無用之用

キャスト


氷室葦吹:asakac

七々扇勇:那依



葦「……クラシックか」


葦m{母さんが出掛けてこいだなんて珍しいな…チケットをくれるなんて…}


葦「…それにしても何番のホールなんだ、ん…?」


パンフレットの地図を数回見直すがわからない葦

腕時計を確認するとちょうど15分前だった。5分前には着席の放送が入る。


葦m{この会場は広そうだし間違えて入ったら違うコンサートの席についてしまいそうだな}


人に聞いた方がはやそうだと踵を返した


七「あ、ごめんね。ちょっといい?」


振り返るとそこには30代後半の男性が立っていた。


葦「え、あ…僕ですか?」


七「そうそう。さっきチケットがポケットから落ちたのを偶然見かけてね」


葦「ありがとうございます。じゃあ俺はもうホールに行くので…」


七「ちょ、ちょっと」


葦「まだなにか?」


眉毛を下げて微笑む七


七「そっちは逆方向だよ、…僕でよければ案内しようか?」


葦「あっ……お、お願いします」


【ホール入口】


七「さぁ、着いたよ。ここまで来たらもう大丈夫だろう」


葦「はい…」


七「チケットを届けようかと思って見てたんだけど、真ん中とは随分いい席をとったね…僕は当日購入の都合で席をとれなくてね…後ろの方なんだ」


葦「ぁ、そうなんですね」


葦m{…母さんが適当に席をとっただけだ}


七「じゃあ僕はそろそろ行こうかな」


葦「ありがとうございました」


【ここで区切ります】


七「気にしないで、じゃあね葦吹くん」


葦「…!?」


葦「あのっ…!なんでっ、あっ…」


七「ふふ、コンサートホールだから”しー”だよ」


仕草を見てここがコンサートホールだと思い出す。

そこから自分の席とは方向の違う七についていく。


葦「…ずるい。チケットから見たんですね……あなたの名前も教えてください…」


七「でももう会わないだろう?僕のことは気にしないで」


葦「……次は何のコンサートに行きますか」


七「……1822年、作曲者本人が演奏できなかった「さすらい人」


素早く答える葦


七「わぁ…まったく知らないのかと思ったら知ってるんだね」


葦「…ピアノをしていたので、行きます。だから教えてください」


七「意外と強気なんだね、いいよ?次のコンサートで会えたらね。またここのホールだから」


葦「はい、また…」


七「…?行かないの」


葦「これ…俺の名前入ってるので持っていてください。じゃ」


急ぎ足で階段を降りて自分の席に戻る葦。


七「せっかくチケットを渡したのにまた返ってくるなんて…熱心な男の子に懐かれてしまった。……ってちょっと、席そっちじゃないね…?天然だなぁ…」






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