」
「うぐぁっ」
ウーラが膝を着く。
よく見るとその男の胸には【428】と書かれていた。
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