第8話 隆樹の元彼女

出港し私達はとある港に行く事にした。



「あれ…?…隆樹じゃない?」

「…華緖里(かおり)…?」



隆樹の名前を呼ぶ女の人の姿。


そんな隆樹も女の人を知っている様子だった。

 


「久しぶりね。ずっと連絡待っていたのよ。あっ!そうだ。私、今、この店にいるの。良かったら来て」



隆樹は女の人から名刺らしきものを渡されていた。

そして、彼女は去って行く。



「なあなあ、今のコレか?」と、冬流が小指を立てた。



「いや…彼女は…」

「それとも心残りの女か?」

「いや…そういうわけじゃない」

「じゃあ、何やねん!」



私は隆樹や冬流に女の影があった事に驚きを隠せなかった。




「美人な人だったね。隆樹、彼女いないとか言っておきながらいるんじゃん!冬流も巳冬さんいるし」


「いや…俺はちゃうで!確かに好きやったんだけどフラれてん」


「まだチャンスはあると思うよ。ねえ、隆樹、宿探した後、彼女に会って来なよ!一緒に食事してきたら?ねえ、冬流もそう思わない?」


「そうやな。今度は、隆樹が楽しんできいや」



「………………」



私達は宿を見付け劉樹は出掛けた。



「優季、ご飯食べに行くで?」

「ごめん。何か今日は、疲れたから行かない」

「せやけど、何か食べな体を持たんで?」

「平気」


「そうか?一人で大丈夫か?」

「うん」

「じゃあ、ちょっと行って来るわ!」

「うん。分かった」




私は一人になりたい気分だった。


特別な感情はないのに


どうしてこんなに複雑なんだろう?




「………………」




そして私は宿の部屋を出た。


大人しくすべきだったんだろうけど

出来なかった。


何故か部屋にジッとしていられなかったから……


胸騒ぎがしていたのだ


まるで何かに導かれるように……






〜 隆樹 Side 〜




俺は元彼女である華緒里と会っていた。


本当は会いたくなかった。


確かに愛し合っていたが、ここの街で会った時、彼女の言い方に疑問を抱いたからだ。


連絡を待っていた?


俺は彼女に対してどういうつもりだ?と――――




「雨か…」


「今日は、大雨になるらしいわよ。夜は冷え込むみたい」


「そうか」


「ねえ…隆樹…私、まだ、あなたの事愛しているの」


「俺は、とっくの前に吹っ切れた」


「あんなに愛し合っていたじゃない」


「お前は本命の男がいながら俺に近付いた。俺は裏切られたんだ!」


「隆樹…」


「もう話す事はない。大雨になる前に俺は帰らせてもらう」


「隆樹っ!待って!」




グイッと引き止める華緒里。



「…っ!」

「隆樹?」



俺は頭がフラつき体がいうことを効かない。


そんなに飲んでいない俺だったが、体に異変を感じた。


俺は、そのまま倒れ込んだ。



「隆樹…?」


「……………」



「クスクス…良く眠ってる。隆樹…今から一緒に帰りましょう?」



彼女は妖艶(ようえん)な笑みを浮かべ、タクシーに乗せ移動。


俺は彼女に連れて行かれるのだった。







〜 冬流 Side 〜



「優季ーー、おなかすいたら食べ……」




カチャ

優季の部屋のドアを開ける俺。



「優季っ!?……いてへん……何かあったんか!?」




『ごめん…出掛けてくる』



そう書かれたメモ紙が残されていた。





「アカン…今日は大雨で冷え込むのにから下手すりゃ肺炎起こすで…」




俺はすぐに飛び出した。


正直、胸騒ぎがしていた。


嫌な予感はしていたのだ。


何か起こるような気がした………



俺達の関係が……


絆が…


なくなるような気がした……
















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