第13話 中位魔獣との戦闘

死ぬ時ってのは、本当に走馬灯が見えるもんで。


高校の入学式、家族との団らん、悟と聖羅との登下校、この世界での特訓。


目の前の魔獣がスローに見える。


あぁ、喰われる。


ガチィン、という甲高い音が響き渡る。

目の前にあったのは、1枚の分厚い盾だった。


「おい、大丈夫か?」


「あ、ありがとうございます。助かりました。」


俺と歳の変わらない筋肉質な短髪男が、でかい盾を持ちながら手を差し伸べていた。


「立てるか?頑張ろうぜ!」


「お、おう。ありがとう助かった!」


「自己紹介は後だな。とりあえずこいつらを片付けよう!」


筋肉質な男が励ます。

そうだった、こんなとこで死んでる場合じゃない。何のためにミーサやアレクに特訓してもらったと思ってるんだ。


冷静になり、魔獣の動きを観察する。

知識がない分動きは単調だな。アレクに比べればなんてことはない。


まずは背後から近づき、でかいカエルを仕留める。魔獣は黒い灰になって消えていった。


視界の隅にさっきの筋肉質男がうつる。そしてその後ろに魔獣。

とっさにその魔獣に狙いを定め、仕留める。


「おぉ、さっきのお返しか!ありがとうな!」


嬉しそうに筋肉質男が言った。


その瞬間だった。


こちらを向いた筋肉質男の顔が真っ青になる。


「おい!後ろ後ろ!」


必死な顔で俺の後ろを指差し、叫んでいるのが聞こえた。


嫌な予感がする。


深い深い足音が、背後からする。


恐る恐る、振り返る。


体は太った人間のようだが、顔は猪か?

その魔獣の体長は、5メートルを超えていた。


これが中位魔獣なのか..?

明らかに他の奴とレベルが違う。


絶望という言葉が適切だろうか。戦おうという気すら失せてくる。負けが見えるのだから。


気力だけで剣を握り、再び魔獣の顔を見上げる。


魔獣が自身の体長の半分ほどある棍棒を、空高く振り上げているのが見えた。


棍棒が振り下ろされる。


「危ねぇ!」


再び盾の男が守りに入った。


しかし盾は粉々に粉砕し、男は5、60メートルほど吹き飛ばされた。


「おい!大丈夫か!おい!」


返答がない。気絶したか、あるいは..


すでに魔獣は2度目の攻撃を準備していた。


試験で死ぬなんてありかよ..


ものすごい速さで棍棒がこちらに向かってくる。



死を覚悟した次の瞬間に目に入ったのは、赤髪の少年と、真っ二つになった魔獣の姿だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る